助川公認会計士事務所 | 相続税・贈与税 | 04/05/30 |
事業承継のための相続対策 |
◇相続の基本的な方針を決める
相続対策を検討する前に、財産はどれくらいで、その財産を誰に移転(相続、贈与、売却)するのか、誰を事業等の後継者とするのかといったことを明確にしておかなければなりません。このような方針が明確でないと、相続対策が立てられないからです。
相続対策を検討する際、あらかじめ次の事項を確認しておきましょう。
1.自分の財産がどれくらいあり、相続税はいくらになるか試算しておく
現時点での相続税の評価による財産価格を調べて相続税を試算しておきます。
2.事業の後継者を決める際は経営者としての能力、ヤル気等を見極める
経営者に子供がいればその子供に事業を承継させるのが最も多いケースですが、経営者としての能力資質やヤル気等を充分見極めて決めるべきです。長男に限らず次男や娘(その夫の能力資質も考慮)なども候補とすべきでしょう。
3.事業承継者等の健康状態なども十分チェックする
贈与等の対象者の健康状態その他のことも見ておくことが必要です。というのも事業承継あるいは相続対策が完了した後で、その本人が亡くなったりすると、逆相続の問題がでてくるからです。
◇相続対策いろいろ
相続対策のポイントは、相続が発生しても大きなマイナスとならないようにすることです。相続税に関する対策としては、次のような方法があります。
方法1:贈与税の基礎控除(年60万円)を活用して毎年継続して贈与する
贈与税には、年間60万円の基礎控除があります。これを活用して子供や孫等に毎年継続して計画的に贈与するという方法です。
*ワンポイント留意点 金銭贈与の際には、きちんと贈与税を申告・納付して形跡が残るように贈与しましょう。例えば、61万円を贈与した場合なら、基礎控除額を差し引いた1万円に対する贈与税1千円を申告して納めるわけです。その結果、相続の際に問題となったとしても、贈与を受け贈与税も納めた事実が証明できます。申告書の控え・税金の領収書は必ずファイルして保存しましょう。
方法2:会社に対する社長個人の債権を毎年継続的に贈与する
会社が社長個人から資金を借り入れているような場合、その社長個人の会社に対する債権を子供や孫等に毎年継続的に贈与し、社長の債権を減額するというものです。というのも会社に対する債権は、社長の遺産となってしまうからです。この場合も方法1と同様に相続税の基礎控除が活用できます。
方法3:社長個人の会社に対する債権を放棄する
会社に多額の欠損金があり債務超過の状態であるが、社長からの借入があるような場合、相続が発生したとすると、株価は当然ゼロですが、会社に対する債権はそのまま遺産として残ります。このような場合、会社に対して債権放棄(債務免除)をすることも考えられます。これによって社長の遺産の中で実質的に回収できない債権額をゼロとしておくことができます。なお、債務超過等でない通常の状態での債務免除は、法人税や株主への贈与税の対象となることがありますので、ご注意ください。
方法4:社長が退任するときには退職金をきちんと支払う
同族会社等で事業承継の際に問題となるのが、過去からの蓄積があるために自社株の評価が高くなることです。そこで社長が出資している株式の評価をいかにして低くするかです。
その自社株の評価を下げる方法に、社長への退職金の支払いがあります。つまり社長が退任して子供等に事業を承継させるときに、会社がその社長に対してきちんと退職金を支払うことによって会社の利益が減り、その結果株価が下がりますが、そのタイミングで社長の持ち株を子供や配偶者に贈与したり売却するのです。なお、事業後継者には経営の支障とならないように自社株を配分すべきです。
*ワンポイント留意点
@退職金については、法人税法上は「適正な額」であれば損金として認められますが、常識外に多額だと損金とは認められません。
A死亡退職金として支払われる方が、相続税の非課税部分もあって有利となるケースもあります。
B自社株を売却する場合、非上場株式だと分離課税で売却益の26%(所得税20%・住民税6%)の税金を負担するだけで済みます。ただし確定申告が必要です。
◇小規模宅地等の評価減の特例をフルに利用
相続人の生活や事業を守る観点から、被相続人が居住用又は事業用として使用していた宅地等については、一定面積の部分について評価額を減額する特例があります。例えば、特定の小規模宅地等については、一定の要件を満たせば、宅地等の評価額を80%減額できます。