平成12年度税制改正案については、自民党がまとめた「平成12年度税制改正大綱」(平成11年12月16日)などをもとにしています。国会において可決・成立したものではありませんので、その点をご了承ください。
平成12年度税制改正案では、財政状況が厳しい中でも、中小企業やベンチャー企業を支援する優遇措置が盛り込まれています。
ポイント1 パソコン減税が1年間延長 |
法人や個人事業者が、パソコン等の特定情報通信機器(取得価額100万円未満)を取得し、事業の用に共した場合、初年度において、その取得価額の全額を即時償却できるというものです。これが1年延長され、平成13年3月31日までの間に取得し事業の用に共した場合にも適用されそうです。
ポイント2 同族会社の留保金課税の不適用 |
中小企業等が投資を投資をしていくには一定の蓄えが必要との考えから、次のようなベンチャー企業や中小企業には、同族会社の留保金課税を2年間適用されないようです。
@設立後10年以内の新事業創出促進法の中小企業者に該当する企業
A新事業創出促進法の認定事業者
「中小企業者」とは、新事業創出促進法における中小企業者をいい、以下のように規定されています。
・製造業 資本金3億円以下又は従業員300人以下
・卸売業 資本金1億円以下又は従業員100人以下
・サービス・小売業 資本金5,000万円以下又は従業員100人(小売業50人)以下
ポイント3 特定中小会社の株式の譲渡益に対する課税の特例を創設 |
ベンチャー企業等への投資が活発になるように、特定中小会社が発行した株式に係る譲渡損失の繰越控除等の特例(いわゆるエンジェル税制)の対象となる特定中小会社の特定株式を、平成12年4月1日から17年3月31日までの間に払い込みにより取得した一定の個人が、その特定中小会社の上場等によって譲渡益を得た場合、その譲渡に係る譲渡所得等の金額をその2分の1に相当する金額とする特例が創設されそうです。
ただし、その特定中小会社の上場等の日において引き続き3年を超えて所有していた株式を、その上場等の日以後1年以内に譲渡した場合などの一定の要件があります。なお、現行の創業者利益の特例(2分の1)の重複適用が認められそうです。
課税対象 現行2分の1
改正案(重複適用)4分の1
ポイント4 商業地等の固定資産税の負担を軽減 |
固定資産税の負担感の高い商業地等について、次のような措置が講じられそうです。
@負担水準の高い商業地等の税負担の上限を現行の80%から3年間で70%に引き下げる。平成12年度及び13年度 負担水準75%
平成14年度 負担水準70%
A負担水準が60%以上で、@の負担水準以下の商業地等は税額を据え置く
B負担水準が60%未満の商業地等については負担調整措置を講じる
ポイント5 相続時の株価評価の見直し |
中小企業経営者の事業継承時の税負担を軽減するために、取引相場のない株式の評価が見直されそうです。具体的には例えば、
@類似業種比準方式による評価方法について、より収益性を加味する方法にし、斟酌率を見直す。
A小会社の従業員数基準を見直す など
当初話題に上がっていた相続税の最高税率(70%)の引下げは見送られています。なお、相続税の延納の利子税率が軽減されそうです。
ポイント6 青色特別申告控除額の引上げ |
正規の簿記の原則に従って取引を記録している者については、青色申告控除額が55万円(現行45万円)に引き上げられそうです。ただし、簡易な簿記の方法により記録している者に係る経過措置の控除額は現行どおり(45万円)とされます。なお、このかいせいは、平成12年分以後の所得税について適用となりそうです。
ポイント7 確定拠出型年金(日本版401K)に伴う税制上の措置 |
確定拠出型年金とは、簡単にいうと、一定の基準で掛け金を定めておき、その拠出金の運用実績で将来受け取る年金額が決まるというものです。この確定拠出型年金に伴って、次のような措置が講じられるようです。
<拠出坦懐>
@企業型年金の事業主掛金については、損金(必要経費)算入を認めるとともに、給与所得課税は行わない
A各年において個人型年金の加入者が自己の加入する個人型年金につき支払った個人型加入者掛金は、その全額を所得控除の対象とする
ポイント8 住宅ローン税額控除制度の見直し |
住宅ローン税額控除制度について、平成13年中に居住の用に供した場合の住宅借入金の年末残高の限度額や控除期間、控除率は次の表1のように定められそうです。
表1
現行 |
平成13年居住分 (控除期間6年) |
住宅借入金等の年末残高 2,000万円以下の部分 適用年 全期間 控除率 1% 住宅借入金等の年末残高 2,000万円超3,000万円以下の部分 適用年 全期間 控除率 0.5% |
改 正 案 |
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平成13年1月1日から同年6月31日までの居住分 (控除期間15年) | 平成13年7月1日から同年12月31日までの居住分 (控除期間6年) |
住宅借入均等の年末残高 5,000万円以下の部分 適用年 1年目から6年目まで 控除率 1% | 住宅借入均等の年末残高 2,000万円以下の部分 適用年 全期間 控除率 1% |
住宅借入均等の年末残高 5,000万円以下の部分 適用年 7年目から11年目まで 控除率 0.75% | 住宅借入均等の年末残高 2,000万円超3,000万円以下の部分 適用年 全期間 控除率 0.5% |
住宅借入均等の年末残高 5,000万円以下の部分 適用年 12年目から15年目まで 控除率 0.5% |
ポイント9 年少扶養控除額の特例の廃止 |
年齢16歳未満の扶養親族に係る扶養控除(年少扶養控除)額の割増(10万円加算)の特例が廃止され、38万円に引き下げられそうです。
以上は、改正が検討されている事項のうちの一部です。(なおこの内容は、自民党の平成12年度税制改正大綱等に基づいており、変更される場合があります)