助川公認会計士事務所 | 交際費の税務 | 04/10/28 |
役員と交際費 |
1.無報酬の非常勤役員に対する中元、歳暮の贈呈費用
無報酬でお願いしている社外の非常勤役員に対して、謝意を表する意味で中元と歳暮を贈るケースがあります。無報酬の非常勤役員に対する中元、歳暮の贈呈費用は、役員給与として義務的に支出されるものを除き、交際費となります。
交際費の支出の相手には、法人の役員、従業員も含まれます。(措通62(1)−17)また交際費は、接待、きょう応、慰安、贈答をする側の一方的意思によって支出される費用で、義務の履行として支出される費用は交際費に該当しません。
非常勤役員に対して報酬の支払いに代えてあらかじめ約束された金額程度の中元、歳暮を贈るのであれば、一種の義務の履行ですから交際費でなく、役員給与になります。非常勤役員に盆と暮に一定額の商品券を継続して贈るような場合が、これに該当するといえましょう。
2.役員だけで行った慰安旅行の費用
役員だけで慰安旅行を行った場合、その旅行に要した費用は、税務上福利厚生費、交際費、役員給与のいずれになりと考えられるだろうか。役員だけで行った慰安旅行の費用は通常参加した役員に対する賞与となります。
まず慰安旅行の費用が福利厚生費になるのは、専ら従業員の慰安旅行のために行われる通常の費用に限られます。(措通62.3かっこ書)この場合は、役員だけを対象にして行われる慰安旅行ですので、これに該当しません。
次に交際費になるのは、当該慰安旅行が業務の遂行上必要なものと認められる場合です。すなわち、役員が業務の遂行上当該旅行に参加せざるを得なかったときは、役員は当該旅行に参加することになる経済的利益を受けていませんので、慰安旅行の費用は参加役員に対する給与となりません。しかし慰安の行為には違いありませんから、交際費になります。
ところが、役員だけの旅行が業務の遂行上必要なものとして行われる事例は少なく、通常役員に経済的利益を与えたものとして役員給与になると考えられます。次に掲げる審査事例は、これについての判断を示したものです。役員給与となりますと、賞与として損金不参入になるほか、所得税の源泉徴収も要することになります。
審査事例
役員のみで行った旅行について、業務遂行上必要なものであったと認められないとして当該旅行費用を参加役員に対する賞与とした事例
[裁決の要旨]
請求人は、本件旅行は、役員相互間の意志疎通を図るとともに採石場の視察及び取引先等の事業関係者にも該当する役員の接待を行い事業の円滑化に資する目的で行ったものであるから、本件旅行費用は業務遂行上必要なものであり交際費に該当すると主張するが、本件旅行において、採石場の視察を行ったとの事実は認められず、取引先等の事業関係者という者は役員の立場にある者であることなどから取引関係者の接待ということもいえず、また、旅行中に役員間の意見対立の調整等が図られたという事実も認められないので、本件旅行は役員のみで行われた観光目的の旅行であり、その費用は業務遂行上必要なものと認められず、役員賞与に該当する。