助川公認会計士事務所 | 会社の税務 | 04/05/30 |
平成15年度税制改正のポイント(法人税関連) |
1.30万円未満の少額減価償却資産の全額損金算入
中小企業者等が、平成15年4月1日から同18年3月31日までの間に取得価額が30万円(従前は10万円)未満の減価償却資産を取得した場合には、その取得価額の全額を損金算入することができることになります。
※ここでいう「中小企業者等」とは、資本金(資本積立金を含む)の額が1億円以下等の中小法人や従業員が1,000人以下の個人事業者などです。
2.交際費課税をさらに軽減
交際費等の損金算入制度について、400万円の定額控除が認められる対象法人を資本金1億円以下(従前は5,000万円以下)の中小法人に拡大するとともに、定額控除額までの金額の信金算入割合が90%(従前は80%)に引き上げられます。適用は平成15年4月1日以後開始する事業年度からで、適用期限が同18年3月31日まで3年間延長されます。
<例:資本金1億円の法人が交際費として1,000万円の支出した場合>
【従 前】その金額である1,000万円が損金不算入。
↓
【改正後】損金不算入額は640万円=
{(1,000万円−400万円)+(400万円×10%)}と軽減。
つまり360万円が損金算入。
3.同族会社の留保金課税の一部停止
同族会社の留保金課税について、自己資本比率(自己資本÷総資産。この場合の自己資本には、同族関係者からの借入金が含まれる)が50%以下の法人(資本金1億円以下)について、平成15年4月1日から同18年3月31日までの間に開始する事業年度に限り、留保金課税は適用されません。
なお、従前の中小法人についての課税留保金額に対する税額の95%とする軽減措置は廃止されました。適用は平成15年4月1日以後開始する事業年度からです。
4.技術の改良など試験研究費に対する減税
試験研究費が増加しなくても一定の基準以上であれば税額控除される「試験研究費の総額に係る税額控除制度」が新たに設けられました。従来からある増加試験研究費の税額控除制度との選択適用となります。
新制度での税額控除率は、「試験研究費割合」(=試験研究費÷当期を含む4年間の平均売上金額)に応じて次のようになります。
試験研究費割合 |
税額控除率 |
|
平成15−17年度 | 平成18年度 | |
10%以上 | 12% | 10% |
10%未満 | 10%+試験研究費割合×0.2 | 8%+試験研究費割合×0.2 |
◎税額控除額(法人税額の20%相当額を限度)=試験研究費の総額×税額控除率
適用は、平成15年1月1日以後開始する事業年度で、かつ、同15年4月1日以後に終了する事業年度です。なお、3年間の時限措置として、税額控除率は2%がそれぞれ上乗せされます。
5.中小企業の試験研究費に対する減税
中小企業技術基盤強化税制が拡充され、平成15年1月1日以後開始する事業年度の増加試験研究費の税額控除制度ならびに上記4.などの税額控除制度に代えて、試験研究費の総額の12%(従前は6%。ただし、平成15年3月31日までは10%)相当額の税額控除が可能(法人税額の20%相当額を限度)となります。ただし、平成15年1月1日〜同18年3月31日の間に開始する事業年度については、3%上乗せされて15%となります。
税額控除割合
従 前 |
平成15〜17年度 |
平成18年度以後 |
6% |
15% |
12% |
6.増加試験研究費の税額控除制度の適用期限の3年延長
試験研究費が増加した場合の税額控除制度の適用期限が平成18年3月31日まで延長されます。
7.IT投資促進制度の創設
創設されたIT投資促進制度は、平成15年1月1日から同18年3月31日も間に、一定のIT関連設備等を取得して、これを国内の事業用として使った場合、次のいずれかを選択適用できるというのです。※平成15年4月1日以降に終了する事業年度から適用されます。
税額控除 |
取得価格×10%(法人税額の20%相当額を限度) |
特別償却 |
取得価格×50% |
[適用要件]
ソフトウエアを除く対象設備 |
適用を受けようとする事業年度における対象設備の取得価額の合計額が600万円以上(資本金3億円以下の法人は140万円以上)※1種類の設備だけである必要はなく、複数の設備の合計金額で判断します。 |
ソフトウエア |
適用を受けようとする事業年度において取得したソフトウエアの取得価額の合計額が600万円以上(資本金3億円以下の法人は70万円以上) |
※資本金が3億円以下の法人については、一定のリース資産の賃借をして国内の事業用に使った場合、リース費用総額の60%相当額について、その10%相当額の税額控除(法人税額の20%相当額を限度)が認められます。
※控除限度超過額については、1年間の繰越控除が認められます。
<IT投資促進税制適用対象設備>
1 電子計算機 2 デジタル複写機
3 ファクシミリ 4 ICカード利用設備
5 デジタル放送受信設備 6 インターネット電話設備
7 ルーター・スイッチ 8 デジタル回線接続装置
9 ソフトウエア
<例:中小企業が15万円のパソコンを10台取得し事業用に使う場合の取得年度から3年間の償却額>
初年度 |
2年目 |
3年目 |
|
法定償却(4年定率法) |
65.7万円 |
36.9万円 |
20.8万円 |
一括3年償却 |
50万円 |
50万円 |
50万円 |
中小企業投資促進税制 |
110.7万円 |
17.2万円 |
9.7万円 |
IT投資促進税制 |
140.7万円 |
1.8万円 |
− |
※耐用年数4年で期首に取得したものとして単純に計算しています。
8.開発研究用設備の特別償却制度の創設
平成15年1月1日から同18年3月31日の期間内に一定の開発研究用設備を取得等をして、これを国内の開発研究の用に供した場合には、その取得価格の50%相当額の特別償却をすることができます。
※平成15年4月1日以降に終了する事業年度から適用されます。
9.認定NPO法人制度の見直し
認定要件の緩和、みなし寄付金制度の導入が行われます。
10.医療用機器等の特別償却制度の見直し
次の見直しを行った上、その適用期限が2年延長されます。
ア.看護業務省力化機器を除外し医療安全に資する医療用機器等が追加され、取得価格の20%相当額の特別償却ができることになります。
イ.建替え病院用建物の特別償却の対象資産に一定の有床診療所の療養病床が追加されます。
11.租税特別措置の廃止
次の租税特別措置が廃止されます。
1 事業化設備等を取得した場合等の特別償却または特別税額控除
2 中小企業者等の機械の特別償却
3 ピログラム等準備金
4 技術等海外取引に係る所得の特別控除など
12.租税特別措置の縮減など
次の租税特別措置が縮減等されます。
1 公害防止設備の特別償却制度について、対象設備及び取得価額要件の見直しを行った上、その適用期限が2年(家畜排せつ物処理・保管用設備については平成16年10月31日まで)延長されます。
2 船舶等の特別償却制度について、機械その他の設備に係る償却割合を6%(従前は10%)に引き下げた上、適用期限が2年延長されます。
3 高齢者向け優良賃貸住宅の割増償却制度について、割増率を次のように引き下げた上、適用期限が2年延長されます。
従 前 |
改正後 |
|
耐用年数35年以上のもの |
55% |
50% |
耐用年数35年未満のもの |
40% |
36% |
4 電子計算機買戻損失準備金制度について、特別買戻損失の発生割合の計算方法が見直され、その適用期限が2年延長されます。