助川公認会計士事務所 | 会社の税務 | 10/05/22 |
役員給与の税務に関する改正の概要 |
1.平成18年5月1日施行の会社法 会社設立のお手伝いをします
平成18年5月1日施行の会社法では、役員賞与は、役員報酬と同じく職務執行の対価と位置づけられています。これを受けて、企業会計基準委員会は「役員賞与に関する会計基準」を公表。それによると、すべての会社において、役員賞与は従来の利益処分方式ではなく、報酬と同様に「費用」として会計処理することとされています。
2.平成18年度の税制改正
税制では、それらの流れを踏まえて、平成18年度の税制改正において、役員報酬等に関する規定が大きく変わりました。従来、“月給等の定期の給与である役員報酬は原則損金算入、それ以外の臨時の給与である役員賞与は損金不算入”と定められていました。しかし改正によって、役員報酬も賞与も「役員給与」としてひとくくりにし、役員給与のうちで「定期同額給与」「事前確定届出給与」および「利益連動給与」に該当する給与が損金に算入されることとされました。さらに、一定の同族会社については、オーナー役員等の給与の損金算入を制限する規定も設けられています。
3.従来の「役員給与の税務」
従来は、法人税法では、役員報酬、役員賞与そして役員退職給与に分けて、次のように規定されていました。
役員報酬(月給等の定期の給与) |
→ |
原則として損金算入 |
役員賞与(退職給与等以外の臨時的な給与) | → | 損金不算入 ※ 使用人兼務役員に支給する使用人分の賞与で、一定の要件を満たすものは損金算入 |
役員退職給与 | → | 原則として損金算入 |
(注)平成18年3月31日以前に開始する事業年度までは、この取扱いとなります。
4.新しい「役員給与の税務」(平成18年4月1日以後開始する事業年度からの取扱い)
役員給与とは、「役員報酬、役員賞与など、法人が役員に対して支給する給与」であり、
※法人が役員に与える経済的利益(債務免除、無利息貸付け等)を含む |
※役員退職給与を除く |
※一定の新株予約権によるものを除く |
※使用人兼務役員に支給する給与のうち、使用人としての職務に対するものを除く |
役員給与のうち、以下の@〜Bに該当する給与が損金に算入されます
@定期同額給与 | ・支給時期が1か月以下の一定の期間ごとであること |
・その支給時期における支給額が事業年度を通じて原則同額であること | |
A事前確定届出給与 | ・支給時期、支給額があらかじめ定められており、その内容に関する届出書を所轄税務署長に提出していること |
B利益連動給与 | ・同族会社には認められない(損金算入できない) |
・業務執行役員(取締役会設置会社の業務執行取締役、委員会設置会社の執行役等)のすべてに支給するこ | |
・算定方法が有価証券報告書に記載される利益に関する指標を基礎とした客観的なものであること | |
・すべての業務執行役員について算定方法が同じであること 等 |
☆役員退職給与は、−−>不相当に高額な部分を除き、損金に算入されます。
5.使用人兼務役員に支給する給与
使用人兼務役員に支給する給与のうち、使用人としての職務に対する給与の取扱
@ | 使用人としての職務に対する賞与で、他の使用人としての賞与の支給時期と異なる時期に支給したものは損金に算入されません。 |
A | 上記の賞与以外の使用人分給与については、不相当に高額な部分を除いて損金に算入されます |
6.「特殊支配同族会社」における役員給与の損金算入を制限
【平成22年4月1日以後に終了する事業年度から適用されない】
「特殊支配同族会社」における役員給与の損金算入を制限する規定が設けられました
@「特殊支配同族会社」とは、以下の2要件を満たす同族会社である。
@)業務主宰役員(業務を取り仕切っている中心的役員)とその同族関係者(親族、内縁関係者等)がその同族会社の発行済株式総数の90%以上を保有
A)業務主宰役員とその同族関係者(その同族会社の役員で常に職務に従事する者)の総数が、常に職務に従事する役員総数の2分の1超
A役員給与の損金不算入とされる金額
業務主宰役員に支給する給与(経済的利益の供与を含み、退職給与等を除く)のうち、給与所得控除額に相当する金額
B適用されない(損金算入が制限されない)場合
その特殊支配同族会社の基準所得金額が800万円以下である場合等