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助川公認会計士事務所 医療法人の会計税務 04/10/28
歯科医院を知ってもらうには  認知行動

1.「よい評判」は患者が作る

 診療圏のなかでよい評判が生まれるようになり、評判が評判を生み、とくに集患活動の必要もなく、患者が次々と来院してくる状態は歯科医院経営にとっては理想的な状況である。しかし、「よい評判」は歯科医院が作るものではない。患者が作るものである。歯科医院は「よい評判」の内容となる満足感を患者に提供できるだけなのである。

 「よい評判」が生まれるためには、ある程度の患者が来院するとともに、まず地域住民がある程度その医院について「知って」いなければならない。よい評判を生む前の段階として、地域住民は、どのような方法で歯科医院の存在を知るようになるのか「認知方法・認知理由」についてみてみることとする。

2.来院を促すための最初のきっかけを知る

 この認知理由を知るということは、来院を促すための最初のきっかけを知ることで、競合する歯科医院のそれと比較して自院の強みがどこにあるのか、あるいは逆に、自院も弱みはどこにあるのかを浮かび上がらせることになる。これが明確になれば、強みを伸ばしながら弱みを改善していくことで、認知率を向上させることが可能となる。

 ただしその場合、歯科医院の立地する地域の全体的な状況(大都市、地方都市、郡部など)と、個々の歯科医院の立地条件(オフィス街、商店街、住宅地など)によって、認知の方法が大きく異なってくる。さらに、交通量の多い道路、鉄道線路、河川などの要因もからんでくることに注意しなければならない。

3.歯科医院の認知理由

 「首都圏ニーズ調査」で、4,027件の有効データがあり、複数回答による歯科医院の認知理由は、表1のようになった。

表1 歯科医院の認知理由

 

全地区

(人数(指数)

回答者数

4,027    

1.0000          

 

認知理由数

9,900    

2.4584 

100.0

@自分・家族が行ったことがある

3,890          

0.9660 

39.3

A人から聞いたことがある

1,047         

0.2600

10.6

B看板を見て知っているだから

4,712       

1.1701

47.6

Cドクターと知り合い

97       

0.0240

1.0

Dその他

154         

0.0382

1.6

 表1をみると、まず「住民1人当たり約2.5件の歯科医院を知っている」ということがわかる。「明確に印象に残っている歯科医院は2.5件」と言い換えることもできる。これは質問の方法にも影響されるが、この場合は「知っている医院の名前を出して下さい」ではなく「このなかから知っている医院を選んで下さい」という客観選択式にし、あらかじめ想定される診療圏内の歯科医院をリストアップしているので、1人当たりの認知医院数は高めに答えられているはずである。こうした回答方式において選択しやすくなっていても、住民の記憶の中には2つないし3つの歯科医院しか残っていないこととなる。

4.看板を見て知っている

 また、認知理由のなかでは「看板を見て知っている」という理由および「自分が行ったことがあるので知っている」という理由がもっとも多くあげられている。したがって、住民1人が知っている「2件の歯科医院」については、この2つの理由の一つずつがそのまま当てはまっていると考えてよいであろう。すなわち、診療圏内で1件は実際に自分が通ったことがあるので認知しており、またもう1件は自宅の近く、または駅前、通勤通学途中などに看板を見かけることによって知っているのである。この「認知理由」のデータについては複数回答(1つの医院に対し、認知理由が複数存在する)で求められているので、一概に認知理由の優先度合いを計ることはできないが、ある程度このような傾向を推測することはできる。

 また、全体の回答の中で「人から聞いて知っている」と答えたケース、すなわちくちコミによる情報を得ているという回答者が1,047件あったことは注目しておくべきである。これから考えると、4人に1人は「歯科医院の噂」を何らかの形で聞き、それを記憶している。この「人から聞いて」という設問では、「よい評判を聞いて」なのか「悪い評判を聞いて」なのかは判断しづらいが、歯科医院についてのくちコミ情報は予想していたよりも多く流通しているといえるのではないだろうか。

5.広告宣伝活動が重要である

 さて、このように「歯科医院を認知する」という行動については傾向を得ることができた。これを考えると改めて「認知のためにはやはり広告宣伝活動が重要である」ということがわかる。2.5件の認知医院についてのうち1件は「看板を見て」知っているわけであり、一方もう1件は「行ったことがあるから」知っているわけである。しかし、「行ったことのある1件」も、はじめて治療を受ける前、最初に認知する時は何らかのきっかけがあったはずである。この「歯科医院を認知するはじめての機会」を「ファースト・コンタクト」と呼ぶことにする。このファースト・コンタクトについてみてみよう。

ファースト・コンタクト

回答数

割合

人から聞いて

1,047回答

17.4%

看板を見て

4,712回答

78.4%

ドクターと知り合い

97回答

 1.6%

その他 

154回答

2.6%

合 計

6,010回答

100.0%

 ファースト・コンタクトの率からみると、やはり「看板を見て」という理由が圧倒的である。歯科医院の存在を認知させるためには、広告宣伝活動を欠かすことができない。「看板」による広告活動がもっとも普遍的ではあるが、バスや電車内の広告、スタッフ募集と医院の認知向上を兼ねた新聞折り込み広告、または新聞の地域版などにおけるパブリシティ活動なども現在ではそう珍しいものではなくなっている。医療法第69条による広告の規制と問題があるが、「広告宣伝をしてはいけない」というものではない。やはり広告宣伝活動をしなければ、自院に来院されたことのない人=潜在患者に自院の存在を知らしめることはできないのである。

 歯科医院にとって広告宣伝活動はしないほうがよい、という間違った考えた方は改めなければならない。広告宣伝活動はしなければならない。宣伝があって、はじめて知り、そしてすでに自分が治療を受けたことのある医院と比較したうえではじめて「試用」という形で選択し来院するというアクションにつながるのである。ファースト・コンタクトについて巧みな戦略を築き実行している歯科医院は、当然「新規初診患者」が多いことになる。

 表1「認知理由」のデータから得られる答は、「広告宣伝活動、すなわち“知らせる活動”をしなければ、患者は増えない」といえる。

   

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