助川公認会計士事務所 | 交際費の税務 | 04/10/28 |
広告宣伝費の判断基準 |
税法は交際費や寄付金については定義を定めていますが、広告宣伝費については規定を設けていません。広告宣伝費とは不特定多数の者に対する広告宣伝効果を意図して支出されるものであると考えられます。
ところが広告宣伝費は費用を形態的に分類する場合と機能的に分類する場合とで、相当範囲が異なります。形態的に分類される場合は、例えば新聞、テレビ、ラジオを通じての広告費、宣伝用ビラやダイレクト・メールの作成及び配布費、広告看板等の掲示料範囲が比較的明確です。しかし「広告宣伝目的のために要した費用」という機能的な分類をする場合は、例えば新製品の展示会の開催に要した一切の費用、具体的には出席者に対する手みやげ代、宴会費など交際費に類するのも含まれ、税務上交際費や寄付金との区分をどうするかという問題が生じます。
このため税務では交際費との区分に関して広告宣伝費を「不特定多数の者に対する宣伝的効果を意図するものは広告宣伝費の性質を有するものとする」(措通62(1)−8)とし、「不特定多数の者に対する支出」であること及び「宣伝的効果を意図するもの」であることに、その判断基準をおいています。
次に紹介する判例には、広告宣伝費についての判断が非常に明確に述べられています。
判例
魚介類及び海産物産の卸売業を営む株式会社N(原告、控訴人)は、本件係争事業年度中に3回の売出しを行い、その間に特定の品目数量の商品を一定額以上買受けた者を松島旅行、花見会、伊豆旅行に招待し、その金額を損金として申告したところ、所轄税務署長(被告、被控訴人)は交際費に該当するとして更正を行った。
これに対し原告は、1. 交際費とは支出の相手方との間に具体的取引関係なく支払われるもので、本件費用のように具体的取引関係があることを要件として支出したものは交際費でない。2.本件費用の支出目的は売出しの対象となった商品メーカーとの話合いによりこれを広告宣伝し、メーカーより低廉仕入したものを不特定多数者に売り捌くためになされたもので、原告が小売業者相手の卸売業者であるのでその相手方は限定されるが、その範囲内での不特定多数の小売業者のうち一定の条件に該当する者は誰でも本件旅行に招待したから広告宣伝費である、と主張して訴に及んだ。
〔判決の要旨〕
本件費用はその支出の相手方及び支出の目的からみて、訴訟会社と得意先との間の親睦の度を密にして取引関係の円滑な進行を図るために支出したものというべきであり交際費に該当する。また訴訟会社は広告宣伝費であると主張するが、通常広告宣伝費とは購買意欲を刺激する目的で商品等の良廉性を広く不特定多数のものに訴えるための費用をいい、その相手方を常に不特定多数の者としているのである。本件の場合の相手方は訴訟会社と常時取引関係のある限定された得意先ばかりであって、支出された費用も飲み食い等が主たる形でなされたものであり、広告宣伝の例である新聞、雑誌、テレビ、ラジオ等に掲載報道するための費用等とは著しくその性質を異にしている。