助川公認会計士事務所 | 会社の税務 | 2021/10/17 |
消費税 インボイス制度 免税事業者の対応 |
適格請求書等保存方式(インボイス制度)と免税事業者の対応
(1)企業間の取引で必要になる「適格請求書(インボイス)等」
仕入税額控除の適用を受けるためには、帳簿や請求書等の保存が必要となりますが、
「適格請求書等」とは、企業間の取引(BtoB)において、売り手が買い手に対し正確な適用税率や消費税額等を伝えるための手段であり、登録番号などの一定の事項が記載された請求書や納品書、領収書、レシート等の書類や電子データです。
(2)不特定多数の者に販売する事業者が発行できる「適格簡易請求書」
すべての取引が消費者と行われるのであれば「適格請求書発行事業者」になる必要はありません。しかし、小売業など、多くが消費者との取引(Bto C)であっても、企業との取引で領収書が求められることがあります。その場合は「適格請求書等」が必要です。
(3)適格請求書等の交付義務が免除されるケース
適格請求書等を交付することが困難な以下の取引は、交付義務が免除されます。
@公共交通機関である船舶、バスまたは鉄道による旅客の運送
A出荷者等が卸売市場において行う生鮮食品等の販売
B生産者が農業協同組合、漁業協同組合または森林組合等に委託して行う農林水産物の販売(無条件委託方式かく共同計算方式により生産者を特定せずに行うものに限る)
C自動販売機・自動サービス機により行われる商品の販売等
D郵便切手を対価とする郵便サービス(郵便ポストに差し出されたものに限る)
(4)「適格請求書等」の記載事項「税率ごとに区分した消費税額等」に、1円未満の端数が生じる場合、ひとつの適格請求書等につき、税率ごとに1回の端数処理を行います。したがって、「税率ごとに区分して合計した対価の額」に税率を乗じるなどして計算します。 端数処理は、「切上げ」「切捨て」「四捨五入」など任意の方法で行います。
(5) 電子インボイスとは
インボイスは紙に代えて電子データで提供することができます。この電子データのことを「電子インボイス」といいます。電子インボイスは発送作業の省力化や郵送費用、印刷代の節約につながり、また電子データのまま保存することができます。ただし、電子帳簿保存法に定める方法に準じて一定の措置を講じて保存する必要があります。
電子インボイスにより、次のような変化が期待されます。「電子インボイス推進協議会」(EIPA,2020年7月発足)では、電子インボイスの共通仕様を2021年内に固めて、2022年秋から順次サービスを始めるとしています。
現状は、製品やサービスの請求書を、紙の書類の郵送やメールで請求先に送付する。受け取った企業は、各企業が使用する個々のシステムにデータを入力し直す必要があります。
(1)免税事業者は「適格請求書(インボイス)等」を発行できません
「適格請求書(インボイス)等」を発行できるのは、課税事業者が登録できる「適格請求書発行事業者」に限られます。そのため、免税事業者が「適格請求書等」を発行するためには課税事業者になる必要があります。免税事業者からの仕入では、取引先で仕入税額控除ができません。課税事業者になることの検討が必要かもしれません。
「適格請求書発行事業者」の登録を受けた後は事業者免税店制度の適用はなくなり、基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても消費税の申告と納付が必要になります。
課税事業者としては、免税事業者など「適格請求書発行事業者」以外の者から行った課税仕入れは、原則として仕入税額控除の適用を受けられません。
(2)免税業者からの仕入の経過措置
「適格請求書等保存方式」の導入から6年間は、免税事業者等から課税仕入であっても、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除できる次のような経過措置が設けられています。
令和5年10月1日 から 令和8年9月30日まで 免税事業者からの課税仕入につき、80%控除可能
令和8年10月1日 から 令和11年9月30日まで 免税事業者からの課税仕入につき、50%控除可能
令和11年10月1日 から 控除不可
(3)免税事業者が検討すべきこと
事業の実態等を踏まえ、次のような場合を想定して、課税事業者を選択する(「適格請求書発行事業者」の登録申請をする)かどうか検討の必要があります。
@顧客が消費者のみの場合には、必ずしも「適格請求書等」を発行する必要はありません。
A課税事業者を選択をすると消費税の申告・納付が必要になります。
Bお客さまや取引先から「適格請求書等」の発行を求められる可能性があります。
C「適格請求書等」を発行できないと、課税事業者の取引先から消費税分の値引きを要求されたり、取引が見直されたりする懸念があります。