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助川公認会計士事務所 医療法人の会計税務 04/10/28
理事の業務と役員報酬の決め方

 院長としての医療業務と、理事長としての経営管理業務を明確にして、それぞれに関わった業務日数などの比率によって、区分し、明らかにしなければならないと考えられます。

1.理事長の業務

 役員である理事長の職務は「医療法第46の3条第3項」の「理事長のみが本社団を代表する」と「理事長は、本社団の業務を総理する」という二つの規定によって、自ずと決まってくるわけです。さらに、理事長は社員会、理事会を招集して議長として下記の業務を行うことになっています。

【社員会の業務】

@定款の変更

A毎事業年度の事業計画の決定及び変更

B収支予算及び決算の決定

C剰余金及び損失金の処理

D借入金額の最高限度の決定

E社員の入社及び除名

F本社団の解散

G他の医療法人との合併契約の締結

 その他重要な事項を審議して決定することになっています。

【理事会の業務】

 理事会では、社員総会で議決しなければならない、項目以外のすべてについて協議し決定することになります。この他に理事長は、ただ一人の医療法人の代表者として、医療以外の対外的業務をいっさい行うことになります。

2.院長の業務

院長の業務に関しては大きく、二つがあげられます。

@病院の管理者としては、「医療法第15条」に規定されている病院の管理者として、勤務する医師、歯科医師、薬剤師のそれぞれが、その業務遂行に支障を来すところのないように、必要な考慮をしなければなりません。

A医師として「医師法第4章」で規定している業務を行うことです。

 以上のことから、通常、理事長の役員としての業務は時間的にも労力的にも相当の負担が生ずることが明らかです。

3.税務上の認められる役員報酬

次に税法上からこの問題を考えてみましょう。「一人医師医療法人」の理事長は、代表者にも関わらず、医師として、いわゆる使用人の職務も兼務せざるを得ません。

 ここで、一般的に使用人兼務役員というのは、役員のうち、部長、課長など法人の使用人として職制上の地位を有し、かつ常時職務に従事している者をさします。

 この場合、使用人としての地位を有するものであっても、理事長については使用人兼務役員には該当しないということになっています。

 次に、使用人兼務役人については、「使用人の職務に対する相当な賞与の額」は、損金の項目に算入されますが、医療法人の理事長については、結果的に「賞与・損金不算入」の扱いになることは止むを得ないこととされています。

 なお、特に注意をすべき点は、理事長が医療法人使用人を兼ねることができても、社員総会で承認された予算を超えて、院長給料を増額することはできません。

4.理事である妻の役員報酬と専従者給与

  青色専従者給与の適正額は、次のように考えられます。

@青色専従者届出書に記載した方法に従って、その記載されている金額の範囲内で、青色専従者が支払を受けた給与であること。

Aその給与が、次に照らして、労務の対価として相当と認められる給与であること。

a.その労務の従事期間、労務の性質および提供の程度。

b.自院の使用人に対する給与の支給状況との比較、同地域の同診療科で類似の規模の他院が使用人に支給する給与状況との比較。

c.自院の診療科、規模、収益の状況。

これらの要因に照らして過大と認められる場合には過大給与として過大部分は必要経費に算入されません。

【裁判例】

開業医の青色専従者給与についての判例では、平成元年1027日、徳島地裁判決が出され、開業医が妻に支給した昭和55年分〜57年分の青色専従者給与の額が過大であるとして、過大額は必要経費になりませんでした。この判決によりますと、青色専従者給与の労務の対価として相当な額は、同業種、同診療科、同期間、青色申告者、事業者の妻で事業に専ら従事している者、資格のない者の内から徳島県綯いから41例を選定し、その単純平均を適正額としています。この判決では、労務の性質及び提供の程度は実態確認がむずかしいためか考慮されず、さらには、規模、収益の状況さえも考慮されておりません。

 開業医自身で他院の経営資料を入手するには限界がありますが、医師会等のアンケートなどの資料があれば、適正額の判断の参考になるでしょう。

 青色専従者給与の適正額について、法人成りした場合の理事である妻の役員報酬も同様に考えなければなりません。

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