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助川公認会計士事務所 会社設立 08/08/05
決算期と消費税の負担の関係

決算期を決めるにあたって注意することは何か。決算期の設定次第で消費税の負担等も変わってきます。

 消費税の基本的な仕組み

1.消費税の納税義務

 消費税は法人税や所得税と異なり、事業を営んでいる人(法人)すべてに納税義務が生じるわけではありません。法人については前々事業年度の課税売上高(税抜き金額)が1,000万円を超える事業者に限り、納税義務を負うとせれています。つまり、どれだけの売上げをあげても、前々事業年度の課税売上高が 1,000万円以下であれば、今期においては消費税を申告・納付する必要がないことになります。

2.新設法人の場合

 新設法人で資本金が1,000万円以上ならば前々事業年度がなくても設立第1期、第2期は納税義務を負うこととされています。したがって、資本金1,000万円未満であれば 、設立第1期、第2期は免税事業者となります。

 しかし、どんな会社でも設立当初はなかなか売上げはあがらず、資金繰りも厳しいのが現状でしょう。そこで資本金1,000万円以上の企業ならば、決算期を工夫することで消費税の負担が異なってきます。

 

以下のケーススタディでは、3,000万円以上を課税事業者として、計算している

 ケース1 事業年度を4月1日から3月31日にした場合

 資本金1,000万円 サービス業、9月に設立し、事業年度を4月1日から3月31日にした場合

各事業年度の売上高(税込)  第1期2,100万円、第2期1億円、第3期2億円

経費(課税仕入れ・税込)   第3期5,000万円

 まず、第1期、第2期は事業年度開始における資本金の額が1,000万円以上であるため、自動的に消費税課税事業者となります。また、第3期の納税義務の判定は、第1期の課税売上高により判定されます。

 算式  前々事業年度の売上高(税抜)÷事業年度の月数×12

第1期の売上高(税込)は9月から翌年3月までの7か月で2,100万円なので上記の算式にあてはめると

 2,100万円×100/105÷7月×12≒3,428万円

になり、年間の課税売上高が3,000万円を超えるため、第3期も課税事業者となり、消費税を納付する必要があります。なお、第3期の消費税額は以下の通りです。

本則課税の場合

(2億円−5,000万円)×100/105×5%≒7,142,800

簡易課税を選択している場合

(2億円−2億円×50%)×100/105×5%≒4,761,900

第1期  第2期  第3期 
売上高  2,100万円  1億円  2億円
判 定 課税事業者  課税事業者  課税事業者 

 決算時を決定するときは、まず業務量や資金繰りを優先的に考慮すべきでしょう。しかし、決算時を変えることで消費税の有利、不利が出てくる場合もあるので、資金繰り等に差し支えがなければ検討してみるべきでしょう。そこでケーススタディ@とケーススタディAを比較してみましょう。

 ケース2 事業年度を11月1日から10月31日にした場合

 資本金1,000万円・サービス業、9月に設立し、事業年度を11月1日から10月31日にした場合。第1期の売上高は420万円とし、売上、経費は、同じ条件とする。

 ケーススタディAはケーススタディ@とほぼ同じ設定ですが、ケーススタディ@が事業年度を4月1日から3月31日までと決めたことに対して、ケーススタディAでは、事業年度を11月1日から10月31日までとし、第1期の売上高は420万円としています。

 この場合、第1期、第2期については、ケーススタディ@と同様に課税事業者となります。

 さて、第3期の納税義務の判定ですが、前途の式を当てはめてみると

 420万円×100/105÷2月×12=2,400万円

となり、年間の課税売上高が3,000万円以上であるため、第3期は免税事業者となります。したがって、第3期においては消費税を納付する必要がなく、消費税相当分が会社の利益となります。

  このように会社を設立する場合、設立後2〜3年先の中期経営計画による予想売上高などに基づいて、消費税の取扱いの有利不利を考慮に入れて決算期を考えてみることが大切です。

第1期  第2期  第3期 
売上高  420万円  1億円  2億円
判 定 課税事業者  課税事業者  免税事業者 

 また、設立当初から一定額以上(2億円以上/年)の売上高が見込めるような法人の場合、事業年度を工夫することによって、消費税の負担額が異なってきます。 

 ケース3 資本金1,000万円以上、初年度から一定額以上の売上げが見込める場合

 資本金1,000万円以上、初年度から一定額以上の売上げが見込める場合

資本金1,000万円・サービス業、9月に設立し、事業年度11月1日から10月31日(決算10月31日)とする。

各事業年度の売上高(税込)  第1期3,000万円、第2期3億円、第3期5億円

経費(課税仕入れ・税込)   第1期5,000万円、第2期2億円、第3期2億円

  この場合、第1期目から3,000万円以上の課税売上高が見込めるため、第3期が課税事業者になることは間違いありません。しかし、簡易課税制度を適用する方が税額が少なくなると予想されるため、決算期を2か月の10月末にした場合、第3期の判定は、

3,000万円×100/105÷2月×12≒1億7,140万円

となり、課税売上高が2億円以下のため、第3期において簡易課税方式を選択できます。

 したがって、第3期の納税額は、

(5億円−5億円×50%)×100/105×5%≒1,190万円

となります。

(本則課税場合は(5億円−2億円)×100/105×5%≒1,428万円)

  この例では、初年度からかなりの売上高を予想できることから、第1期の決算期をこれ以上遅らせると、各月の売上げは順調に増加し、年換算の課税売上高が2億円を超えることが考えられます。すると、第3期に簡易課税方式を選択できなくなり、納付する金額の方が多くなることが予想されます。

 したがって、このような法人を設立する場合にも、設立後2〜3年先の中期経営計画による売上高および支出経費等の予測に基づいて、簡易課税制度適用の有利不利の判定を行うことが重要かと思われます。

第1期  第2期  第3期 
売上高  3000万円  3億円  5億円
判 定 課税事業者 

本則課税

課税事業者 

本則課税

課税事業者 

簡易課税

 

 

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