助川公認会計士事務所 | 会社の税務 | 04/05/30 |
消費税関係の改正 (平成15年度税制改正) |
消費税については、事業者の「免税点制度」および「簡易課税制度」のそれぞれの適用上限が引き下げられました。適用時期の関係から直ちに税務上の影響を受けないのですが、中小・零細企業にとって、先々、大きな影響を受けることになります。
1.消費税の免税点制度・簡易課税制度の改正
(1)課税事業者となる課税売上高の免税点制度の適用上限が年1,000万円(従前は年3,000万円)に引き下げられます。
(2)簡易課税制度の適用の上限が年5,000万円以下(従前は年2億円以下)に引き下げられます。
これにより、課税売上高から納付する消費税額を算出する簡易課税制度が認められる事業者が少なくなります。
<免税点制度の適用範囲>
従前 |
改正後 |
課税売上高 3,000万円以下 | 課税売上高 1,000万円以下 |
<簡易課税制度の適用範囲>
従前 |
改正後 |
課税売上高 2億円以下 |
課税売上高 5,000万円以下 |
[適用時期]
法 人 平成16年4月1日以後開始する課税期間
個人事業 平成17年1月1日以後開始する課税期間
(3)適用の判定
免税点制度・簡易課税制度を適用できるかどうかの判定は、基準期間(法人:前々事業年度、個人事業:前々年)の課税売上高によって判定します。具体的には次のとおりです。
法 人:平成14年4月1日以後開始する事業年度の課税売上高で判定。
個人事業:平成15年(平成15年1月1日から同年12月31日)分の課税売上高で判定。
★注意:具体的には、法人は平成14年4月1日以後開始する事業年度の課税売上高によりにより、個人事業者は平成15年分の課税売上げにより判断されます。
<例:3月決算法人の課税期間と基準期間>
会計期間 |
14年4月1日〜15年3月31日 |
15年4月1日〜16年3月31日 |
16年4月1日〜17年3月31日 |
|
基準期間 | 対象となる課税期間 |
ポイント 基準期間の課税売上高を計算する場合、その基準期間の初日が施行日(平成15年4月1日)前で、かつ、その基準期間の課税売上高を計算することに困難な事情があるときは、同15年10月1日から同年12月31日までの課税売上高を4倍した金額を基準期間の課税売上高とすることができます。
2.免税点引下げの影響
課税売上高が1,000万円超3,000万円以下で、これまで免税事業者だったところは課税事業者になり、消費税の申告納付が必要になります。次の点に留意しましょう。
適用上限 | 従前(3千万円) | 改正後(1千万円) |
課税事業者 | 226万者 | 362万者(136万者増) |
(1)本則課税か簡易課税かどちらが有利か?
簡易課税を選択できるので、本則課税と簡易課税とではどちらが有利かをシミュレーションする必要があります。本則課税には、実務負担が伴うので、それを考慮しなければなりません。
(2)申告納付
消費税の申告納付に伴い、経理事務等が増えます。また、新たに消費税を納めなければならないので、納税資金を準備する必要があります。
(3)消費税を販売価格に転嫁するか?
消費税を販売価格に上乗せして転嫁できるかどうかも含めて、価格戦略を見直します。
3.簡易課税制度の適用上限引下げの影響
これまで課税売上高が5,000万円超2億円以下で、簡易課税制度を選択していた事業者は、平成16年4月以後に始まる事業年度からは、原則どおり消費税を計算する本則課税に移行しなければなりません。
適用上限 | 従前(2億円) | 改正後(5千万円) |
適用者数 | 106万者 | 50万者(56万者減) |
(1)納付税額の増加の可能性
簡易課税のみなし仕入率適用による優遇がなくなります。それに伴って法人税は減少しますが、消費税が増えることが予想されるので、納税対策が必要です。
(2)日々の正確な記帳が必要
帳簿および請求書等には、それぞれ記載されていなければならない事項があります。不備があれば、仕入税額控除ができず、その分だけ多く消費税を納めなければならなくなります。日々正確にきちんと記帳し、受け取る請求書等については記載事項に漏れはないかチェックしましょう。
(3)帳簿および請求書等を整理保管すること
消費税法では、帳簿および請求書等を7年間保存しなければなりません。もし保存していない場合、仕入税額控除が認められません。また保存する場合は、すぐ取り出せる状態に整理しておく必要があります。
(4)帳簿および請求書等の記載事項
帳簿と請求書等には、次の事項がきちんと記載されていなければなりません。
<帳簿の記載事項>
@課税仕入れの相手方の氏名または名称
A課税仕入れを行った年月日
B課税仕入れに係る資産または役務の内容
C第1項に規定する課税仕入れに係る支払い対価の額
<請求書等の記載事項>
@書類の作成者の氏名または名称
A課税資産の譲渡等を行った年月日(課税期間の範囲内で一定の期間内に行った課税資産の譲渡等につき、まとめて当該書類を作成する場合には、当該一定の期間)
B課税資産の譲渡等に係る資産または役務の内容
C課税資産の譲渡等の対価の額(当該課税資産の譲渡等に係る消費税額および地方消費税額に相当する額がある場合には、当該相当する額を含む)
D書類の交付を受ける当該事業者の氏名または名称
4.改正に伴うケースごとの主な届出書
ケース | 提出すべき届出書 | 提出期限など |
新たに課税事業者になる場合 | 消費税課税事業者届出書 | 所轄の税務署にできるだけ速やかに提出。 |
免税事業者が課税事業者を選択する場合 | 消費税課税事業者選択届出書 |
提出を受けようとする課税期間の前日までに所轄の税務署に提出。新規開業の場合、開業した課税期間の末日までに提出すれば、開業した日の属する課税期間から選択可能。新たに課税事業者となる事業者の最初の課税期間については、その課税期間中に所轄税務署に提出。 ※いったん選択すると、それぞれの選択不適用届出書を提出しない限り、その効力は存続するので注意が必要。 |
新たに課税事業者になる者が簡易課税を選択する場合 | 消費税簡易課税制度選択届出書 | |
簡易課税の選択を取りやめる場合
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消費税簡易課税制度選択不適用届出書 |
選択を取りやめようとする課税期間の初日の前日までに所轄の税務署に提出。ただし最低2年間は継続適用しなければならない。 ※課税売上高が5,000万円超2億円以下で、簡易課税を選択していた事業者は、自動的に本則課税に移行する。 |
5.総額表示の義務付け
事業者がその相手方である消費者等に対して商品の販売、役務の提供等の取引を行うに際し、予めその取引価格を表示する場合には、商品や役務に係る消費税額(地方消費税額を含む)を含めた価格を表示することが義務付けられます。平成16年4月1日からです。
<例> 取引価格 …… 1,050円(税込み)
〃 …… 1,050円(本体価格1,000円)
〃 …… 1,050円(内消費税50円)
〃 …… 1,050円(本体価格1,000円、消費税50円)
〃 …… 1,000円(税込み1,050円)
6.申告納付の方法が変更され、中間納付の回数が増加
直前の課税期間の年税額が4,800万円(地方消費税込みで6,000万円)を超える事業者については、申告納付方法である中間申告納付(従前は中間申告3回、確定申告1回)が毎月(中間申告11回、確定申告1回)となります。適用は平成16年4月1日以後開始する課税期間からです。