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助川公認会計士事務所 BTkigyou.jpg (1685 バイト) 商法改正 04/05/29
 商法改正 平成13・14年

商法改正で、企業経営は、どう変わるか

中小企業が注目すべき6つの改正点

 平成13年、14年の一連の商法改正は、コーポレートガバナンスのほかに資金調達やIT化など、様々な観点から広範囲にわたって行われてきた。いずれも企業活動の基盤となる分野の改正で、経営に携わる者は、改正内容をよく理解し対処していく必要がある。その反面、あまりに多岐にわたるため、容易に整理しきれないことも事実だ。そこで、中小企業に関係すると思われる改正点をいくつかピックアップした。

1.金庫株解禁

 経営上活用する際活用のポイントは、持合株式の整理・対策、事業承継対策、企業組織再編成に活用できることである。

金庫株とは、会社が自社の株式(自己株式)を取得、保有することを指す。従前はその取得目的が制限され保有も原則禁止であったが、改正により目的に関係なく取得でき、また取得数量や保有期間の制限規定も撤廃された。

中小企業における主な活用法としては三つ考えられる。まず、会社にとって望ましくない株主等の整理に用いる方法。従来はオーナーの自己資金で株式を買取ることが一般的だったが、金庫株解禁でこれに会社の資金を当てることが可能となった。

二つ目は、事業承継対策。株式を相続する前にオーナーの比率を下げ後継者の比率を上げるために、従来は後継者に高い同族者株価で第三者割り当てを行うケースが一般的だった。これをオーナー所有株式を一旦会社が金庫株として取得することで、相対的に後継者の持ち株比率を引き上げることが可能となる。

三つ目は、合併、株式交換、会社分割などで企業組織の再編成を行う場合。新株発行に代えて保有している金庫株を割り当てることで、新株発行による支払い配当や資本金増加に伴う税負担の増加、既存株主の持分の希薄化などを防止できる。

  

 2.新株発行規制等の見直し

経営上活用する際活用のポイントは、一度に多量の新株の発行で直接金融による資金調達の道がひろがることである。

  会社設立時の最低発行価額の五万円基準が撤廃され、極端にいえば額面一円の株式でも発行できるようになった。また、中小企業などの「株式譲渡制限会社」では、授権株式総数を発行済株式の四倍を超えない範囲とする、いわゆる「四倍規制」が撤廃された。

 また、第三者割当手続きが、特別決議日後一年にないに払込をなす増資につき複数回有効となった。これらの改正により一度に多量の新株を発行することができるようになったことで、中小企業にも直接金融による資金調達が行いやすくなっている。さらに株式分割を行いやすくなったことにより、臨機応変な資本政策が可能になった。資金需要の旺盛な企業にとっては、特にメリットの大きな改正といえる。

 

 3.種類株式制度の見直し

経営上活用する際活用のポイントは、議決権制限株式発行でオーナーの影響力保持と資金調達を両立できることである。

  議決権制限株式(種類株式の一種)は利益配当優先株式に限り「議決権なし」が認められていたが、改正により利益優先株式以外でも発行できるようになった。しかも議決権の範囲が「ある」か「なし」の二者択一であったのを、たとえば「役員選任の場合のみ議決権を持つ」などというように多様化できるようになった。

 また、改正前は議決権のない利益配当優先株式で配当が行われなかった場合、議決権は自動的に復活するとされていたが、これを定款規定を持って復活すると改められた。つまり「経営に口を挟まれたくないが資金(投資)は求めたい」といった経営者のニーズに、よりフレキシブルに対応ができるようになったのだ。議決権も優先配当も与えない代わりに、低価発行で出資者にメリットを与えることも可能だ。新株発行規制の見直しとあわせて、多様な株式発行が可能となった。

 

 4.新株予約権

経営上活用する際活用のポイントは、子会社の役員や従業員、コンサルタント等にストックオプションを付与することで、モチベーションアップと給与・手数料の低減を両立できることである。

  新株予約権とは、新株予約権者がこれを行使したとき、会社が新株発行または自己株式(金庫株)を移転(譲渡)する義務を負うことをいう。株式を取得できる権利としては、旧法でも新株引受権制度が設けられていた。これは二種類あり、一般的な新株発行の際に優先的にその割当を受ける権利と、新株引受権付社債(ワラント債)とストックオプションとがあった。改正後は、前者は従来通りだが、後者は新株予約権制度に移行された。これにより、ストックオプションの制度が撤廃され、また新株予約権の単独発行ができるようになった。

 活用法としては、自社の取締役・使用人以外にもストックオプションを付与できるようになったことから、子会社の役員や従業員へのインセンティブや給与の補填に活用できるだろう。さらには経営コンサルタントなどに、一種の成功報酬としてストックオプションを付与することも可能となった。これで、子会社役員やコンサルタントの経営参画意識を高めると同時に、給与や手数料を低く抑える効果が期待できる。

  

 5.計算書類の電子公告

経営上活用する際活用のポイントは、電子公告制度を活用することで、信用力強化の条件整備が図られることである。

  取締役の決議をもって、貸借対照表またはその要旨の公告に代えて、貸借対照表に記載または記録された情報を五年間、ホームページなど電磁的方法で開示することが可能となった。これは、急速に進展するIT社会への対応の一般としてなされた改正で、同じ趣旨のものとして「会社関係書類の電子化」等がある。

 手段が整ったのにそれを活用しなければ、対外的にディスクロジャーに消極的な企業というイメージを与えてしまうことは容易に予想できる。投資家や取引先、金融機関などが、企業の信用性判断を行う際の重要項目にもなるだろう。このことから、非公開企業であっても電子公告を活用することのメリットは少なくないし、また必然的にそうせざるを得ない環境になっていくと考えられる。

  

 6.株主総会等手続きの簡素化

経営上活用する際活用のポイントは、株主総会を開催せずに、書面ですませることも可能となることである。

主な改正点として、
@特別決議の定足数を三分の一に引き下げることが可能となった
A通知発送から総会会日までの期間が一週間に短縮
B召集手続きの省略が可能となった
C書面または電磁的方法での決議が認められる

いずれも、株主総会の手続きを容易にする方向で改正されたものだ。特にCの「書面決議」は開催省略を認めたものであり、中小企業にはニーズのある改正だろう。ただこれは、全株主の同意がある場合のみで、多数決までは認められていない。

 

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