助川公認会計士事務所 | 医療法人の会計税務 | 04/10/28 |
医療法人の税務上の仕組みと役員報酬 |
「医療法人」は、まず法人として独立した人格を持ち、それまで個人事業主であった開業医の先生は医療法人の役員に、奥様などの家族従業員は、役員または職員になることができます。また、医療法人の事業所得には法人税、地方税が課せられます。
医師および家族従業員の方々は一定の給与所得を得ることになり、一人一人が所得税、地方税の対象となってきます。また、「医療法人」の事業所得にはやはり法人税、地方税が課せられることになります。
基本的には「個人診療所」と「一人医師医療法人」とで税制上の有利、不利はケースバイケースで判断するしかありません。それは、個人診療所段階での医業所得、不動産所得などの実情と、法人成りをした場合の院長をはじめ家族従業員の給与の決め方、さらに診療所の建物、土地その他必要な医療機器などを現物出資するのか、賃貸借関係にするのかなど複雑な要因がからんできますので、一概に有利、不利の判断をするのは不可能です。
したがって、この問題については、法人化の目的、制度、そして税制面の仕組を十分に認識した上で、メリット、デメリットを考慮し総合的に判断することが肝要と思われます。
「一人医師医療法人」の節税効果 |
「一人医師医療法人」になると、所得税に適用される超過累進税率から解放され、法人税の二段階比例税率の適用による節税効果があります。
さらに、理事長及び理事長夫人など家族も、一人医師医療法人から給与を受けることにより、所得が分散され、かつ給与所得控除を受けることにより法人税、所得税を相対的に比較すると節税効果が期待できます。
ここで注意すべきことは、一般論としては一人医師医療法人制の方が有利である場合が多いのですが、院長個人の総所得金額が比較的低額の場合には、個人経営の方が有利なケースがあることです。また、法人成りをしても、理事長の報酬のとり方によっては、メリットが減少する場合があります。
一人医師医療法人とする場合の個人と法人の税負担の例
たとえば個人医師の所得金額3,206万円の場合の税計算
所得金額 3,206万円
諸控除 206万円
課税標準 3,000万円
個人の所得税と住民税の税額 1,195万円……A
これを法人組織にし、理事長報酬を1,506万円とした場合
法人課税標準 1,700万円(3,206万円−1,506万円)
法人税と法人住民税の税額 524万円……B
理事長給与収入 1,506万円
同給与所得 約1,260万円
同課税標準 1,054万円
個人の所得税と住民税の税額 約275万円……C
B+C 799万円……D
節税額 A−D 396万円
この場合、一人医師医療法人制度への移行することは、税金面から見た場合、有利になります。さらには、法人へ組織変更後の理事長及びその家族等の報酬給与を如何に設定すれば、有利かどうかの判定も計算可能となります。
法人成りした場合の節税効果は、それぞれの所得水準がいかなる状況にあるかによって、いずれがもっとも有利であるかどうかが異なってきますので注意してください。理事長報酬額の変化に伴う、法人税並びに所得税全体の計算は、個々の診療所の特殊事情を踏まえて、正確なシミュレーションをおこなう必要があります。
助川公認会計士事務所では、エクセルシートにより、正確なシミュレーションをおこなっておりますので、ご相談ください。