助川公認会計士事務所 | 商法改正 | 04/05/29 |
所在不明株主の株式売却制度 |
所在不明株主の株式売却制度(商法第224条ノ4) |
一定の要件を満たす所在不明株主の株式は、取締役会の決議によって売却できるようになりました。これにより、会社の株主管理にかかる手間が大幅に少なくて済むようになりました。
ここでいう一定の要件とは、以下のすべてを充たす必要があります。
1 継続して5年間株主へ通知や催告が到達していない。
2 株主名簿に記載のある質権者がいるときは、その質権者についても継続して5年間通知や催告が到達していない。
3 継続して5年間配当金が受け取られていない。
売却の方法(商法第224条ノ5第1項、第2項)
売却の方法は競売のほかに市場価格のある株式は市場価格で売却することができ、市場価格のない株式は裁判所の許可を得て競売以外に方法で売却することができます。また、会社は取締役会で買い受ける株式の種類、総数および取得価額の総数を決議することにより、一定の範囲内でこの株式を買い受けることができます
金庫株…「トレジャリー・ストック」の訳で、トレジャリー(金庫)にしまっておくストック(株式)の意味。当面の具体的な使用目的もなく、また消却もしないで会社が保有しつづける自社株式を意味する。
売却のための公告・通知(商法第224条ノ5第3項)
会社が所在不明株式を競売または売却する場合には次の事項を公告し、かつ株主名簿に記載のある株主、その共有者、登録質権者それぞれに通知しなければなりません。
1 株主の氏名及び住所
2 各株主の有する株式の種類および数
3 各株主の有する株式につき株券を発行したときは、その株券の番号
4 その株式を競売または売却する旨
5 利害関係者に対して異議があれば一定の期間内に述べるべき旨
売却処分(商法第224条第4項、第5項)
一定期間内に利害関係者が異議を述べなかったときは、その株券はその期間満了時に無効となります。いったん無効となった後、会社は株式の再発行を行ったうえで競売または売却処分することになります。売却代金は従前の株主に支払わなければなりませんが、10年間受領されない場合には、支払義務は時効により消滅します。また、代金を供託することで、債務を免れることも可能です。
株券失効制度 |
株券失効制度とは、株主の地位を表象する株券を喪失した人が当該株券を無効にするとともに、株券の再発行を受ける手続きを定めたものです(商法第230条ノ9ノ2)。従来は、株券の再発行を受けようとする場合、裁判所に申し出て、公示催告手続きを経て、除権判決を得ることが必要なため、多くの費用と時間を要していました。今回の株券失効制度は、株券失効の申し出を裁判所ではなく、会社に直接行うことにより、この問題を根本的に解決するものです。
1 株券を喪失した株式は、会社に対して、喪失登録の申請を行います。
2 会社はこの申請を受けて、株券喪失登録簿を作成し、必要事項を記載します。
3 喪失登録の翌日から1年以内に株券を所持する第三者が現れなかった場合には、その1年が経過した日に喪失株券が無効となります。
4 その後、喪失株主は会社に対して株券の再発行を請求することができます。