助川公認会計士事務所 | 会社の税務 | 04/10/28 |
出向社員の給与の補てん金 |
1.出向社員の給与較差補てん金
子会社に出向している社員の給与の給与較差補てん金を親会社が負担しても寄附金になりません。子会社が赤字で賞与を支給しない場合、親会社が出向社員の賞与を全額負担しても寄附金にはなりません。また、当該社員が子会社が役員に就任しているときも同様です。
子会社に出向している社員の給与について、親会社と子会社のベースに較差があるため補てん金を親会社が支給するときは寄附金にならず、全額損金不算入されます。(法基通9-2-30)
出向期間中当該社員は専ら子会社の業務に従事していますから、その期間中の給与はすべて子会社が負担すべきだと考えますと、当該較差補てん金は親会社が子会社に与えた経済的利益の供与として寄付金になります。しかし、次に述べるように親会社が負担すべき理由もありますので、法基通9-2-30では寄附金とはしないこととしています。
その理由
@当該出向は親会社の必要性に基づいて行われているから、親会社が相応の費用負担をしても当然である。
A親会社と当該社員との雇用関係は出向後も続いているから、親会社よりもベースの低い子会社の給与しか支給しないのは親会社として労働契約に違反することになる。
この場合、子会社が経営不振等で出向者に賞与を支給できないため親会社がその支給ベースで賞与の全額を負担しても較差補てん金となり、寄附金にはなりません。(法基通9-2-30(注)1)出向社員が子会社で役員になっていても、親会社と当該社員との雇用関係は続いており、当該社員の立場でみれば子会社の業績に関係なく親会社のベースに基づく賞与を受給できる権利がありますので、役員になっていない者と同様に考えてよいのです
2.出向社員の給与の全額負担
子会社に出向している社員の給与の全額を親会社が負担したときは、合理的理由があれば寄附金にならない。
子会社に出向している社員の給与較差補てん金は、親会社が負担しても寄附金になりません(法基通9-2-30)が、給与の全額を負担するときは、負担することについて合理的な理由がない限り、本来子会社が負担すべき給与相当額は親会社から子会社に対する寄附金となります。
問題は合理的な理由ですが、まず社員が子会社に使用人として出向しているときは、単に労務面での支援にすぎませんから、労務の提供に対する対価は当然子会社が支払うべきで、親会社が負担する合理的な理由はないと思います。
しかし、子会社に役員として出向しているときは、子会社に対する投下資本の管理とか、子会社の生産、技術の管理など親会社の業務の必要性に基づく場合が多いでしょう。特に内容の良くない子会社ほど親会社の管理の必要性が高く、子会社に倒産、生産中止などの支障が生じた場合の損失に比べれば、出向者の給料の親会社での負担などわずかなものだといえましょう。
よく親会社が黒字で子会社が赤字のときは、出向社員の給与を親会社が負担すると親会社の税の負担が減るのに対して赤字の子会社はどのみち税の負担がなく、課税上弊害が生ずるので認められないといわれますが、寄附金かどうかの判断の基準は、税の逋脱を意図した負担かどうかもさることながら、親会社が負担することに合理的理由があるかどうかが基本になります。