助川公認会計士事務所 | 会社の税務 | 06/03/26 |
平成18年度税制改正のポイント(法人税関連) |
法人税関係の主な改正事項です。適用は、平成18年4月1日以降に開始する事業年度からです。
(1)役員報酬・賞与の損金算入についての改正
@役員賞与の損金算入を一部認める。
従来損金(費用)算入が認められていなかった役員の臨時給与(賞与)について、あらかじめ支給額・支給時期等を定めていれば、原則として損金(費用)算入が認められることになります。(定期・定額要件の緩和)。
A業績連動型役員報酬が損金算入できる。
利益を基礎として算定される役員給与のうち、非同族会社が業務を執行する役員に対して支給する給与で、次のような要件をいずれも満たすものは、原則に損金(費用)に算入できます。
・ その事業年度で損金経理をしていること
・ 報酬役員会での決定等、算定方法について適正な手続きがとられており、有価証券報告書等で開示されていること など
B実質一人会社の社長報酬のうち給与所得控除分が損金算入できなくなる。
実質一人会社のオーナー社長の報酬については、給与所得控除相当分が法人において損金算入できないことになります。実質一人会社とは、役員および同族関係者が発行済株式総数の90%以上を保有し、かつ常勤の役員が過半数を占める会社を指します。ただし、次のような場合は、従来どおり損金算入できます。
・ | その同族会社の所得金額とオーナー社長の報酬の合計額の直前3年以内の平均額が年800万円超、3,000万以下でその平均額に占める社長報酬の割合が50%以下の場合 |
・ | その平均額が、年800万円超3000万円以下でその平均額に占める社長報酬の割合が50%以下の場合 |
(2)同族会社の留保金課税の緩和
中小企業の内部留保充実を促進するために、同族会社の留保金課税制度が緩和されます。
@課税対象同族会社の判定基準変更
課税される同族会社の判定基準は、3株主グループによる株式保有50%超でしたが、これが1株主グループによる株式保有50%超に改正されます。結果的に留保金課税をされる企業が減少します。
A留保控除額の拡大
留保金の控除額が増加しました。次の金額のうち最も多い金額が控除できます。
ア. |
所得等の金額の40%(従来は35%)、なお中小法人「資本の金額が1億円以下の法人」であれば所得等の金額の50% |
イ. | 年2,000万円(従来は1,500万円) |
ウ. | 利益積立金額が資本金額の25%に満たない場合、満たない部分の金額 |
エ. | 中小法人において自己資本率(総資産に占める自己資本率「同族関係者からの借入金を含む」の割合)が30%に満たない場合、その満たない部分の金額 |
B留保金課税の不適用
「中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律」の経営革新計画の承認を受けた中小企業がその計画に従い経営革新のための事業を実施している各事業年度(平成18年4月1日から同20年3月31日までの間に開始する各事業年度に限る)について、留保金課税は不適用とされます。
(3)少額減価償却資産の損金算入金額の上限が年間300万円
中小企業者等の少額減価償却資産の損金算入の特例(資本金1億円以下の中小企業者等が30万円未満の減価償却資産を取得した場合、全額損金算入を認める制度)が見直され、適用対象となる損金算入額の上限が年間合計300万円とされます。適用は、平成18年4月1日から同20年3月31日までの間に取得する減価償却資産です。
(4)1人あたり5,000円以下の飲食費は交際費としない
税務上の交際費等の範囲から1人あたり5,000円以下の一定の飲食費(ただし役職員間の飲食費を除く)が除外され、損金算入できることになります。適用は平成18年4月1日から同20年3月31日までの間に開始する各事業年度です。
(5)中小企業投資促進税制の拡充と延長
中小企業投資促進税制について、その対象資産に一定のソフトウェアおよびデジタル複合機が加えられるとともに、対象資産から電子計算機以外の器具・備品が除外され、その適用期限が2年延長されます。
改正後の対象資産等 | |
1. | 全ての機械・装置 |
2. | 「電子計算機」「デジタル複合機」の器具・備品2品目 |
3. | ソフトウェア |
4. | 普通貨物自動車(車両総重量3.5トン以上) |
5. | 内航船舶(取得価額の75%が対象) |
(6)中小企業技術基盤強化税制の拡充
中小企業技術基盤強化税制について、平成18年4月1日から同20年3月31日までに開始する各事業年度において、試験研究費のうち比較試験研究費を上回る部分の特別税額控除率について5%を加える特例が2年間の時限措置として設けられます。
(7)欠損金の繰戻し還付措置の延長
欠損金の繰戻しによる還付の不適用制度について、創業5年以内の中小企業者に対する同制度適用除外が2年間延長されます。
(8)試験研究費の総額に係る特別税額控除制度
平成18年4月1日から同20年3月31日までに開始する各事業年度において、試験研究費のうち比較試験研究費を上回る部分の特別税額控除率につき5%を加える措置が2年間の時限措置として講じられます。
(9)産業競争力の向上のための情報基盤強化税制の創設
青色申告書を提出する事業者が、平成18年4月1日から同20年3月31日までの間に、産業競争力の向上に役立つ設備等で情報セキュリティ対策に対応したものを取得等して、国内の事業用に供した場合、次のいずれかを選択できる制度が2年間の時限措置として創設されます。
特別税額控除 設備等の基準取得価額×10%
特別償却 設備等の基準取得価額×50%
「資本金1億円以下の法人について」 | |
一定のリース資産を賃借して、国内の事業用に供した場合には、基準リース費用の総額の60%について、その10%相当額の特別税額控除ができることになります。なお前記の特別税額控除は、その期の法人税額の20%が限度とされ、その控除限度超過額については1年間の繰越しができます。 |
(10)優良賃貸住宅等の割増償却制度
中心市街地の活性化に関する法律(仮称)の施行日から平成20年3月31日までの間に、認定基本計画に基づく中心市街地共同住宅供給事業(仮称)により建設される一定の優良な賃貸住宅の取得等をした場合には、5年間は次の割増償却が加えられ、対象となる賃貸住宅から特別優良賃貸住宅が除かれます。
割増償却 普通償却限度額×36%(耐用年数が35年以上のものは50%)
(11)次の特別措置が廃止されます。
@IT投資促進税制(情報通信機器等を取得した場合等の税額控除または特別償却)
※パソコンなどの情報通信機器を導入する予定があるところは平成18年3月までに行いましょう。
A開発研究用設備の特別償却制度
(12)会社法の制定に伴う整備
@配当関係について(主な事項)
剰余金の配当については、現行制度と同様に、配当と資本の払戻しとして取り扱われます。適用は、会社法の施行日以後行われる剰余金の配当から。 など
A株式等に関する取引について(主な事項)
法人が自己株式を取得した場合には、資産に計上せず、その取得時に資本等の金額を減少させることとされます。適用は、平成18年4月1日以後に取得する自己株式からです。(同日において保有する自己株式については経過措置が講じられます) など
Bその他
ア.同族会社の判定基準に決議権等が加えられます。
イ.役員の範囲に会計参与が加えられます。
(13)事業概況書の提出
法人税の確定申告書等の添付書類に、法人の事業等の概況に関する書類が加えられます。
(14)適用期限の延長
次の事項については期限が延長されます。
@使途秘匿金の支出がある場合の課税の特例の適用期限が2年延長されます。
A欠損金の繰戻しによる還付の不適用制度の適用期限が2年延長されます。 など