平成12年度法人税関係改正   sukeban.gif (4262 バイト)

平成12年度税制改正のポイントは?

政府は、財政再建の前に景気低迷に対する各種の経済対策を優先させるとの考えのしたで、平成12年度税制改正案は平成12年度予算案と合わせて国会に提出され、3月24日に可決・成立しました。この平成12年度税制改正は、本格的な景気回復に資する等の観点から、民間投資等の促進や中小企業・ベンチャー企業の振興を図るための措置を講じると同時に、社会経済情勢の変化等に対応する措置が講じられています。

平成12年度税制改正の経緯とそのポイント

民間投資等の促進を図るため、特定情報通信機器の即時償却制度、住宅ローン税額控除制度の適用期間の延長

中小企業・ベンチャー企業の振興を図るため、同族会社の留保金課税の特例及びエンジェル税制の対象株式に係る譲渡益課税の特例の創設

社会経済情勢の変化に対応するため、年齢16歳未満の扶養控除の加算措置の廃止、相続税の延納の利子税の軽減等の措置

法人税関係の改正:留保金課税の2年間不適用と有価証券等の評価方法の変更

法人税関係の平成12年度の主な改正内容

平成11年度の改正と比べるとそれほど大きな改正はありませんが、企業課税に影響がありそうな改正がいろいろあります。まず、同族会社の留保金課税から説明しましょう。

同族会社の留保金課税の特例の創設(措法68の3の2関係)

新事業創出促進法の認定事業者等への支援策として実施されます。

次の法人については、2年間の措置として、同族会社の留保金課税を適用しない特例を設けることとされました。

設立後10年以内の新事業創出促進法の中小企業者該当する会社

新事業創出促進法の認定事業者(主務大臣の認定を受けた計画に係る新事業分野開拓を実施する者)

この特例は、平成12年4月1日から同14年3月31日までの間に開始する各事業年度に限り適用されますが、Aについては施行日以後に終了する事業年度分の法人税について適用されます。

有価証券等の評価方法等の変更

@有価証券の「時価評価制度」の創設(法法61の3関係)

有価証券の評価方法等について、平成12年4月1日以後に開始する事業年度から、次のとおり「時価法」を導入することとされました。なお、これに伴い、従来上場有価証券の評価に選択適用された低価法は、廃止されました。

ア.「売買目的の有価証券」については、期末において「時価」により評価します。

売買以外の目的で保有する有価証券は、原価(期末帳簿価額)で評価します。ただし、「償還期限及び償還金額が定められている有価証券」(満期保有目的の有価証券)については、その償還金額と帳簿価額との差額を、その取得時から償還時までの期間に配分して、益金又は損金に算入することになるので、その調整後の金額が期末評価額となります。

未決済のデリバティブ取引等の損益(法法61の5,61の6及び61の7関係)

法人が期末に有する未決済のデリバティブ取引については、期末に決済したものとみなして計算した利益又は損失を、益金又は損金に算入することとされました。

資産・負債の価額変動等による損失を減少させるため行ったデリバティブ取引等のうち、一定の要件を満たすものについては、みなし決済による利益又は損失の計上を繰り延べる等のいわゆるヘッジ処理を行うこととされました。

長期外貨建債権債務については、取得時の為替相場に加え、期末の為替相場による換算を認めることとされました。

上記@、Aに関連して、有価証券を売買目的有価証券、満期保有目的等有価証券及びその他有価証券に区分して譲渡損益の計算を行うなどの所要の措置を講ずることになります。

ソフトウエアの資産区分と償却(法令13関係、耐用年数等に関する省令)

ソフトウエアの資産区分を、減価償却資産(無形固定資産)とし、複写して販売するための原本となるソフトウエアの耐用年数は、3年、それ以外のものについては5年(開発研究用は3年)とされました。

パソコン減税の延長(措法12の4,45の3関係)

民間投資等の促進税制の一つである「特定情報通信機器の即時償却制度」(いわゆる“パソコン減税”)が1年間延長されました。

これによって、平成13年3月31日までの間に、取得価額100万円未満の、以下に掲げる特定情報通信機器を取得し、事業の用に供した場合には、取得価額の全額を償却費として損金算入することが認められます。

<特定情報通信機器>

電子計算機、Aデジタル複写機、Bメモリー送受信機能付普通紙ファクシミリ、Cデジタル構内交換設備、Dデジタルボタン電話設備、E電子ファイリング設備、Fマイクロファイル設備、GICカード利用設備

なお、この制度は、上記の期限までにパソコン等を取得し、かつ事業の用に供した場合に適用されます。したがって、平成13年3月31日以前に取得し同13年4月1日以後に事業の用に供した場合には適用されないことになりますので、注意が必要です。

中小企業投資促進税制の延長(措法10の7及び42の12関係)

取得価額の合計が100万円以上のコンピュータ等の器具・備品、あるいは取得価額230万円以上の機械・装置等について、取得価額の7%の税額控除又は30%の特別償却を認める制度が1年延長され、平成13年5月31日までとされました。なお、この制度では、リース資産についても税額控除の適用が認められることとされています。

パソコン減税と中小企業投資促進税制では、対象資産において重なる部分がかなりあります。減税効果の面でいえば、初年度だけ見ればパソコン減税の方が有利ですが、将来的な税負担を考えれば必ずしもそうとはいえません。したがって、どちらの制度を適用すれば有利かよく検討しましょう。

試験研究費の額が増加した場合等の法人税額の特別控除の延長(措法10及び42の4関係)

中小企業者等の試験研究費(損金算入のものに限る)について、その額の10%の税額控除を認める特例が1年延長され、平成13年3月31日までに開始する事業年度に適用することとされました。

電子機器利用設備を取得した場合等の特別償却又は特別税額控除制度の延長(措法10の3及び42の6関係)

取得価額160万円以上の一定の機械・装置等について、取得価額の30%の特別償却又は7%の税額控除を認める制度が2年間延長され、平成14年3月31日までとされました。

不正アクセス対策設備の特別償却(措法11の5及び44の6関係)

中小企業者等が、平成12年4月1日から同14年3月31日までの間に取得する不正アクセス対策設備について、取得価額の20%の特別償却が認められることになりました。

欠損金の繰戻し還付等の不適用及びその除外措置の延長等(措法66の14)

欠損金の繰戻しによる還付の不適用措置が2年間延長され、平成14年3月31日までに終了する事業年度において生じた欠損金額については、原則として還付を求めることはできません。ただし、中小企業者の設立事業年度の翌期から5年以内の各事業年度(平成11年4月1日以後に終了する事業年度に限る)に生じた欠損金額はその例外とするなどの、一定の除外規定は延長されます。

租税特別措置の縮減等

<税額控除等>

@製品輸入額が増加した場合の特別税額控除制度について(措法10の6及び42の11関係)

 控除額を製品輸入増加額の4%(従前は製品輸入増加割合に応じ4%〜5%)相当額とした上、適用期限が2年延長されました

A技術等海外取引に係る所得の特別控除制度について(措法21及び58関係)

    控除限度額が所得金額の20%(従前は25%)に引き下げられました。

<特別償却>

@地震防災対策用資産の特別償却制度について(措法11の2及び44関係)

    償却割合が11%(従前は12%)に引き下げられました。

A優良賃貸住宅等の割増償却制度について(措法14及び47関係)

 割増率を表のとおり引き下げ、その範囲も見直した上、適用期間が2年間延長されました。

耐用年数35年以上のもの  従前55%  改正後44% 
耐用年数35年未満のもの  従前40%  改正後32%

B倉庫用建物等の割増償却制度について(措法15及び48関係)

 割増率を16%(従前は18%)に引き下げた上、適用期間が2年間延長されました。

<準備金等>

@中小企業の貸倒引当金の特例制度について(措法57の9関係)

公益法人等及び協同組合等を除き、一括評価債権に係る繰入限度額を116%とする措置が廃止されることになりました。

A特定の資産の買換え等の場合の課税の特例制度について(措法37、37の3、65の7及び65の8関係)

適用対象から、工業再配置促進法の移転促進地域から誘導地域への工場の移転に伴う買換えが除外されました。

B創業中小企業投資損失準備金制度について(措法55の4関係)

積立率を14%(従前は16%)に引き下げた上、適用期間が2年延長されました。

<適用期限の延長>

使途秘匿金の支出があった場合の課税の特例について(措法62関係)

適用期間が2年間延長されました。

連結納税制度

企業の再編成の選択に対する税制の中立性を確保する観点から、会社分割に係る税制や連結納税制度の検討を早急に進めることとされ、2001年度における会社分割にKANする税制の創設を待って、連結納税税度の導入を目指すこととされました。

以上が法人税関係の主な改正内容です。

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