助川公認会計士事務所 | 会社の税務 | 08/06/01 |
平成19年度税制改正 会社税務 |
適用は、平成19年4月1日以降から適用です。 ここ数年の増税路線から、回復基調にある経済を持続発展させることの重点をおく改正となっています。主なものとしては法人・個人を問わず影響のある@減価償却制度の抜本改正、A特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入制度の改正、B電子申告の促進支援など、広範囲にわたってさまざまな改正が行われます。
(1)減価償却制度の償却可能限度額廃止
設備投資を促進して生産手段の新陳代謝を加速する観点から、減価償却制度が見直されます。具体的には、以下の通りです。
@ 償却可能限度額と残存価額の廃止
平成19年4月1日以後に取得する減価償却資産については、償却可能限度額(取得価額の95%)及び残存価額を廃止し、法定耐用年数の経過時点に1円(備忘価額)まで償却できることになります。
※ 低率法を採用する際の償却率は、定額法の償却率(1÷耐用年数)を2.5倍した数とし、特定事業年度以降は残存年数(耐用年数から経過年数を控除した年数)による均等償却に切り換えて1円まで償却できることとされます。
※ 本編で触れている「特定事業年度」とは、償却中のある事業年度における残存簿価について耐用年数経過時点に1円まで均等償却した場合の減価償却費が定率法により計算した減価償却費を上回ることとなった場合の当該事業年度とされます。
なお、特定事業年度の判定に資するよう、償却資産の耐用年数に応じた速算表が示されることになります。
A 平成19年3月31日までに取得した減価償却資産について
平成19年3月31日までに取得した減価償却資産については、償却可能限度額(取得価額の95%)まで償却した残額(取得減価の5%)を翌事業年度以後5年間で1円(備忘価額)まで均等償却ができることになります。
B 一定の設備等の耐用年数の短縮
IT分野の製造設備については、技術進歩が著しいことから、次のように法定耐用年数が短縮されます。
対象設備 |
従前 |
改正後 |
フラットパネルディスプレイ製造設備 |
10年 |
5年 |
フラットパネル用フィルム材料製造設備 |
10年 |
5年 |
半導体用フォトレジスト製造設備 |
8年 |
5年 |
(1)フラットパネルディスプレイ製造設備
液晶・プラズマテレビ等で用いられている、電子的に画像を表示するための装置。具体的には、液晶パネルディスプレイ製造設備やプラズマディスプレイ製造設備。
(2)フラットパネル用フィルム材料製造設備
上記(1)のフラットパネルを構成するカラーフィルターと偏光板をいいます。カラーフィルターは、光源として用いられる白色のバックライトのカラー化を行うためのもので、偏光板は、様々な方向に振動する光のうち、一定の方向に振動する光のみを透過させ、光の流れを制御するためのもの。
(2) 半導体用フォトレジスト製造設備
半導体基板(ウェハー)上に回路を焼き付けるための液体材料をフォトレジストといいます。
(2)特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入制度の適用緩和
実質的な一人会社(特殊支配同族会社)のオーナーへの役員給与の一部を損金不算入とする制度について、適用除外基準である基準所得金額が表のとおり引き上げられ、その適用が緩和されることになります。
適用は平成19年4月1日以後に開始する事業年度からです。
従前 |
改正後 |
|
基準所得金額 | 800万円 | 1600万円 |
平成18年4月〜同19年3月の間に開始する事業年度については、従前の800万円が適用されるので、ご注意下さい。
この改正は、平成19年4月1日以後に開始する事業年度の法人税について適用するとされていますので、注意してください。(法人税法第35条関係)
(3) 役員給与の見直し
法人が支給する役員給与について、次のような見直しがされます。
@ 定期同額給与についての見直し
職制上の地位の変更等(例えば、専務から代表取締役へ)により改定された定期給与についても定期同額給与とされます。
A 事前確定届出給与の届出期限の見直し
事前確定届出給与の届出期限を役員給与を定める決議を株主総会の日から1ヶ月を経過する日(その日が職務の執行を開始する日の属する会計期間開始の日から4ヶ月を経過する日後である場合にはその4ヶ月を経過する日等)とされます。また、同族会社以外の法人が定期給与を受けていない役員(例えば、非常勤役員)に支給する給与については、事前確定の届出が不要となります。
(4) 特定同族会社の留保金課税の対象会社から資本金1億円以下の会社を除外
経済活性化の観点から、特定同族会社の留保金課税制度について、その適用対象法人から資本金額または出資金の額が1億円以下の会社が除外されることになります。
資金調達で制約を受けやすい中小企業の資本蓄積を促進して、企業の財務内容の財政基盤を強くすることを目的として、今回の改正が行われます。
(5)リース会計の見直しへの対応
企業会計基準の変更に伴い、企業等の事務負担軽減を踏まえながら、取引の経済的実態を適切に反映するよう税制措置が図られます。つまり、一定のリース取引を売買と見なした上で、借手の減価償却の方法についての規定を整備するなどの必要な措置が講じられます。
ファイナンス・リース取引(資産の賃貸借で、貸借期間中の契約解除が禁止されており、かつ、賃借人が当該資産の使用に伴って生ずる費用を実質的に負担する等の要件を満たすものをいう)のうち、リース期間終了時にリース資産の所有権が賃借人に無償で移転するもの等以外のもの(以下「所有権移転外ファイナンス・リース取引」という)について、例えば次のような措置(一部抜粋)が講じられます。
@ 所有権移転外ファイナンス・リース取引は、売買取引とみなす。
A 所有権移転外ファイナンス・リース取引の賃借人のリース資産の償却方法は、リース期間定額法(リース期間を償却期間とする定額法をいう)とする。なお、賃借人が賃借料として経理した場合においてもこれを償却費として取り扱う。 など
(6)中小企業等基盤強化税制の延長
設備投資の推進により、中小企業等の高度化、高付加価値化を図るため、一定の見直しを行った上、適用期限が2年延長されます。
次のとおり見直しを行った上、その適用期限が2年延長されます。
・中小企業による地域産業資源を活用した事業活動の促進に関する法律(仮称)
に規定する認定計画(仮称)に規定する認定計画(仮称)に従って地域産業資源活用事業(仮称)を行う中小企業者で一定の基準に適合するものが取得等をする当該認定計画に定める機械装置を対象に加える。
・持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律に係る措置及び中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律の一定の中小企業者で設立5年以内のものに係る措置の除外する。
・ 飲食店業に係る措置について、対象設備を生活衛生関係営業の運営の適正化及び振興に関する法律に規定する認定を受けた振興事業に係る設備に限るものとする。
・ 特定旅館業を営む大規模法人に係る措置について、特別税額控除の対象から除外するほか、対象設備に国際放送・高速通信設備を加えるとともに、対象設備から厨房設備を除外する。
(7) 租税特別措置の見直しなど
【創設】
@ 事業所内託児施設
青色申告法人で、次世代育成支援対策推進法より一般事業主行動計画を厚生労働大臣に届け出るなど一定の基準を満たす事業所内託児施設の設置及び運営をしていることについて証明された場合には、平成19年4月1日から同21年3月31日までの間に新設した事業所内託児施設とその器具備品について、5年間普通償却限度額の20%(次世代育成支援対策推進法の中小事業主については30%)の割増償却ができます。
A地域産業活性化支援税制の創設
青色申告法人で、企業立地の促進等による地域における産業集積の形成及び活性化に関する法律(仮称)により、その法律の施行の日から平成21年3月31日までの間に、その集積区域内において、その企業立地計画(仮称)に定められた機械装置及び工場用建物などを取得等した場合(貸付のものは除かれる)にはその取得価額の15%(建物等は8%)の特別償却ができることとされます。 など
【適用範囲等の見直し及び適用期限の延長】
@ 特定の資産の買換えの場合等の課税の特例
特定の資産の買換えの場合等の課税の特例について、長期所有の土地、建物等から国内にある土地、建物、機械装置等への買換えの適用期限が2年延長されます。
A 医療用機器等の特別償却制度
青色申告法人で医療保険業を営むものが、平成19年4月1日から同21年3月31日までの間に、療養病床等を介護老人保健施設等とするための増築または改築した場合には、その介護老人保健施設等の基準取得価額の15%の特別償却が加えられ、その適用期限が2年延長されます。
B 優良賃貸住宅等の割増償却制度
改良優良賃貸住宅に係る措置を除外し、高齢者向け優良賃貸住宅の割増率を次のとおり引き下げた上、その適用期限が2年延長されます。
従前 |
改正後 |
|
耐用年数35年以上 |
50% |
40% |
耐用年数35年未満 |
36% |
28% |
【廃止】
@ 農業経営改善計画を実施する者の機械等の割増償却制度
A 欠損金の繰戻しによる還付の不適用制度における産業活力再生特別措置法の設備廃棄等欠損金額に係る適用除外の措置
B 特定高度技術産業集積地域における高度技術産業用設備の特別償却制度
C 製造過程管理高度化設備等の特別償却制度