助川公認会計士事務所 |
企業会計 |
04/10/28 |
広告宣伝費における前払費用と繰延資産の相違 |
前払費用も繰延資産もいずれも支出した費用の一部が資産に計上されるものですが、どのような違いがあるか。たとえば、広告宣伝費は支出の効果の発現が将来に及ぶものであるが、繰延資産に計上するのは特定の場合に限られます。
前払費用とは、一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるため支出する費用のうち、その支出する日の属する事業年度終了の日において、まだ提供を受けていない役務に対するものをいいます。これに対して繰延資産とは、既に対価の支払が完了し又は支払義務が確定し、これに対する役務の提供も受けたが、その効果が将来にわたって発現すると期待される費用です。
前払費用と繰延資産の相違
前払費用 | 繰延資産 | |
役務の提供 | まだ受けていない | 既に受けた |
対価の支払 | 支払済み | 支払済み |
費用の効果の発現 | 役務の提供をまだ受けていないから当然まだである | 将来に及ぶ |
いいかえれば、前払費用は役務提供を受ける期間の経過に基づいて費用化するものですが、繰延資産は費用の効果の発現する期間に基づいて費用化する。
広告宣伝費の場合、支払済みの広告料のうち広告掲示の契約期間等に基づく未経過期間対応分を資産に計上するのが前払費用であり、広告の効果の発現期間を見積もって将来の期間が負担すべきものを計上するのが繰延資産です。
広告宣伝の効果は即座にあらわれるものでなく、広告を繰り返すことにより、相当日時が経ってからあらわれるものが多いと思います。しかし繰延資産は本来の資産でなく擬制資産であり、この点が前払費用と性格の異なるところです。例えば前払費用の場合は契約を中途解約したとき、既払費用の全部又は一部を没収するという条項がある場合を除いて未経過期間に対応する費用の返戻が受けられますが、繰延資産はそのようなことがなく、この意味での資産性はありません。
期間損益対応の原則又は収益費用対応の原則によって、発生済みの費用を繰延経理しているにすぎないのです。従って、企業会計原則注解15は「経過的に貸借対照表上繰延資産として計上することができる」としてその計上に消極的な立場をとっており、財務諸表等規則では商法の規定によるもの以外の繰延資産はその計上を認めていません。