助川公認会計士事務所 | 医療法人の会計税務 | 04/10/28 |
一人医師医療法人のメリットとデメリット |
一人医師医療法人とは、個人で行ってきた医療事業を、個人が出資者となって設立した医療法人によって継続していくことを意味します。医療法人は、個人とは別の独立した人格主体となりますので、事業上生じた権利義務は、全て医療法人に帰属することになります。
このため、個人診療所と一人医師医療法人とでは法律構成が大きく相違します。また、個人によって開設された診療所は、個人の死亡によって自動的に「廃止届」を出すことになります。これに対して医療法人によって開設された診療所は、理事長の死亡によって、即、診療所が廃止されることにはなりません。新たに医師又は歯科医院の資格を有する子供達が理事長に選任されるならば、同一の医療機関として継続することになります。このように、「法人」は、事業が自然人の死亡と直接結びつかない点に最大の特徴があります。
「個人診療所」から「一人医師医療法人」に切り替えるメリットとデメリットについて
メリット |
1.経営上の観点から
診療所の経営上の収支と、医師個人としての家計の収支とを明確に分離することができます。また、次のような意見も聞かれます。
・診療所経営に対する意識変革…積極的に経営していこうという意識が芽生えた。
・組織としての安定化に好影響が出てきている。
・従業員の意識も積極的になった。
2.税務上のメリット
税務上のメリットとしてあげられるのは、まず所得税に適用される超過累進税率(最高税率37%)から解放され、法人税の2段階比例税率(22%と30%)が適用されます。これによって表面税率のみの単純な比較だけでも、医療法人が有利になるケースがわかります。
節税という観点からのメリットとしては、院長先生および院長夫人などの家族は「一人医師医療法人」から給与を受けることになり、所得が分散されるため、その分、節税効果が期待できます。また、給与所得控除を受けることもできます。
さらに、医療経営というものを長い目で考えた場合、必要不可欠な退職金の支払いが認められます。もちろん個人営業の所得税の範疇では院長と生計を一にする親族に、退職金は認められません。個人では掛け捨てになってしまう、生命保険の保険料も医療法人では全額損金処理できるため経営上のプラスになります。
そうした複合的なメリットに加えて、とくに銀行などの金融機関を含めた対外的信用が大幅に向上するため、医療設備の充実などの際に必要な借入などにもメリットを発揮します。老人保健施設の経営も認められます。
3.相続対策が容易
デメリット |
1.経営上の観点から
多角経営ということを考えた場合、付帯業務禁止規定によって、行うことが可能な業務が制限され、医療法人としては不動産の売買業、飲食店の経営などが不可能になります。
2.税務上のデメリット
まず交際費として損金算入可能な金額の限度が設けられます。個人経営の場合、必要な支出として証明できるものは経費として認められてきたものが、法人の場合は、出資金額に応じて、400万円、300万円、ゼロと定額控除制度額が設けられています。