所得税関係の改正 平成11年
(1)所得税及び個人住民税の減税の実施@所得税の減税
ア.最高税率の引き下げ
この最高税率については、従来50%であったのが37%に引き下げられ、さらにその適用所得金額が従来の3,000万円から「1,800万円」に引き下げられました。
この所得税率の引き下げと後で述べる個人住民税率の引き下げの結果、両税を合わせた最高税率は50%となります。
なお、改正後の所得税の速算表は次のとおりです。
課税所得金額 |
税率 |
控 除 |
|
超 |
以下 |
||
330万円 |
10% |
||
330万円 |
900万円 |
20% |
33万円 |
900万円 |
1,800万円 |
30% |
123万円 |
1,800万円 |
37% |
249万円 |
※ 定率減税は加味されていません。
イ.定率減税の実施
定率減税は、その者の所得税額から定率の減税額を差し引くというもので、その定率の減税額はその年分の所得税額の20%相当額(その金額が25万円を超える場合には25万円)とされます。
定率減税の基本的な実施方法は次のようになります。
a.給与所得者の場合
・給与等について適用される源泉徴収をすべき所得税額表に定率減税が織り込まれています。
・年末調整の際に、年税額から定率減税の額を控除します。
b.事業所得者等の場合
・予定納税基準額は、定率減税を織り込んで計算します。
・確定申告書の提出の際に、その年分の所得税額から定率減税の額を差し引くことになります。
この最高税率の引き下げ、定率減税ともに平成11年分の所得税から適用されますが、給与所得者の場合11年4月1日以後に支払われる給与等から定率減税と最高税率の引き下げを織り込んだ新税額表によって源泉徴収することになります。
なお、今年1月〜3月に支払われた給与等については、特例が設けられ、今年の6月1日以後最初に支払われる給与等について源泉徴収される所得税額から、1月〜3月分の源泉徴収された所得税合計額の20%相当額を差し引くことになります。ただしこの差し引く金額の上限額は4万5千円とされます。
いわゆる「子育て減税」として、年齢16才未満の扶養親族に係る扶養控除額が48万円(従前は38万円)に引き上げられました。
これらの改正については、平成11年分の所得税から適用されます。
個人住民税においても「最高税率の引き下げ」「定率減税」「扶養控除額の引き上げ」が実施されます。
ア.最高税率の引き下げ
個人住民税は、700万円超の課税所得に対しては13%(従前は15%)の税率の適用
となります。なお、個人住民税の税率表は次のようになります。
課税所得金額 |
従前 |
改正後 |
200万円以下 |
5% |
5% |
700万円以下 |
10% |
10% |
700万円超 |
15% |
13% |
イ.定率減税
個人住民税の定率減税は、その年度分の個人住民税所得均等割額の15%相当額(上限は4万円)を控除するというものです。
ウ.扶養控除額の引き上げ
特定扶養親族の扶養控除額が45万円(従前は43万円)に引き上げられました。
個人住民税の改正については平成11年度分から適用されます。
(2)住宅ローン減税
「住宅ローン控除制度」が見直され、平成11年又は12年中に居住の用に供した場合について、次ページの表のように住宅借入金等の適用限度額の引き上げと控除期間の延長等が図られました。
なお、適用対象となる住宅借入金等には、住宅とともに取得される土地(敷地)又は土地の上に存する権利の取得に要する借入金も含まれることになりました。また、従前の床面積基準(50u以上240u以下)のうちその上限基準が廃止されました。
併せて、居住用財産の買い換えの場合の譲渡損失の繰越控除制度とこの住宅ローン減税との併用(従前は選択)が認められることになりました(平成11年1月1日以後の譲渡に係る譲渡損失について適用)。
住宅ローン控除制度
従 前 |
改 正 後 |
||||
住宅借入金等 の年末残高 |
控除期間及び控除率 |
住宅借入金 の年末残高 |
控除期間 |
控除率 |
|
当初2年間 |
残り4年間 |
||||
1,000万円以下の部分 |
2%(平成12年居住分は1.5%) |
1% |
5,000万円 以下の部分 |
1年目から6年目まで |
1% |
1,000万円超2,000万円以下の部分 |
1% |
1% |
|||
7年目から 11年目まで |
0.75% |
||||
2,000万円超3,000万円以下の部分 |
0.5% |
0.5% |
12年目から13年目まで |
0.5% |
平成11年1月1日から12年12月31日までの間に長期所有の土地等を譲渡した場合の譲渡所得について、特別控除後の譲渡益(課税長期譲渡所得金額)に一律20%の税率となり負担が軽減されました。(下表)
その他に、細かな改正により税負担の軽減が図られています。
従 前 |
改 正 後 |
||
課税長期譲渡所得金額 6,000万円以下の部分 |
20% (地方税6%) |
課税長期譲渡 所得金額 |
一律20% (地方税6%) |
課税長期譲渡所得金額 6,000万円超の部分 |
25% (地方税7.5%) |