助川公認会計士事務所 | 会社法 | 10/04/03 |
監査役と監査役会の義務と責任 |
監査役は何をすべきか ・・・義務
1.取締役の経営意思決定の監査
取締役の経営意思決定の監査とは、一言でいえば経営判断の原則に従って意思決定が行われているかを見ようというものであり、最重要項目といえます。
経営判断の原則の具体的な観点として、日本監査役協会の監査基準19条では、次の事項をあげています。
@事実認識に重要かつ不注意な誤りがないこと
A意思決定過程が合理的であること
B意思決定内容が法令または定款に違反していないこと
C意思決定内容が通常の企業経営者として明らかに不合理ではないこと
D意思決定が取締役の利益または第三者の利益ではなく、会社の利益を第一に考えてなされていること
2.内部統制システムの整備状況の監査
平成18年5月1日に施行された「会社法」において、すべての大会社は、取締役会において内部統制システムについての基本方針を決議する必要があり、さらに、この決議の概要を事業報告に開示し、監査役はその内容の相当性を判断し報告することが義務付けられました。内部統制システムとは、会社の業務の適正を確保するための体制のことです。
3.内部統制システムに係る監査
監査役は、会社の取締役会決議に基づいて整備される次の体制(内部統制システム)に関して、当該取締役会決議の内容並びに取締役が行う内部統制システムの整備状況を監視し検証しなければなりません。
次の内部統制システムを監査します
@取締役及び使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制
A取締役の職務の執行に係る情報の保存及び管理に関する体制
B損失の危険の管理に関する規程その他の体制
C取締役の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制
D会社並びにその親会社及び子会社から成る企業集団における業務の適正を確保するための体制
E監査役監査の実効性を確保するための体制
4.監査役の調査権限と是正権限の行使
監査役は、いつでも取締役及び使用人に対して事業の報告を求め、または会社の業務・財産の状況を調査することができます。
取締役は、会社に著しい損害を及ぼすおそれのある事実を発見した場合には、直ちに監査役にそれを報告しなければなりません。また、監査役は、職務を遂行するために必要があるときは、子会社に対して事業の報告を求め、または子会社の業務・財産の状況を調査することができます。
監査役は、取締役会で違法または著しく不当な決議がなされることを防止するために、取締役会の全ての会合に出席しなければならないし、必要な場合には意見を述べなければなりません。
また、取締役の不正行為またはそのおそれ、法令・定款違反または著しく不当な事実があると認めた場合には、遅滞なく取締役会に報告しなければなりません。また、取締役の法令・定款違反の行為の結果、会社に著しい損害が生じるおそれがある場合には、当該取締役に対し、当該行為をやめることを請求することができます。
監査役の責任
5.監査役の会社に対する責任
@過失責任
監査役は、その任務を怠ったときは、会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負います。
監査役に対して損害賠償を請求するためには、監査役の任務懈怠の事実、損害発生の事実及び任務懈怠の事実と損害発生の事実の間に相当因果関係があることを立証すれば、監査役の故意・過失に基づくことが当然に推定されることになります。
A連帯責任
会社の被った損害について、当該監査役の任務懈怠だけでなく、他の監査役や取締役の任務懈怠も原因となっている場合は、これらの監査役や取締役の連帯責任となります。
6.監査役の第三者に対する責任
下記に該当する場合には、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負います。
@悪意・重過失による任務懈怠
監査役がその職務を行うにつき悪意または重過失があったことにより、第三者が損害を被った場合
A監査報告書への虚偽記載
監査役が監査報告書に記載すべき重要な事項につき虚偽の記載をしたことにより、第三者が損害を被った場合