助川公認会計士事務所 | 会社の税務 | 10/06/12 |
受取配当金の益金不算入の税務処理 |
会計上、収益(売上)を計上すると利益になる。
利益に対して、法人税が課税されるが、法人税法上、課税されないものもある。
法人税法上、課税されないもの項目は、例えば次のものがある。
@ 受取配当等の益金不算入(法23)
A 資産の評価益の益金不算入(法25)
B 還付金等の益金不算入(法26)
法人が他の内国法人から配当等を受けた場合には、その受取配当等は企業会計上では当然収益として計上されるが、法人税法上は一定の申告手続を条件に、原則として、その50%相当額を益金の額に算入しないこととしている(法23)。
1.なぜ受取配当等を益金の額に算入しないのか
◆法人の性格に関する考え方
法人税法上、受取配当等を益金とするかしないかは、法人の所得に対し法人税を課税すると同時に、法人から配当を受けた個人株主に対して所得税を課税することとの関連をどのように考えるかという点にある。
この点について、法人の性格に関する考え方として、従来から次の二つの考え方がある。
@ 法人を自然人である個人と並んで独立した納税者であるとする考え方(法人実在説)
この考え方に立つと、法人は個人株主とは別個の課税単位であって、個人株主とは無関係に独立して法人税が課税されることとなるから、法人税が課税された所得から支払われた配当金に対して所得税を課税しても、法人・個人間の調整は必要としないこととなる。
A 法人は単に株主の集合体であり、独立した納税義務はなく、法人の所得に対する課税は個人の所得税の前払であるとする考え方(法人擬制説)
◆現行の税制の考え方
現行の税制では、基本的には、法人税は所得税の前払とする法人擬制説の考え方がとられている。
したがって、法人の段階で納付した法人税に相当する金額を、その配当を受けた個人が納付する所得税額から控除するという仕組みとなっている(配当控除…所92)。
2.受取配当等を益金不算入とする理由
内国法人とその究極の株主である個人との中間段階に、他の法人が株主として存在するときは、その中間段階にある法人が受け取る配当金にそのまま課税すると最終的に個人段階で納付する所得税額から法人税相当額を控除する際に、中間段階で法人税が課税された回数に応じてその都度配当控除額を定めなければならない。
しかし、そのような計算は技術的に不可能であることから、株主である法人が受け取った配当金については益金の額に算入しないこととしてこの問題を解決している。
【二重課税排除】
法人税課税について・・・益金不算入により二重課税排除
個人の株主について・・・配当控除により二重課税排除
ただし、法人企業の投資目的での株式保有の高まり、法人税・所得税の負担調整措置として設けられた本制度の趣旨が生かされていない等の他の諸情勢も考慮され、昭和63年12月のいわゆる税制抜本改革において、企業支配的な株式等に係るものを除きその20%相当額は益金に算入することとされて、その後平成14年度税制改正では、益金算入割合を更に50%に引き上げるという改正が行われている(法23)。
3.受取配当等の益金不算入額の計算方法
法人の保有する株式等を関係法人株式等(株式保有割合が25%以上のもの)とそれ以外のものとの二つのグル−プに分けて、それぞれ次の算式により計算した額の合計額が受取配当等の益金不算入額となる(法23@D)。つまり、受取配当等の金額から、期中に支払った負債の利子のうちその株式等の取得に要した負債の利子相当部分の金額を差し引いた額が益金の額に算入されないこととなる(法23C)。
@ 関係法人株式等以外
(関係法人株式等以外の株式等に係る配当等の額
− 関係法人株式等以外の株式等に係る負債利子額)×50%
A 関係法人株式等
(関係法人株式等に係る配当等の額
− 関係法人株式等に係る負債利子額)
◆負債利子控除とは
負債利子とは、その株式等の取得に要した借入金等の利子のことをいうが、上記の算式中、負債利子を控除することとしているのは、仮に受取配当等の全額を益金不算入とし、期中における支払利子を損金の額に算入することとする。
例えば、借入金により株式を取得したような場合には、受取配当等は益金不算入となった上、別にその借入金の利子が損金の額に算入されることとなり、不合理な結果となるのでこのような取扱いとしている(法23C)。
◆関係法人株式等に係る配当等の全額益金不算入
関係法人株式等の配当等については、企業支配的な関係に基づくいわば同一企業の内部取引的なものであり、仮にこれに課税すると子会社形態で営むより事業部門の拡張や支店の設置等による方が税制上有利となり、課税の不均衡が生ずることから全額を益金不算入としている(法23@D、令22の2@一)。
4.益金不算入の対象となる受取配当等
受取配当等の益金不算入の規定は、法人・個人間の二重課税を避ける趣旨のものであり、その適用を受ける剰余金の配当若しくは利益の配当又は剰余金の分配は出資に係るものに限られる。
したがって、同じ配当という用語が使われていても、次のように益金不算入となるものとならないものとがある。
◆益金不算入となるもの
@ 剰余金の配当若しくは利益の配当又は剰余金の分配の額(法23@一)
A 資産の流動化に関する法律第115条第1項(中間配当)に規定する金銭の分配の額(法23@二)
B公社債投資信託以外の証券投資信託の収益の分配金のうち配当に相当する金額(2分の1の金額)(法23@三、令19の2)
◆益金不算入とならないもの
@ 外国法人、公益法人等及び人格のない社団等から受ける配当(法23@)
A 保険会社の契約者配当金(法60@)
B 協同組合等の事業分量配当金(法60の2@)
5.計算事例
甲株式会社(資本金1,000万円)の平21.4.1〜平22.3.31事業年度の雑収入勘定の中に次のものが計上されている。これにより受取配当等の益金不算入額を計算する。
@ A株式に係る剰余金の配当 100,000 円
A B株式に係る剰余金の配当 50,000 ………B社は外国法人である。
B C社債利息 30,000
C D協同組合出資分配金40,000 ………未収金に計上している。
D 〃事業分量配当金 20,000
E E銀行預金利息 80,000
F Fオ−プン型証券投資 40,000
上記の株式(関係法人株式等に該当しない。)等は、いずれも前期以前から所有しており、計上額はすべて当期に支払が確定しているものである。 なお、負債利子の額はない。
【答】
◆受取配当等に該当しないもの
・B株式に係る剰余金の配当は外国法人から受けたものであり、益金不算入の対象とならない。
・C社債利息、D協同組合事業分量配当金、E銀行預金利息はいずれも出資に対するものではなく、支払法人の損金となるものであり、益金不算入の対象とならない。
・Fオ−プン型証券投資信託の分配金の2分の1を受取配当等の金額とする。
◆益金不算入額は次のように計算される。
・A株式に係る剰余金の配当 100,000円
・D協同組合出資分配金 40,000
・Fオ−プン型証券投資信託の分配金 20,000 ……40,000×1/2
計 160,000
受取配当金益金不算入とされる金額は、160,000×50%=80,000