助川公認会計士事務所 | 個人の税務・所得税 | 07/03/31 |
所得税関係の改正 平成1 9年度 |
上場株式等の配当などに係る軽減税率の特例延長や住宅ローン減税の特例創設などがあります。
(1) 住宅ローン減税の特別控除額の特例創設
住宅を取得等して平成19年または同20年に居住した場合について、住宅借入金等がある場合の所得税額の特別控除の控除額の特例が創設されます。
この特例は、現行の住宅借入金等がある場合の所得税額の特別控除との選択適用とされ、この控除期間等は次のとおりとされます。
居住年 |
控除期間 |
住宅借入金等の年末残高 |
適用年・控除率 |
平成19年 |
15年間 |
2,500万円以下の部分 |
1年目から10年目まで・・0.6% 11年目から15年目まで・・0.6% |
平成20年 |
同上 |
2,000万円以下の部分 |
同上 |
(2) 上場株式等に係る配当・譲渡益の軽減税率の特例を1年延長
上場株式等の配当等に係る軽減税率の特例の適用期限が1年延長されます。
また上場株式等に係る譲渡所得等の軽減税率の特例の適用期限が1年延長されます。
(3) エンジェル税制の適用期限が2年延長
特定中小会社が発行した株式に係る譲渡所得等の課税の特例(エンジェル税制)の適用期限が2年延長されるとともに、適用対象となる企業の要件の緩和及び確認手続きの合理化が行われます。
(4) 住宅のバリアフリー改修促進税制の創設
一定の居住者(※1)が、その居住家屋について一定のバリアフリー改修工事等を行った場合に、その家屋を平成19年4月1日から同20年12月31日までの間に居住したとき、一定の要件(※2)の下で、その改修工事等に係る住宅借入金等の年末残高の一定割合を所得税額から控除するという制度が創設されます。この特例は、住宅の増改築等に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除及び前記(1)との選択適用とされ、その控除率等は次のようになります。
居住の用に供する時期 | 控除期間 | 住宅借入金等の年末残高 | 控除率 |
平成19年4月1日から同20年12月31日まで | 5年間 | 1,000万円以下の部分 |
ア.一定のバリアフリー改修工事に係る工事費用から補助金等を控除した金額(200万円を限度)に相当する住宅借入金等の年末残高・・・2% イ.ア以外の住宅借入金等の年末残高・・・1% |
なお、この「バリアフリー改修工事」とは、次に該当する工事でその合計額が30万円を超えるものとされます。
・「廊下の拡幅」「階段の勾配の緩和」「浴室改良」「手すりの配置」「屋内の段差の解消」「引き戸への取替え工事」「床表面の滑り止め化」
※ 1 「一定の住居者」とは、@50歳以上の者、B障害者である者、C居住者の親族のうち上記AもしくはBに該当する者または65歳以上の者いずれかと同居している者、とされます。
※2「一定の要件」とは、以下のとおりです。
・ 住宅借入金等について、償還期間5年以上の一定の住宅借入金等及び死亡時一括償還に係る借入金等を適用対象とする。
・ 本税制の適用については、住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づく登録性能評価期間、建築基準法に基づく指定確認検査機関または建築士法に基づく建築士事務所に所属する建築士が発行するバリアフリー改修工事等の証明書を要するものとする。
・ その他現行の住宅の増改築等に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の同様の要件とする。
(5) 特定の居住用財産の買換え等の長期譲渡所得の課税の特例
特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例について、買換資産である家屋の床面積要件の上限u)が撤廃され、その適用期限が3年延長されます。床面積要件の上限撤廃の適用は、平成19年4月1日以後に行う居住用財産の譲渡からです。
(6) 相続等により取得した居住用財産の買換え等の長期譲渡所得課税の特例の廃止
相続等により取得した居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例が廃止されます。適用は、平成19年4月1日以後に行う居住用財産の譲渡からです。
(7)居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除等の延長
居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除等及び、特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除等のそれぞれの適用期限が3年延長されます。
(8)寄附金控除の控除対象限度額引上げ
寄附金控除の控除対象限度額が次ぎのとおりに引上げられます。
従前 | 改正後 | |
控除対象限度額 | 総所得金額等の30% | 総所得金額等の40% |
(9) 再チャレンジ支援寄附金税制の創設
個人などが、次世代育成支援対策に取り組む会社等に対する助成事業等の一定の事業で、認定地方公共団体が指定する公益法人により行われるものに関連する寄附金を拠出した場合には、所得税法の特定寄附金とみなして寄附金控除が適用されることになります。
また相続または遺贈により財産を取得した者が、相続税の申告期限までに、同様に寄附金を拠出した場合、その寄附金の額を課税価格の計算の基礎に算入されないこととされます。ただし、その者等の相続税等の負担が不当に減少する場合には適用されません。
法人が同様に寄附金を拠出した場合、一般の寄附金の損金算入限度額とは別に、その損金算入限度額に相当する範囲内で損金算入ができます。
個人、法人または相続もしくは遺贈により財産を取得した者が、
ア. 地域再生法に規定する地域再生計画の認定を受けた地方公共団体(認定地方公共団体)が指定する会社により行われる障害者の雇用の機会の確保等の当該認定地域再生計画に記載された一定の事業に充てられる寄附金(その認定地方公共団体が証明したものに限る)
イ. 次世代育成支援対策に取り組む会社等に対する助成事業等の認定地域再生計画に記載された一定の事業で認定地方公共団体が指定する公益法人により行われるものに関連する寄附金(当該認定地域再生計画に定められた地域内に、寄附者及び公益法人の本店、支店、工場、営業所、事務所等が存在するものに限る)
を支出した場合には、次の特例措置が講じられます。
@ 個人が上記イの寄附金を支出した場合には、当該寄附金は所得税法の特定寄附金とみなして寄附金控除を適用する。
A 法人が上記ア及びイの寄附金を支出した場合には、一般の寄附金の損金算入限度額とは別に、当該損金算入限度額に相当する金額の範囲内で損金算入ができる。ただし、限度額の計算は、特定公益増進法人及び認定NPO法人に対する寄附金と合わせて行うものとする。
B 相続または遺贈により財産を取得した者が相続税の申告期限までに上記イの寄附金を支出した場合には、その者またはその者の親族等の相続税等の負担が不当に減少する結果となると認められる場合を除き、当該寄附金の額を相続税の課税価格の計算の基礎に算入しない。
(10)取引相場のない株式等について相続時精算課税制度と特例創設
相続・贈与関係については、相続時精算課税についての見直しなどが行われます。
@取引相場のない株式等の贈与について相続時精算課税制度の特例を創設
推定相続人の1人が、平成19年1月1日から同20年12月31日までの間に取引相場のない株式等の贈与を受けた場合、次の要件を満たすときに限って、60歳以上の親から贈与について、相続時精算課税制度の適用を選択することが可能になります。同時に、その株式等の贈与については同制度の非課税枠が3,000万円(原則は2,500万円)とされます。
適用要件
・ その会社の発行済株式等の総額(相続税評価額ベース)が20億未満であること
・ この特例の選択に係る贈与税の申告期限から4年を経過する時において以下の要件をすべて満たしていること
a.その受贈者が、その会社の発行済株式の総額の50%超を所有し、かつ、議決権の50%を有していること
b.その受贈者が、その会社の代表者としてその会社の経営を従事していること
適用要件については、それ以外に「その他所要の要件を満たすこと」とされています。
A 取引相場のない種類株式の相続税等の評価方法の明確化
株主総会での決議権がない株式等の種類株式のうち、次の種類株式についてその評価方法が明確化されます。
ア. 配当優先の無議決権株式
イ. 社債類似株式
ウ. 拒否権付株式
会社法の施行により発行が容易になった、株主総会での決議権がない株式等の種類株式のうち、中小企業の事業承継において活用が期待されるものについて、その評価方法が明確化されます。
【平成19年から所得税が減り住民税が増えます】
平成19年から、所得税から地方税(住民税)へ税金が移し替えられます。これに伴って、ほとんどの人が、所得税は平成19年分(平成19年1月1日以後の源泉徴収など)から減り、住民税は平成19年分(平成19年6月以降に納付)から増えることになります。