| 助川公認会計士事務所 |
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会社の税務 | 09/02/14 |
| 子会社の再建計画に伴う債権放棄と寄附金 |
１．寄附金となる場合
業績不振の子会社に対し、その合理的な再建計画に基づいて親会社が債権放棄や債務の引受けをすると寄附金になります。子会社等を再建させる目的での債権放棄は寄附金になります。これは、子会社を再建させる場合、親会社は債権のたな上げを行ったうえで業績を回復させてその回収を図るのが筋道で、親会社だけが気前よく債権放棄や債務の引受けをするのは相当の理由がないからです。
２．寄附金とならない場合
協議決定した再建計画で親会社が他の債権者よりも高い割合で債権放棄する場合、債権者集会等の協議決定等によるものであれば寄附金にならない。
親会社の子会社に対する債権放棄や債務引受けが寄附金にならないためには、子会社を消滅させるか親会社の支配下から離脱させることが必要で、子会社を再建させる計画に基づく場合は寄附金になるとされています。
一方、法基通9-6-1(3)には、債権者集会の協議決定及び行政機関又は金融機関その他の第三者のあっせんによる当事者間の協議で債務者の負担整理が定められたときは、これにより切り捨てとなった債権は貸倒れとして損金算入する旨が示されていますが、再建計画の一環として負担整理が行われる場合にも適用されます。従って再建計画に基づく債権の放棄でも、親会社だけの恣意に基づくものは相当な理由があるといえませんが、当事者間の公正な協議に基づくものは親会社だけが損失を負担しませんので、寄附金にはなりません。
次に関係者間の協議決議で負債整理の方法が決められる場合、必ずしも全債権者同一の条件で債権切捨額が決められるとは限らず、親会社に対してその責任を重視して他の債権者よりも切捨て割合が多く決められる場合が多いと思います。親会社としてもその条件を受入れないと他の債権者の協力が得られず、結果的に子会社の再建が困難となってより大きい損失を蒙りますから、このような決定に従うのは不合理ではありません。要するに子会社の再建計画が一般債権者の主導によって合理的に決定されておれば、親会社が他の債権者よりも高い割合で債権放棄をしても、寄附金にはならないと考えます。
３．「子会社の立直りによって将来利益を受ける期待」は相当の理由にならない
子会社等の再建計画に関連しての親会社の債権放棄には、将来当該子会社から受ける配当金の反対給付を期待してのものとか、残債権の回収可能性が高くなることを考慮してのものとかがあるとの考えもあり、更に企業グループ内から倒産企業がでた場合の親会社の社会的信用低下の回避という点からも相当な理由があり、寄附金にはならないと考えられるだろうか？
まず親会社の子会社に対する債権放棄は、将来子会社等が業績回復して配当金を行うという反対給付を期待しての取引でないかという点について考えましょう。寄附金はたしかに反対給付の期待できない一方的な金銭その他の資産の贈与ですが、この場合の反対給付とは贈与を受ける側からの現実的、直接的な反対給付、例えば取引価格への反映とか取引上の便宜の供与等に限定され、将来的、期待的な反対給付までは含まれないと解されます。従って、将来配当が期待できるとか、債権の一部放棄によって残債権の回収可能性が高くなるというようなことは、ここでいう反対給付に該当しません。
親子会社間の取引が寄附金になるかどうかは、仮に親子会社という特殊関係のない会社の間で通常の経済取引として同様の取引が行われるのかどうかで判断すべきです。一般の会社の間では現実的、直接的な見返りがないにもかかわらず、将来の漠然とした見返りをアテにして贈与をするようなことはあり得ません。
次に子会社等の倒産を回避するのは親会社の社会的信用の維持のために必要であり、子会社等を救済するのは親会社自らのためであるという点については異論はありません。しかしこの故をもって子会社等を再建させるための親会社の債権放棄が相当な理由があるということにはなりません。すなわち、子会社等の再建を図る場合、親会社はまず債権のたな上げを行い、その業績回復をまって債権の回収を図るのが道筋で、親会社だけが気前よく債権の放棄をするのは相当の理由があると認め難いということです。
要するに親会社の子会社に対する債権放棄が寄附金にならないためには、子会社の解散、経営権の譲渡などその消滅又は親会社の支配下からの離脱が必要で、子会社の再建計画の一環としての親会社の債権放棄は寄附金になります。親会社の社会的信用維持のための債権放棄等の必要性は、現在の取扱いでは解散又は親会社の支配下からの離脱の場合だけしか認められていません。
