助川公認会計士事務所 | 会社の税務 | 10/06/12 |
役員 給与と従業員給与の税務上の処理 |
1.役員給与の税務処理
平成18年度税制改正前の法人税法においては、使用人に対する給与(給料・賞与・退職給与)と同じように、役員に対する給与についても役員報酬・役員賞与・役員退職給与に区分して、それぞれ損金の額に算入される金額についての取扱いが定められていたが、会社法制や会計制度など周辺的な制度が大きく変わる機会を捉えて、平成18年度税制改正では、それらのものをまとめて役員給与と整理した上で、その損金の額に算入される範囲等について次のように定めている。
@ 一定の役員給与の損金算入
法人がその役員に対して支給する給与のうち、次のイからハまでに掲げる給与のいずれにも該当しないものの額は損金の額に算入されない(法34@)。
イ 定期同額給与
支給時期が1月以下の一定の期間ごとであり、かつ、当該事業年度の各支給時期における支給額が同額である給与、その他これに準ずる給与をいう(法34@一、令69@)。
ロ 事前確定届出給与
その役員の職務につき所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給する給与で、納税地の所轄税務署長にその定めの内容に関する届出をしているものをいう。したがって、あらかじめ支給額や支給時期が確定しているものについては毎月の定期同額の給与のほかに6月及び12月などのように特定の月に増額支給するものであっても損金の額に算入されるということとなる。
ハ 利益連動給与
同族会社に該当しない法人が業務を執行する役員に対して支給する利益連動型給与で次に掲げる要件を満たすもの(他の業務を執行する役員のすべてに対して次に掲げる要件を満たす利益連動給与を支給する場合に限る。)をいう。
2.過大な役員給与の損金不算入
法人がその役員に対して支給する給与のうち不相当に高額な部分の金額は、損金の額に算入されない(法34A、令70)。
@役員給与
役員給与が不相当に高額かどうかは、次の「実質基準」及び「形式基準」によりそれぞれ不相当に高額な部分の金額を算出し、いずれか多い金額が損金の額に算入されない金額となる(令70一)。
・実質基準
役員の職務内容、法人の収益状況、使用人に対する給与の支給状況、同業種同規模法人の役員給与の支給状況等に照らし、不相当に高額な場合には、その高額な部分の金額
・形式基準
法人の定款や株主総会で定めた金額の範囲を超えて給与を支給していた場合の、その超える部分の金額
A役員退職給与
役員の退職給与については、役員の退職の事実により支払われる一切の給与をいうのであるが、退職給与のうち、当該役員の業務に従事した期間や退職の事情、同業種同規模法人の役員退職金の支給状況等に照らし、不相当に高額な場合には、その高額であると認められる部分の額は損金の額に算入されない。
B使用人兼務役員に対する賞与
使用人としての職務を有する役員に対して支給する使用人としての職務に対する賞与については、他の使用人の賞与の支給時期と同時期に支給し、かつ、他の職務が類似する使用人の賞与の額と比較して適正な額である場合に損金算入が認められる。
C隠ぺい又は仮装により支給する役員給与の損金不算入
法人が、事実を隠ぺいし、又は仮装して経理することによりその役員に対して支給する給与の額は損金とならない(法34B)。
3.従業員(使用人)の給与の税務処理
使用人に支給する給与(給料、賞与、退職給与)は、原則として各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入される。
しかし、企業経営者がその配偶者や子供に多額の給与を支払い、法人税の負担軽減を図っているといった問題の指摘があることから、使用人であっても、役員の親族等に対して支給する過大な給与については、損金の額に算入しない措置が講じられている。
すなわち、法人がその役員と特殊の関係にある使用人(特殊関係使用人)に対して支給する給与の額のうち、不相当に高額な部分の金額については、損金の額に算入しないこととされている(法36)。
@給与の範囲
給料、賃金、賞与及び退職給与のほか、債務の免除による経済的利益その他の利益が含まれる。
A特殊関係使用人の範囲
役員と特殊の関係のある使用人とは、次に掲げるものである。(令72の3)。
a 役員の親族
b 役員と事実上婚姻関係と同様の関係にある者
c a及びb以外の者で役員から生計の支援を受けているもの。具体的には、役員から給付を受ける金銭その他の財産又は給付を受けた金銭その他の財産の運用によって生ずる収入を生活費に充てている者をいう(基通9-2-40)。
d b及びcに掲げる者と生計を一にするこれらの者の親族
「生計を一にする」とは、有無相助けて日常生活の資を共通にしていることをいうのであるから、必ずしも同居していることを必要としない(基通9-2-41、基通1-3-4)。
B不相当に高額な部分の金額
不相当に高額な部分とされる金額は、過大な役員給与の判定の場合と同様である。
すなわち、その使用人に対して支給した給与の額が、当該使用人の職務の内容、その法人の収益及び他の使用人に対する給与の支給の状況、その法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの使用人に対する給与の支給の状況等に照らし、当該使用人の職務に対する対価として相当であると認められる金額を超える場合におけるその超える部分の金額とされている。
退職給与にあっては、その使用人に対して支給した退職給与の額が、当該使用人のその法人の業務に従事した期間、その退職の事情、その法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの使用人に対する退職給与の支給の状況等に照らし、その退職した使用人に対する退職給与として相当であると認められる金額を超える場合におけるその超える部分の金額とされている。
4.役員への経済的利益とは何か
役員及び使用人(以下「役員等」という。)に対して支払う給与は、現金で支払われるのが通常である。
しかし、法人が役員等に対して有する貸付金等の債権を放棄する場合、あるいは、法人が所有している土地、建物を役員等に対して無償や低い価額で賃貸する場合のように、現金は支払われないが実質的にその役員等に対して給与を支給したのと同様の経済的効果をもたらす利益が与えられる場合がある。
このような利益を一般に「経済的利益」という(基通9-2-9)。
そこで、法人税法上このような経済的利益については、役員の場合であれば、その実態に応じ定期同額給与、臨時的な給与、退職給与に区分し、これを実際に支給した給与の額に含めそれぞれの金額が過大であるか否かを判断することとなる。
役員等に安く社宅を貸すとまた、使用人の場合は、役員と特殊な関係のある使用人について、経通常の賃貸料との差額は給与に 済的利益をその実態に応じ給料、賞与、退職給与に区分し、これを実際に支給した給与の額に含めそれぞれの金額が過大であるか否かを判断することとなる。
役員等に係る経済的利益の例示
@ 役員等に法人の資産を無償又は低い価額で譲渡した場合
(時価−譲渡価額=差額)
A 役員等に社宅等を無償又は低い価額で提供した場合
(通常の賃料−徴収賃料=差額)
B 役員等に金銭を低い利率で貸し付けた場合
(通常の利息−徴収利息=差額)
C 役員等に機密費、接待費、交際費等の名義で支給した金額で費途不明、会社業務に関係がないもの
D 役員等の個人的費用を負担した場合 毎月負担する住宅の光熱費、家事手伝いの給料等は定期同額給与又は給料等