助川公認会計士事務所 | 個人の税務・所得税 | 08/06/02 |
所得税関係の改正 平成 20年度 |
平成20年度の個人所得関係の改正では、住宅省エネ改修工事の住宅借入金等の特別税額控除の創設や、今年で期限切れとなる上場株式等の譲渡・配当所得の税率の軽減延長などがあります。
(1)住宅省エネ改修工事に係る住宅借入金等がある場合の特別税額控除の創設
居住する家屋に一定の省エネ改修工事を含む増改築等を行った場合、その家屋を平成20年4月1日から平成20年12月31日までの間に居住用としたときは、一定の要件の下で、その省エネ改修工事等に充てるために借り入れた住宅借入金等の年末残高の1,000万円以下の部分の一定割合を所得税額から控除する制度が創設されます。この特例は、住宅の増改築等に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除との選択適用とされ、控除期間・控除率等は表のとおりです。
〔対象となる省エネ改修工事とは?〕
以下に該当する工事で、費用が30万円を越えるものが対象になります。
@居室のすべとの窓の改修工事、または@とあわせて行うA床の断熱工事、B天井の断熱工事もしくはC壁の断熱工事で、省エネ性能が平成11年基準以上となり、かつ、住宅全体の省エネ性能が改修前から一段階以上上がること
住居の用に供する時期 | 控除期間 | 住宅借入金等の年末残高 |
控除率 |
平成20年4月1日から同20年12月31日
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5年 | 1,000万円以下の部分 |
ア.その増改築等に係る住宅借入金等の年末残高のうち、特定断熱改修工事等(断熱改修工事等のうちエネルギー使用の合理化に著しく資するものをいう)に要した費用の額(200万円を限度)に相当する部分の金額・・・2% イ.その増改築等に係る住宅借入金等の年末残高のうち、ア以外の部分の金額・・・1% |
(2)特定中小会社へ出資した場合の優遇措置(エンジェル税制)に寄附金控除を適用
個人が、一定の要件を満たす特定新規中小会社が発行した株式を取得した場合の課税の特例として、その出資額について1,000万円を限度として寄付金控除ができます。
* この特例の創設により、特定中小会社が発行した株式に係る譲渡所得等の2分の1課税の特例は廃止されます。
適用は平成20年4月1日以後に特定中小会社の株式を払込により取得した場合です。
(3)上場株式等の譲渡所得等に2年間の特例
従前の軽減税率が適用期限で廃止される代わりに、一定の譲渡所得については特例が設けられます。具体的な内容は次のとおりです。
〔軽減税率の廃止〕
上場株式等に係る譲渡所得等の所得税7%(住民税と合わせて10%) 軽減税率が平成20年12月31日で廃止されます。その後は、本則の15%(住民税と合わせて20%)となります。
〔特例措置〕
平成21年1月1日から同22年12月31日までの2年間に上場株式等を譲渡した場合には、その年分の上場株式等に係る譲渡所得等の金額のうち500万円以下の部分については所得税7%(住民税と合わせて10%)とされます。なお、平成21年1月1日から同22年12月31日まで源泉徴収選択口座にいける源泉徴収税率を所得税7%(住民税と合わせて10%)とする特例が設けられます。
(4)上場株式等の配当所得に2年間の特例
従前の軽減税率が適用期限の到来で廃止される代わりに、一定の配当所得については特例が設けられます。内容は次のとおりです。
〔軽減税率の廃止〕
上場株式等の配当所得等に係る源泉徴収税率について、平成20年12月31日で所得税7%(住民税と合わせて10%)の軽減税率が廃止されます。
〔源泉徴収税率の特例措置〕
その特例措置として、平成21年1月1日から同22年12月31日までの2年間に上場株式等の配当等(大口株主が支払いを受けるものを除く)に対する源泉徴収税率は所得税7%(住民税と合わせて10%)とされます。この場合、その年中の上場株式等の配当等(年間1万円以下の銘柄に係るものを除く)の金額の合計額が100万円を超える人については、その超える年分について、確定申告をすることになります。
* 上場株式等の配当所得について申告分離選択課税が創設されます。
(5)上場株式等の譲渡損失と配当所得との損益通算の特例創設
その年分の上場株式等の譲渡所得の損失があるとき、またはその年の前年以前3年内の各年に生じた上場株式等の譲渡損失の金額(前年以前に既に控除した金額を除く)があるときは、これらの損失の金額を上場株式等の配当所得の金額(申告分課税を選択したものに限る)から控除(損益通算)されます。
適用は、平成21年分以後の所得税からです。
〜平成20年 | 平成21年 | 平成22年 | 平成23年〜 | |
上場株式等の譲渡益 |
軽減税率10% (所得税7%、住民税3%) |
特例措置10%(所得税7%、住民税3%) *ただし譲渡所得は500万円以下。配当所得は大口株主が支払いを受けるものを除く |
本則税率20% (所得税15%、住民税5%) |
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上場株式等の配当 | ||||
上場株式等の損益通算 |
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申告による方式 | 申告による方法または源泉徴収口座を活用する方法 |
★その他
・特定上場株式等に係る譲渡所得等の非課税制度は、適用期限をもって廃止。
・給与所得者等がその使用者から住宅資金の貸付等を受けた場合の課税の特例(金利の優遇)の適用期限が2年延長。
(6)電子申告で添付省略できる第三者作成書類の追加
所得税の確定申告書の提出を電子申告で行う場合、一定の要件の下、税務署への提出または提示を省略できる第三者作成書類に次の書類が追加され、添付しなくてもよくなります。ただし保存は必要です。
・給与所得者の特定支出の控除の特例に係る支出の証明書
・雑損控除、寄附金控除、勤労学生控除の証明書等
・個人の外国税額控除に係る証明書
・住宅借入金等特別控除に係る借入金年末残高証明書(適用2年目以降のもの)
・バリアフリー改修特別控除に係る借入金年末残高証明書(適用2年目以降のもの)
・政党等寄附金特別控除の証明書
適用は、原則的には、平成20年1月4日以後に、平成19年分以後の所得税確定申告書の提出を電子申告で行った場合です。
(7)登録免許税の軽減税率の見直しと適用期限の延長
土地の売買による所有権の移転登記等に対する登録免許税の軽減税率を次のとおり見直した上、その適用期限が3年延長されます。
@ 土地の売買による所有権の移転登記
従前 |
改正後 |
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1,000分の10 |
平成20年4月1日〜同21年3月31日 |
1,000分の10 |
平成21年4月1日〜同22年3月31日 |
1,000分の13 |
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平成21年4月1日〜同22年3月31日 |
1,000分の15 |
A 土地の所有権の信託の登記
従前 |
改正後 |
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1,000分の2 | 平成20年4月1日〜同21年3月31日 |
1,000分の2 |
平成21年4月1日〜同22年3月31日 |
1,000分の2.5 |
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平成21年4月1日〜同22年3月31日 |
1,000分の3 |
(8)長期優良住宅の所有権保存登記の税率軽減
「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」(仮称)の制定に伴い、個人が、同法の施行の日から平成22年3月31日までの間に新築又は取得(未使用のもの)する一定の長期優良住宅(仮称)に係る所有権の保存登記等に対する登録免許税が次のとおり軽減されます。
@所有権の保存登記
本則 1,000分の4 → 軽減税率 1,000分の1
A所有権の移転登記
本則 1,000分の20 → 軽減税率 1,000分の1
(9)地方公共団体への寄附金税制の見直し(ふるさと納税)
ふるさと納税として、地方公共団体に対する寄付金税制が見直されています。また所得税などの改正に準じて地方税においても改正がされると同時に、固定資産税などについて改正が行われています。
@地方公共団体に対する寄付金税制の見直し(ふるさと納税)
個人住民税における寄付金税制については、控除対象寄付金の拡大等が行われるほか、都道府県または市区町村に対する寄付金税制(ふるさと納税)が見直され、以下で計算した金額 Aが別枠(特例控除額)として、 Aの5分の2が道府県民税から、5分の3が市町村民税からそれぞれ税額控除されます。
(寄付金額−5,000円)×(90%−その人の所得税の限界税率)・・・ A(個人住民税所得割額の10%相当額が限度)
なおこの改正は、平成21年度以後の個人住民税について適用されます。
A省エネ改修を行った既存住宅に対する固定資産税の減額
平成20年1月1日に所在していた既存住宅で、同20年4月1日から同22年3月31日までに、一定の省エネ改修を行ったもの(賃貸住宅を除く)について、改修工事が完了した翌年度分に限り、その住宅に係る固定資産税額(1戸当たり120u相当分までに限る)の3分の1が減額されます。この適用に当たっては、改修後3ヶ月以内に省エネ基準に適合する証明書を添付して市町村に申告することになります。この要件、省エネ改修工事の内容等につては、所得税の場合と同様です。
B認定長期優良住宅に対する固定資産税の減額
長期優良住宅の普及の促進に関する法律の施行日から平成22年3月31日までに新築された認定長期優良住宅について、認定を受けて建てられたことの証明書を添付して市町村に申告した場合には、新築後5年間(中高層耐火建築物は7年間)、その住宅に係る固定資産税額(1戸当たり120u相当分までに限る)の2分の1が減額されます。