税務署では、毎年７月１０日頃の人事異動が終わると税務調査が本格化します。税務調査とは、法人税、消費税、所得税、相続税など申告納付しなければならない税目について、申告した課税標準（所得・財産）や税額が正しいかどうかを確認するために実施されるものです。この税務調査について日頃から留意すべき事項を挙げてみましょう。

　・物販業：発注書、納品書、請求書、領収書（仕入の場合）など

　・請負業：請負契約書（収入印紙を必ず確認）、工程書、出面簿、引渡書など

　なお、これらの書類に関連した「原始記録」の保存も必要です。「原始記録」とは、取引等における最初の記録です。商品等を顧客に売り渡したならば、確かにその顧客に販売したという記録、例えば受領書のようなものです。こうした原始記録は必ず保存しておきます。また、経理処理等の根拠となった資料（例えば参考文献のコピー等）も保存しておきましょう。

　　取引における領収書などの証憑書類をもとに、日々誠実に記帳するなどして、適法に会計処理等を行うことが何よりも重要です。

　さらに、証憑書類等はきちんと整理保存しておかなければなりません。具体的には、証憑書類に＜証第　号＞のゴム印を押して毎月１から始まる一連番号を付け帳簿にもその番号を記入し、例えば税務調査等で「○番の領収書が見たい」との要請があった場合には、すぐ取り出して見せられるようにしておき、スムーズにチェックできる体制を日頃から作っておくようにします。なお、保存の仕方については、事業年度ごと、月ごと、あるいは仕入先ごとに整理保存し、整理番号を付けていつでもすぐ出せるようにしておきます。

　税務調査では、取締役や監査役の報酬及び退職金について、総会や取締役会が適法に開催され、決議されたものかどうかが重視されます。つまり、商法等に則って総会等を開催し決議していないと、商法違反となり、税法でも費用として認められなくなることもありますので注意を要します。

　なお、総会等の議事録は必ず作成し、総会等で慎重審議されている状況を記録しているもの（例えば議事録を作成する前の記録あるいは録音テープなど）も重要な裏付け資料となりますので保存しておきます。

＜総会・取締役会等についての留意点＞

�@商法に規定された招集手続きや開催場所、決議の方法等に従って総会等を開催する。

�A総会を開催したら決議内容については議事録を作成し、登記事項については２週間以内（本店所在地）に登記　　を申請する。

�B招集通知書や欠席株主の委任状、出席株主の出席カード、議事録を作成する前の記録などは保存しておく。

　　赤字企業だから税務調査がないということはありません。消費税については、黒字企業に限らず赤字企業も消費税法の規定に基づいて日々記帳し「請求書等」を整理保存しておかなくてはなりません。以下のことをチェックし不備がないようにしましょう。

�@売上げの記録（例えば小売店ではレジペーパー等、請負業では請負契約書等）が漏れなく整理保存されている　　か

�A業務として輸出入をした場合は適法に処理しているか

　☆本則課税を選択している場合

・「請求書等」の記載事項及び「帳簿」の記載事項がすべて漏れなく記載され、整理保存されているか

☆簡易課税を選択している場合

・事業区分が正しく区分されているか

　税務調査では、交際費について念入りに調査されることが多いようです。日頃から適法に処理するようにしてください。次の事項は間違えやすいので注意してください。

（１）接待の際の交通費は交際費

　得意先を料理屋で接待し、帰り際にタクシー代として１万円を渡した場合、この１万円は交通費ではなく接待交際費となります。

（２）接待ゴルフのゴルフ場利用税は交際費

　接待ゴルフの際のゴルフ場利用税は交際費として処理しなければなりません。消費税では税額に相当する金額を明確に区分している場合は、不課税取引になります。