助川公認会計士事務所 | 人事労務 | 04/10/28 |
介護保険制度 |
◇介護保険制度 −給与計算事務では要注意−
♪予定どおり4月1日からスタート65歳以上の人の介護保険料の徴収は制度開始後6ヶ月間凍結が予定されていますが、それ以外はほぼ当初の予定どおり4月から開始されます。つまり4月から介護サービスの提供が始まり、40歳以上65歳未満の人の介護保険料の徴収が開始となるわけです。企業にとっては、人件費の増加や給与計算事務等の事務手続きの増加などが予想され、影響は避けられません。
♪老人介護を社会全体で支援する介護保険制度
今まで家族に頼ってきた老人介護を、社会全体で支援していこうというものです。これによって利用者は必要に応じて介護サービスを選び、全国一律の基準で公平な介護を利用しやすい形で受けられるようになります。
(1)運営主体は各市町村と特別区(東京23区)各市町村と特別区(東京23区)が運営主体(保険者)です。
(2)被保険者は40歳以上の人原則として40歳以上の人全員が加入し被保険者となり、次のように区分されます。
・「第1号被保険者」・・・65歳以上の人(医療保険加入の本人・家族に関係なく全員)
・「第2号被保険者」・・・40歳以上65歳未満の医療保険加入者(被扶養者を含む)
(3)保険料の徴収方法・「第1号被保険者」・・・所得に応じた定額制。年金受給者(年間18万円以上)は年金からの天引きとなり、それ以外の人は市区町村が個別に徴収します。なお今年9月までの6ヶ月間は徴収凍結の予定です。
・「第2号被保険者」・・・原則は健康保険料と同様、標準報酬月額に介護保険料率を掛けた額が介護保険料として徴収されます。特に給与所得者について、この保険料は原則的に労使で折半負担となります。そして給与所得者負担分を健康保険料とともに毎月給与から天引きし、事業主負担分と合わせて健康保険料と一括して支払います。
(4)介護保健サービスを利用するにはまず住んでいる市区町村の窓口に要介護認定の申請をして、要介護などの認定を受けなくてはなりません。なお介護サービスを受ける際、利用者は1割を負担することになります。
*要介護認定の申請の受付は、昨年(平成11年)10月から各市区町村で始まっています。
♪介護保険実務:ここに注意<注意点1>第2号被保険者の資格を得るのは満40歳の誕生日の前日
満40歳の誕生日の前日が第2号被保険者の資格取得日となり、その資格取得日の月分から介護保険料を負担することになります。
・例:6月30日が誕生日
資格取得日:6月29日、介護保険料は6月分から負担
・例:7月1日が誕生日
資格取得日:6月30日、介護保険料は6月分から負担
つまり、社員各人の40歳の誕生日の前日の属する月分から介護保険料の負担が始まりますので、注意が必要です。
*健康保険組合等の場合、第2号被保険者の資格を取得したときや、資格を喪失したときの届出は必要ありません。健保組合等で健康保険の被保険者・被扶養者データにより資格確定がなされるからです。
<注意点2>5月分の給与から控除開始
介護保険がスタートする平成12年4月分から介護保険料が発生し、4月分は翌月の5月末までに納入することになります。給料からの天引き(控除)は、健康保険料と同様で、4月分を5月に支給する給与から行います。
<注意点3>健康保険被保険者本人が40歳未満で、被扶養者が40歳以上の場合は要注意
健康保険被扶養者の介護保険料については、被保険者の保険料に織り込まれていますので、健康保険被扶養者が保険料を直接納めることはありません。ただ健康保険被保険者が40歳未満で、被扶養者が40歳以上で第2号被保険者に該当する場合、特定被保険者として介護保険料を納めなければならないところもありますので、健康保険組合等に確認してください。
♪介護保険料の計算方法は?第2号被保険者の介護保険料は「健康保険料」の一部とされていますので、健康保険組合等から通知されることになりますが、その計算方法については次の2つの場合があります。
@健康保険組合等から通知される介護保険料率を、標準報酬月額に掛けて算出する場合
A健康保険組合等から介護保険料額が通知される場合
−ワンポイントチェック−
・社員の誕生日を確認し社員各人の第2号被保険者資格取得・喪失の年月日を確認しているか
・保険料率(保険料額)を確認したか
♪企業経営への影響年度途中の資格取得・喪失の管理事務が増えますし、給与システムの更新が必要となります。また、事業主(企業)も介護保険料を負担することになり人件費が増加するので、場合によっては、労働生産性の向上や人員計画の見直しも必要となるでしょう。