助川公認会計士事務所 | 商法改正 | 04/10/28 |
取締役、監査役の責任 |
取締役の責任
取締役の会社に対する責任の免除は全株主の同意が必要とされています(商法第266条第1項、第5項)。しかし、取締役はリスクを伴う重要な意思決定をする必要があるにもかかわらず、代表訴訟により容易に責任追及される可能性があることから、1人の株主でも同意しなければ免責とならないのであれば、経営が萎縮してしまう可能性があります。そこで、改正商法では一定の要件に基づき取締役等の賠償責任額を減額できる制度を新設しました。
1.取締役の責任軽減の制度
@株主総会による減額(商法第266条第7項)
取締役の法令、定款違反行為の責任(商法第266条第1項第5号)については、賠償責任額から一定の額を控除した額を限度として株主総会の特別決議で免除できることになりました。
要件は、取締役が職務を行うにつき、善意かつ重過失がない場合(軽過失による法令定義違反行為)である。
責任軽減の限度は、代表取締役:報酬等の6年分 、 取締役:報酬等の4年分
株主総会への議案提出には監査役(会)の同意が必要である。
A定款の定めによる減額(商法第266条第12項)
定款にあらかじめ減額の範囲を定め、かつその限度内で取締役会の決議をもって取締役の責任額を軽減できるようになりました。定款の定めにより、取締役会決議で責任を軽減した場合には、遅滞なく公告するか、株主に通知しなければならない。
要件、責任軽減の限度は@と同様である。
2.社外取締役の責任軽減措置(商法第266条18項、第19項)
社外取締役についても同様の責任軽減措置がありますが、他の取締役と同様の重い責任を負わせるとその引き受け手がいなくなってしまうため、責任軽減額につき特別の扱いをしています。すなわち、@株主総会による減額、A定款の定めによる減額ともに、報酬等の2年分を限度として軽減できます。または、責任限度契約を締結できる旨の定款規定を設けたうえで、責任免除契約を締結することも認められます。
監査役の責任
監査役の地位、機能が強化されました。
1.任期の伸長(商法第273条第1項)
監査役の地位の安定化を図り、習熟による監査の実効性を向上させるために3年から4年に伸長されました。 ※平成14年5月1日以後最初に到来する決算期に関する定時総会で選任される監査役から任期4年が適用されます。
2.辞任に関する意見陳述権(商法第275条ノ3ノ2)
任期伸長にともない、任期途中での辞任に対しても監査役の身分を保証するために、監査役を辞任した者は、その後最初に召集された株主総会に出席し、その旨および理由を述べることができます。また、この機会を確保するために、会社は辞任した監査役に対して、株主総会が招集される旨を通知しなければなりません。
3.取締役会への出席義務および意見陳述義務(商法第260条ノ3第1項)
監査役が業務監査の義務を履行し、監査役が有している善管注意意義を果たすためには解釈上、当然の義務とされていたものを明文化しました。取締役会にほとんど出席していない場合、監査役の善管注意義務違反が問われるおそれがあります。
4.社外監査役の要件と員数の強化(商法特例法第18条第1項)
従来、社外監査役は、その就任の前5年間会社またはその子会社の取締役またはその他の使用人でなかった者でなければならないとなっていましたが、「5年間」の期間制限を廃止し、会社またはその子会社の取締役またはその他の使用人であった者はすべて除かれることになります。
さらに、監査役会のうち半数以上の社外監査役を置くことが定められました。大会社の監査役の員数は3名以上ですから、最低2名以上の社外監査役を選任する必要があります。これに違反した場合には、取締役は100万円以下の過料の対象となります。
5.選任に関する監査役会の同意見および提案権(商法特例法第18条第3項)
取締役会提出の監査役選任議案が専断的となることを防ぐために、監査役の選任について、監査役選任の同意が必要になりました。さらに、監査役が同意しなかった場合、監査役選任に関する議案の提出請求権を監査役会に与えました。
6.監査役の責任軽減措置(商法280条第1項)
監査役についても、会社に対して損害を与えた場合には損害賠償責任を負うため、取締役と同様の条件と方法で、賠償責任の軽減ができるようになりました。責任軽減の限度は報酬等の2年分となっています。