助川公認会計士事務所 | 個人の税務・所得税 | 04/05/30 |
住宅ローン減税や土地税制 平成16年度税制改正 |
住宅ローン減税の縮減と土地・建物等の譲渡損失の損益通算の廃止等の改正がおこなわれました。
(1)住宅ローン減税の縮減
平成15年12月31日までの措置であった従前からの住宅ローン税額控除について、平成16年から平成20年までに居住の用に供した場合の控除期間、住宅借入金等の年末残高および控除率について図のとおり段階的に縮小されることになります。
居住年 |
控除期間 |
住宅ローン等の年末残高 |
適用年・控除率 |
平成16年 |
10年間 | 5,000万円以下の部分 | ・1年目から10年目まで 1% |
平成17年 |
同上 |
4,000万円以下の部分 |
・1年目から8年目まで 1% ・9年目及び10年目 0.5% |
平成18年 |
同上 |
3,000万円以下の部分 |
・1年目から7年目まで 1% ・8年目から10年目まで 0.5% |
平成19年 |
同上 |
2,500万円以下の部分 |
・1年目から6年目まで 1% ・7年目から10年目まで 0.5% |
平成20年 |
同上 |
2,000万円以下の部分 |
・1年目から6年目まで 1% ・7年目から10年目まで 0.5% |
(2)特定の居住用財産の買換えの場合の譲渡損失の繰越控除
特定の居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除の適用については、その個人が譲渡資産の譲渡をした年の一定の日においてその譲渡資産の取得に係る一定の住宅借入金等の残高があることが必要とされていましたが、この要件が除外された上、その適用期限が3年延長されます。
※ なお、この特例については、譲渡資産に係る譲渡損失の金額があるときは、その譲渡資産の譲渡による所得以外の所得との通算および翌年以後の繰越控除が認められます。また、純損失の繰越控除制度および純損失の繰戻し還付制度の純損失の金額には、その譲渡資産に係る譲渡損失の金額は含めないこととされています。
(3)特定の居住用財産の譲渡損失の繰越控除制度の創設
居住用財産の譲渡損失のうち、譲渡資産に係る住宅ローンの残高が譲渡価額を超える場合のその差額を限度として、損益通算および繰越控除を認める制度です。個人が平成16年1月1日から平成18年12月31日までの間に、所有期間5年超の居住用の家屋または土地等(譲渡資産)を譲渡(親族等への譲渡を除く)をした場合(契約締結時の前日において、その譲渡資産に係る一定の住宅ローン残高がある場合に限る)において、その年にその譲渡資産に係る譲渡損失の金額があるときは、一定の要件の下で、その年の翌年以後3年内の各年分(合計所得金額が3,000万円以下である年分に限る)の総所得金額等からの控除が認められます。
残存住宅ローンの繰越控除制度の例(万円、▲はマイナス)
売却時のローン残高 売却額(譲渡価額) ローン残存額
3000 − 1000 = 2000
本来の課税所得 控除枠 最終的な課税所得 税負担
売却年 300 − 2000 = ▲1700 → なし
2年目 400 − 1700 = ▲1300 → なし
3年目 400 − 1300 = ▲900 → なし
4年目 400 − 900 = ▲500 → なし
5年目 300 − 500 = 300 → あり
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(4) 土地、建物等の長期譲渡所得の課税の特例
@長期譲渡所得の課税の特例
土地、建物等を譲渡した場合の軽減税率を廃止し、税率が次のとおり引き下げられます。
従前(特例措置) |
改正後 |
特別控除後の譲渡益 26%(所得税20%、住民税6%) |
特別控除後の譲渡益 20%(所得税15%、住民税5%) |
適用は、平成16年1月1日以後に行う土地、建物等の譲渡からです。
A優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例
表8の措置を講じた上で、その適用期限が5年延長されます。この場合、収用交換等の5,000万円などの特別控除を適用した場合には、この軽減税率は適用できないこととされています。
従前 |
改正後 |
特別控除の譲渡益4,000万円以下の部分 20%(所得税15%、住民税5%) |
譲渡益2,000万円以下の部分 14%(所得税10%、住民税4%) |
特別控除後の譲渡益4,000万円超の部分 26%(所得税20%、住民税6%) |
譲渡益2,000万円超の部分 20%(所得税15%、住民税5%) |
適用は、平成16年1月1日以後に行う土地、建物等の譲渡からです。
B長期譲渡所得の100万円の特別控除の廃止
この100万円特別控除の廃止は、平成16年分以後の所得税および平成17年度分以後の個人住民税について適用されます。譲渡所得の金額によっては、税率が下がっても負担する所得税が増えそうです。
(5)土地、建物等の短期譲渡所得の課税の特例
短期譲渡所得については、次のとおり引き下げられます。
従前 |
改正後 |
次のいずれか多い方の税額による。 ・譲渡益の52%(所得税40%、住民税12%) ・全総合課税をした場合の上積税額の110% |
次の税額による。 ・譲渡益の39% (所得税30%、住民税9%) |
適用は、平成16年1月1日以後の譲渡からです。
(6)土地、建物等の譲渡損失について、損益通算及び損失の繰越控除の廃止
土地、建物等に係る譲渡損失については、損益通算(同じ年分の他の所得と相殺)することができなくなり、また、翌年以降に繰越して控除することも認められなくなります。平成16年分以後の所得税および同17年度分以後の個人住民税について適用されます。