平成14年度税制改正のポイント(法人税関連)

<ポイント>

1.法人税関係:中小企業の交際費への課税が軽減され同族会社の留保金課税も軽減

2.所得税関係:上場株式の売却について申告不要制度を創設

3.相続税・贈与税関係:取引相場のない株式等の相続税の課税価格算入額が減額

4.その他の国税関係:登録免許税が軽減

5.地方税関係:個人住民税の所得割等の非課税限度額を引き上げ

 平成14年度税制改正の経緯と改正のポイント

わが国の経済情勢は、生産設備への投資減少や雇用情勢の悪化など厳しい情勢にあります。そこで、政府は、構造改革なくして成長なしということで、平成14年度税制改正では、経済を効率化しわが国経済の基本的な成長力を高めるため、税制面において経済社会の構造変化に適切に対応することを基本的な考えとしています。平成14年1月17日に「平成14年度税制改正の要綱」が閣議決定され、連結納税制度を除く部分について、平成14年2月1日に平成14年度税制改正案が国会に提出され、3月27日・29日に可決成立しました。

改正のポイント

@中小企業の交際費課税の軽減

A取引相場のない株式の相続税の課税価格算入額の減額

B連結納税制度の導入

C金融・証券税制における個人投資家の負担軽減など

 

 中小企業の交際費への課税が軽減  同族会社の留保金課税も軽減

(1)交際費等の損金不算入制度の定額控除限度額の引上げ(措法61の4関係)

交際費等の損金不算入制度について、資本金1,000万円超5,000万円以下の中小企業の定額控除限度額が300万円から400万円に引き上げられ緩和されました。

従来

期末資本金1000万円以下の会社……年間400万円までの支出した交際費等の金額の80%まで

期末資本金1000万円超5000万円以下の会社……年間300万円までの支出した交際費等の金額の80%まで

期末資本金5000万円超の会社……支出した交際費等の金額で損金の額に認められる費用はなく全額損金不算入

改正後

期末資本金5000万円以下の会社……年間400万円までの支出した交際費等の金額の80%まで

期末資本金5000万円超の会社……支出した交際費等の金額で損金の額に認められる費用はなく全額損金不算入

たとえば、資本金2,000万円の会社が400万円の交際費を支出した場合損金不算入額は  240万円→320万円に変わった。

(2)同族会社の留保金課税の軽減(措法68の3の2関係)

資本金1億円以下の同族会社に係る課税留保金額に対する税額について、平成14年4月1日から同16年3月31日の2年間の措置として、その5%に相当する金額が軽減されることになりました。

(3)   中小企業者等に対する同族会社の留保金特別税率の不適用措置の対象を拡大(措法68の3の2関係)

中小企業者等に対する同族会社の留保金特別税率の不適用措置について、「中小企業の創造的事業活動の促進に関する臨時措置法」の中小企業者に該当する法人で、事前事業年度の試験研究費および開発費の合計額の収入金額に対する割合が3%を超える法人を適用対象に加えた上、その適用期限が平成16年3月31日まで延長されました。

(4)中小企業投資促進税制の延長など(措法10の6及び42の11関係、措令5の8及び27の11関係)

中小企業投資促進税制について、次のような措置を講じた上、その適用期限が平成16年3月31日まで延長されました。

機械装置の取得価額の最低限度……<従前>230万円<改正後>160万円

リース費用総額の最低限度……<従前>300万円<改正後>210円

(5)試験研究費の増加した場合等の特別税額控除割合の継続(措法10及び42の4関係)

試験研究費の額が増加した場合等の特別税額控除制度における中小企業者等の試験研究費の額に係る特例について、その控除割合が次のように改められました。

平成15年3月31日までに開始する事業年度……<従前>6%<改正後>10%

(6)欠損金の繰戻し還付の不適用措置の延長(措法66の14関係)

中小企業の設立後5年間に生じた欠損金額、および「中小企業経営革新支援法」の承認経営革新計画に従って経営革新の事業を行う中小企業の欠損金額については、欠損金の繰戻し還付の不適用措置の特例として繰戻し還付請求ができますが、その適用期限が平成16年3月31日まで延長されました。

(7)使途秘匿金課税の特例が2年延長(措法62関係)

使途秘匿金を支出した場合の課税の特例措置が平成16年3月31日まで延長されました。

その他の法人税の改正事項

(1)自己株式(いわゆる「金庫株」)の譲渡損益(法法2,61の2関係)

自己株式の処分に伴って生じた売却益または売却損に相当する金額については、資本積立金の増加または減少金額とされました。

(2)公益法人等の収益事業について(法令5関係)

公益法人等の収益事業に係る課税について、私立大学等が他の者の委託に基づいて行う研究に係る一定の事業は請負業の範囲から除外されました。

(3)租税特別措置の廃止

次の租税特別措置は廃止されました。

@電子機器利用設備を取得した場合の特別償却または特別税額控除(メカトロ税制)(旧措法10の3及び42の6関係)

A製品輸入額が増加した場合の特別税額控除(旧措法10の6及び42の11関係)

B低開発地域工業開発地区における工業用機械等の特別償却(旧措法12及び45関係)

C創業中小企業投資損失準備金(旧措法55の4関係)

D自由貿易地域投資損失準備金(旧措法55の3関係)など

(4)租税特別処置の縮減など

@医療用機器等の特別償却制度(措令6の6及び28の16関係)について、一般の医療用機器の取得価額の最低限度が500万円(従前400万円)に引き上げられた。

A有料賃貸住宅等の割増償却制度(措法14及び47関係)の割増率を次のとおり引き下げるとともに、都心共同住宅に係る措置の適用対象から高度利用地区の区域等内の建築物等を除いた上、適用期限が平成16年3月31日まで延長された。

耐用年数35年以上のもの……<従前>100分の44<改正後>100分の40

耐用年数35年未満のもの……<従前>100分の32<改正後>100分の30

B公害防止用設備の特別償却制度(措法11及び43関係)

一定の構築物に係る償却割合を100分の12(従前100分の16)に引き下げられます。

C船舶等の特別償却制度(措法11及び43関係)

機械その他の設備に係る償却割合を100分の10(従前100分の16)に引き下げられます。

D事業革新設備等の特別償却制度(措法11の3及び44の4関係)

製造過程管理高度化設備等の特別償却について、償却割合を次のようにそれぞれ引き下げた上、その適用期限が平成15年6月30まで延長されます。

償却割合 機械装置……<従前>100分の14<改正後>100分の12

償却割合 建物等……<従前>100分の7<改正後>100分の6

E商業設備等の特別償却制度(措法11の6及び44の7関係)

食品流通構造改善促進法の共同利用設備及び食品商業集積施設に係る措置を廃止の上、適用期限が平成16年3月31日まで延長されます。

F倉庫用建物等の割増償却制度(措法15及び48関係)

割増率を100分の12(従前100分の16)に引き下げた上、適用期限が平成16年3月31日まで延長されます。

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