助川公認会計士事務所 | 会社の税務 | 04/05/30 |
30万円未満の少額資産の損金算入の特例 明細と活用例 |
1.適用資産の明細添付・保存に要注意する
中小企業者(個人・法人)の少額資産=30万円未満の特例では、確定申告書等に30万円未満の少額減価償却資産の取得価額に関する明細書を添付して申告することが必要とされていますが、国税庁が先に明らかにした取扱いにより、申告書備考欄に所定事項を記載することで明細添付を省略することが認められます。ただし、この場合も、適用した資産の明細は別途保管しておく必要があるので要注意です。
国税庁が先に公表した取扱いによれば、この明細書の添付に代えて減価償却資産の償却額の計算に関する明細書=法人税申告書別表一六(一)又は別表一六(二)の「備考」欄に次の事項を記載して提出し、かつ、当該少額減価償却資産の明細を別途保管することにより適用を受けることが認められます。
@ |
取得価額30万円未満の減価償却資産について租税特別措置法67の8を適用していること。 |
A | 適用した減価償却資産の取得価額の合計額は、○○○円であること。 |
B | 適用した減価償却資産の明細は、別途保管していること。 |
<備考欄の記載例>「取得価額30万円未満の減価償却資産について措置法67の8の規定を適用している。また、適用した減価償却資産の取得価額の合計額は○○○円であり、その明細は別途保管している。」 |
2.明細書の様式・記載事項等について
明細書の様式・記載事項等については特にきまりはありません。申告書備考欄への記載と明細書添付の省略によった場合でも、明細書自体は“別途作成・保管”しておく必要がある点に改めてご留意下さい。申告後、2〜3年たって税務調査が行われ、明細の提示を求められたとき、「ありません」「みつかりません」では、10万円以上30万円未満の資産については特例による一時の損金算入を否認され、改めて法定償却による修正が求められる危険性があります。どのような明細を作成・保存すればよいのか……? この点については、法令・通達等に具体的な規定は置かれていませんので、実務に際しては、納税者各自の判断によることになります。
◎固定資産税用の入力データで代用する
特例対象となる「10万円以上30万円未満の資産」は、地方税=償却資産に係る固定資産税の課税対象とされます。従って、そのための台帳=データ入力等の処理が求められることになり、ここで作成される“明細”をもって措置法特例の明細書に代えることが可能でしょう。
減価償却関係の市販パッケージソフトでは、今回の特例創設に伴うバージョンアップが各メーカーにより実施されることと思います。手元にある某社の案内では、申告書備考欄の記載(「取得価額30万円未満の減価償却資産について措置法67の8の規定を適用している。また、適用した減価償却資産の取得価額の合計額は○○○円であり、その明細は別途保管している」)から、台帳への登録まで、バージョンアップにより対応する旨が説明されています。それによると、台帳への登録では次の各項目が入力されます。
@設置場所 | D取得年月日&事業供用年月日 |
A勘定(例:少額資産) | E取得価額 |
B資産名(例:パソコン) | F数量・単位 |
C耐用年数&償却率 | G当期償却(例:しない) |
H摘要(例:措置法67の8摘要) |
3.特例の活用例
・事業年度 平成15年4月〜平成16年3月 ・課税所得税 800万円(下記パソコンの計上前の金額) ・パソコンの購入、使用開始日 平成15年4月 ・パソコンの取得価額 28万円 ・耐用年数 4年 ・償却方法 定率法(43.8%/年) |
通常の減価償却の場合との比較(単位:万円)
項 目 |
通常の減価償却 |
少額減価償却資産の損金算入 |
1.償却前課税所得 |
800 |
800 |
2.普通償却額 |
12 |
− |
3.通少額減価償却資産の損金算入 |
− |
28 |
4.課税所得(1−2−3) |
788 |
772 |
5.法人税額(4×22%) |
173 |
170 |
(注)活用例は、万円未満四斜五入で計算しており、普通償却額は以下により求めています。 28万円×0.438×12/12(4月〜3月)=12万円 その結果、3万円の法人税額が軽減されます。