助川公認会計士事務所 | 会社の税務 | 09/10/10 |
役員給与を減額するときの税務上の問題 |
役員給与の減額 税務上の問題 会社設立のお手伝いをします
世界的な景気減退の影響を受けて、中小企業の経営者は、売上減少、収益圧迫、資金繰りの悪化など経営が厳しい折、自らの給与を減額して、この苦境を乗り越えようと頑張っています。
役員給与である定期同額給与を減額する際、損金にならないこともありますので注意してください。
1.損金にできる役員給与の減額改定は?
急激な景気後退によって業績や資金繰りが悪化しており、期の途中ですが、経営者が会社から毎月定額に受け取る役員給与を減額することにしました。
税務上、減額後も損金として認められるでしょうか。
法人税法では、役員報酬や役員賞与をひとくくりにして「役員給与」といい、定期同額給与は損金算入が認められます。
業績が悪化したことを理由に、事業年度の途中に役員給与を減額しようとするときに、減額後も定期同額給与として損金になるかどうかは気になるところです。
この場合、その理由が、
経営状況の著しい悪化等にともないやむを得ないものであれば、
減額後の給与も損金として認められます。
※ ただし、改定前の各支給時期(その事業年度内に限る)における支給額が同額であり、かつ、改定以後の各支給時期(その事業年度内に限る)における支給額が同額でなければなりません。
▼減額改定
4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月
↓
定期同額給与として全額損金算入
●損金算入できる定期同額給与とは?
次の要件を満たすものです。なお、税務署長への届出は不要です。
・ 支給時期が1か月以下の一定の期間ごとである
・ その支給時期における支給額が事業年度を通じて原則同額である
2.役員給与を減額せざるを得ない事情とは?
定期同額給与の減額が認められる理由とは、次のようなことをいいます。
@ 財務諸表の数値が相当程度悪化した
A 倒産の危機に瀕している
B 経営悪化により、第三者である利害関係者(株主、債権者、取引先等)との関係上、役員給与を減額しなければならなくなった
経営の悪化によって、第三者である利害関係者(株主、債権者、取引先等)との関係上、役員給与を減額しなければならなくなったときは、定期同額給与の減額改定が認められます。
しかし、減額しなければならなくなった事象を客観的、かつ具体的に説明できなければなりません。
減額しなければならなくなった事象
どのような事例があるでしょうか。
例1
取引銀行との間で、借入金返済の延長や条件緩和(リスケジュール)をするために、役員給与を減額しなければならなくなった。
この場合、取引銀行への返済延期の申請時や交渉時に作成した事業計画や資金繰り表などがあれば減額の理由を明らかにすることができます。
例2
業績や財務状況、資金繰りが悪化したことから、取引先等からの信用を維持・確保するために、役員給与の減額を盛り込んだ経営改善計画を策定した
この場合の経営改善計画は、取引先等からの信用の維持・確保が目的ですから、仮に取引先等に見せたとしても、取引先等が納得するような内容でなければならないと思われます。
例えば、減額する期間や減額する額、さらには減額によって会社が今後もやっていけるかといったことがはっきりしていなければならないでしょう。
例3
株主との関係上、業績や財務状況の悪化について経営上の責任から役員給与を減額しなければならなくなった
同族会社のように、株主が少数で、一部の役員が株主であったり、役員と株主が親族関係にあるような場合には、役員給与を減額せざるを得ない客観的かつ特別な事情を具体的に説明しなければなりません。
3.減額改定が認められない場合
なお、業績や財務状況、資金繰りの悪化といった事実があっても、利益調整のみを目的とした減額は、「やむを得ず役員給与を減額した」とはいえないことから、経営状況の著しい悪化にともなう減額改定にはなりません。
例えば、一時的な資金繰りの都合や単に業績目標値に達しなかったというのがそれに当たります。
損金として認められない時の税務上の取扱
定期同額給与としていた給与について減額以後も毎月同額の定期給与を支給していれば、減額改定前の定期給与額のうち減額後の定期給与額を超える部分の金額のみが損金不算入になります。
▼減額改定
→この部分が損金不算入 | |||||||||||
4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月
なお、減額しなければならなくなった事象について、1年以上も経過すると忘れてしまいますので、取締役会議事録などを作成して、法律上有効な記録を作成することをお勧めします。税務調査の時に必ず、役に立つと思います。