助川公認会計士事務所 | 商法改正 | 04/10/28 |
ストック・オプション制度の改正 |
旧法では、自社の取締役・使用人に限定したストック・オプションしか認められておらず、行使期間や株式数に上限がある等、使い勝手の悪いものでした。改正法では、特にベンチャー企業にとって使い勝手がいいものにすべく、上記の制限を撤廃しました。
旧法と改正法の相違
項目 | 旧法 | 改正法 | コメント |
付与対象者 | 会社の取締役または使用人 | 制限なし | 子会社の取締役・使用人、税理士等に付与することが可能 |
権利行使期間の制限 | 10年以内 | 制限なし | |
付与株式数 | 発行済株式総数の10分の1以内 | 制限なし | |
譲渡の可否 | 不可 | 可能 | 取締役会決議をもって譲渡制限をかけることは可能 |
定款の定め | 事前に必要 | 不要 | |
新株予約権証券 | 不要 | 必要 | 付与対象者から請求されない限り、発行しない旨を定めることは可能 |
新株予約権原簿の作成 | 不要 | 必要 | |
新株予約権の消却 | 不可 | 可能 | 取締役会決議において消却することができると定めた理由が生じた場合に限る |
株主総会招集通知における付与対象者の開示 | 個別開示が必要 | 必要 | 取締役会で決議 |
株主総会において、ストック・オプションを導入する理由開示 |
正当な理由 |
必要とする理由 |
ストック・オプションを役員・従業員等に付与するに際しての具体的な手続 |
新株予約券の発行は、新株の発行と同時に、原則として取締役会決議のみで可能です。
しかしながら、ストック・オプションの場合は、新株予約権の有利発行(無償で付与)によるため、新株総会の特別決議が必要となります(商法第280条ノ21)。
【ストック・オプション付与のタイム・スケジュール例】
4月1日 取締役会決議〈株主総会招集のため〉(商法第231条)
4月1日 株主総会招集通知発送(商法第232条)
※株主総会の2週間前
4月16日 株主総会承認特別決議(商法第280条ノ21代項)
4月16日 取締役会決議〈ストック・オプション付与〉
(商法第280条ノ20第2項)
4月17日 新株予約権割当契約を対象者と締結(商法第280条ノ29)
※権利付与日
5月1日 登録期限〈本店所在地〉(商法第280条ノ32)
※発行日の2週間以内
5月8日 登録期限〈支店所在地〉(商法第280条ノ32)
※発行日の3週間以内
ストック・オプションに係る税務上の取り扱い |
平成14年4月1日以降になされた株主総会決議に基づくストック・オプションから新ストック・オプション税制が適用されます。
税制適格ストック・オプションの要件を満たす場合、権利行使した時点で所得税は課されず、取得した株式を売却した時点で初めて課税されます。
税制非適格ストック・オプション ※権利行使した時点で課税されます
権利行使時に、(行使時の時価−権利行使価格)に対して、給与所得課税されます。
株式売却時に、(売却時の時価−行使時の時価)に対して、株式譲渡益課税されます
※株式譲渡益課税は源泉分離課税・申告分離課税の選択可(平成15年1月からは申告分離課税に一本化)
※権利行使時は給与所得課税のみ発生するが、翌年度の住民税に反映される点にも留意が必要
税制適格ストック・オプション ※株式売却時に課税されます
株式売却時に、(売却時の時価−権利行使価格)に対して、株式譲渡益課税されます
※株式譲渡益課税は申告分離課税(26%)のみ選択可
※申告分離課税の税率は平成15年1月から20%
税制適格ストック・オプションの要件
項目 | 要件 |
付与対象者 | 自社の取締役または使用人、子会社(発行済株式総数の50%超所有)の取締役又は使用人。ただし、一定の大口株主及びその特別関係者を除く |
権利行使価額の限定額(年間) | 1,200万円以下 |
権利行使期間 | 付与決議の日から10年以内 |
新株予約権の譲渡の可否 | 不可 |
ストック・オプションの総数 | 制限なし |
総会決議から権利行使できない期間 | 2年超 |
契約で定められた一株当たり権利行使価額 | 契約締結時の時価以下 |
権利行使により取得した株式の保管 | 証券会社または銀行に保管委託が必要 |
・一定の大口株主とは、当該付与決議のあった日において、上場会社等については発行済株式総数の10分の1、未公開会社については3分の1を越える数の株式を有している個人をいう。
・特別関係者とは、大口株主の親族(配偶者、6親等内の血族及び3親等内の姻族)、大口株主と事実上婚姻関係と同様の事情にある者及びその者の直系血族、大口株主の直系血族と事実上婚姻関係と同様の事情にある者、大口株主から受ける金銭その他の財産によって生計を維持している者及びその直系血族、大口株主の直系血族から受ける金銭その他の財産によって生計を維持している者をいう。