助川公認会計士事務所 |
企業会計 |
04/10/28 |
税効果会計」とは? |
新聞に「税効果会計」が導入されたなどの記事がよく取り上げられています。有力企業等の株式公開会社には平成11年4月1日以後開始する事業年度から強制的に適用されますが、今回はその「税効果会計」について解説します。
◇税効果会計は税金を「いくら払うべきか」を基準にする
「税効果会計」とは、簡単にいうと、税金を「本来いくら支払うべきか」を基準にして決算書に計上する仕組みをいいます。
従来の会計基準では、税金を「いくら支払ったか」を基準にして、毎期実際に支払った税金を決算書に計上してきました。しかしこれでは、例えば、企業が退職給与引当金を有税で積む場合と積まない場合とを比べると、有税で積んだ場合、税引後の利益は必要以上に減ることになります。
そこでこうした税金による業績の変動を調整するのが税効果会計です。つまり実際の納税額が本来負担すべき税額より多い場合、繰延税金資産として貸借対照表に計上するのです。
欧米では、この「税効果会計」が主流となっています。
◇税効果会計を導入すると不良資産の処理がしやすくなる?
税効果会計導入の目的は、有税償却等による一時的な税金の支払額の増加に伴い税引後の利益が大きく変動することを避けることが上げられます。
つまり、企業が税効果会計を導入することによって、税負担増によるその期の収益悪化を気にせず、有税償却などによる思いきった不良資産の処理等が行いやすくなり、リストラに有効なようです。同時に、実際に支払う税額に左右されずに利益を測ることもできます。
−簡単な例による比較−
例:平成11年3月期と12年3月期に税引き前利益が2,000の企業が売掛金400を有税償却する。税率を仮に50%とすると・・・
<税効果会計を導入しない場合>
有税償却による税負担200となります。
平成11年3月期 : 税引き前利益2,000 法人税など支払額 2,000×50% =1,000 本来の法人税1,000 と 税負担200 の合計1,200 となり、 税引後の利益800 となります。 2,000 - 1,200 = 800
平成12年3月期 : 税引き前利益2,000 前期支払った法人税200が還付されるので、税負担は、1000-200 = 800 となります。 法人税など支払額800 税引後の利益1,200
平成11年3月期には有税償却による税負担分200を余分に支払うが、12年3月期に
税務上の貸倒要件を満たしたので、税金の負担200が減ります。
<税効果会計を導入した場合>
平成12年3月期 : 税引き前利益2,000 会計上の税負担軽減分200 で法人税1,000となる 税引後の利益1,000
平成12年3月期 : 税引き前利益2,000 会計上の法人税など1,000 税引後の利益1,000
平成11年3月期に、実際には有税償却に伴う200の税金の支払いはあるが、会計上はそれがなかったことにし、11年3月期と税金の負担200が減る12年3月期ともに税引後の利益は1,000となります。
新聞等で、大手鉄鋼5社等が平成11年3月期決算から前倒しでこの「税効果会計」を導入するとの報道がなされましたが、その背景には、収益向上を目指してリストラを行っていることがあるのです。
*「有税償却」とは、税法の法定限度額を超えて償却費を計上すること。法定限度額超過部分は税法上損金として処理できず、法人税等の課税対象となることから有税償却と呼ばれます。
◇株式を公開していない企業はどうなる?
この税効果会計は、株式の公開会社においては、平成11年4月1日以後に開始する事業年度から、「個別財務諸表」「連結財務諸表」について強制的に適用されます。
一方、株式を公開していない会社においては、商法では「税効果会計を適用することが適当である」とされています。しかし、税効果会計の積極的な適用は、決算に対する会社の姿勢についての評価につながります。特に、含み益のある資産を将来処分する予定のある企業や、現在は赤字経営だが、黒字に転換できる見込みのある企業などは、税効果会計の適用を検討すべきでしょう。
◇子会社はどうなる?
「連結対象子会社」については、申告調整項目に対する税効果会計を適用する必要があります。「連結対象子会社」とは、次のような企業です。
・株式を公開している会社(親会社)に議決権の過半数を所有されている企業
・株式の公開企業(親会社)に議決権の40%以上を所有され、取締役の過半数が親会社の役員又は従業員・OBである企業など