助川公認会計士事務所 | 経営管理 | 07/09/16 |
社内不正の未然防止の例 |
1. 回数券や商品券など換金しやすい社内物品の管理
回数券、商品券、切手及び印紙など換金性の高い社内物品を担当者が必要以上に購入し、金券屋などで換金するといった手口で行われます。特に、新幹線の回数券などを使用する頻度の高い会社は要注意です。
@購入と管理を分担する 。経理部に回数券等の購入、管理を全て任せず、経理部は購入を、総務部がその管理を担当するというように役割を分担させます。同一人が回数券等を購入し、管理するといったことがないようにしましょう。
A「受払簿」を作成して管理する。回数券の管理にあたっては、回数券等の購入枚数や使用目的などをチェックするために「受払簿」を作成するべきです。
Bストック量の上限を決める。回数券等をあまり使用しない会社においては、Aで述べた「受払簿」の作成は、事務処理量を増やすばかりで効率的でない場合があります。そこで、回数券等の使用頻度に見合ったストックの上限を決めておくという方法が考えられます。また、高額の回数券等が必要な場合には、特別に申請して購入するように決めておきましょう。
2.営業所などの経理担当者に関する銀行預金の管理
チェックシステムの弱い営業所や支店が預金口座を開設している場合においては、その口座から使い込みが行われるケースがよくあります。営業所の経理担当者が預金の使い込みを行い、営業所の帳簿残高と銀行の残高をあわせるために、銀行からの「残高証明書」を改ざんし、そのコピーを本店に送っていたので使い込みが分からなかったという事例があります。
@営業所ごとに預金口座を開設する必要があるかどうかを検討。まず、営業所や支店ごとに預金口座を開設する必要があるかどうか、再検討します。営業所や支店では最低限必要な現金、預金しか保有しないようにするのも使い込みを防ぐ一つの手段です。例えば、各営業所の売上金額はその日の内に本店に送金するようにし、仕入金額の支払いは本社で一括して行うという体制が考えられます。
A銀行の「残高証明書」は原本を入手する。銀行からの「残高証明書」はコピーではなく原本を本社が直接入手するようにします。
B営業所に「預金通帳を持たせない」。各営業所に売上金額を回収するだけの機能しか与えていないならば、「預金通帳」を本社で一括管理する方法もあります。その場合には、各営業所には銀行の夜間金庫等をつかって現金を預け入れさせます。
3.個人的な飲食代 の交際費、請求の水増し、カラ出張により交通費を使い込む
交際費や交通費のような小口現金からの支出は金額が小額であり、件数も多いので、不正は防止しにくいといえます。しかし、交際費をまったく認めないなど、あまりにも厳格な決まりを作ってしまうと、たとえば、取引先との関係に支障をきたすといった影響がでてしまう可能性があります。次のような対策を組み合わせて、会社にあった仕組みをつくるべきでしょう。
@交際費・交通費の支出は必ず事前に申請させる
A交際費の予算を役職別、個人別に設定する
B交際費・交通費の仮払いの精算を短期間で行わせる
4.売掛金の回収担当者による不正
売掛金の回収担当者がある得意先からの売掛金の回収代金を着服し、その穴埋めのために、他の得意先からの回収代金を充当していくという手口で使い込みが行われるので、仮に経理担当者が、「少し売掛金の回収が遅れているかな」と思ったとしても、遅れはしても表面上は売掛金が回収されてくるので、不正が発見しにくいといえます。
@現金による回収を避ける。売掛金の回収は、現金で直接回収することはできるだけ避け、銀行振込等で行うようにする。
A領収証は連番を打って管理する。
領収証の最も簡単な管理は、あらかじめ領収証に連番を打っておくことです。領収証を担当者に渡す際は、何番から何番までの領収証用紙を渡したのかを記録しておきます。回収担当者には番号順に領収証を使わせ、書き損じたら斜線を引き台紙から切り離さず領収証控えと共にホチキス止めをさせるようにします。使い終わった領収証用紙はすべて経理部が回収します。領収証控えに支払印を押してもらうようにすれば、さらに不正防止の効果が上がるでしょう。
B「残高確認状」を送付する。
顧客に対して売掛金の「残高確認状」を発行して残高確認を行います。売掛金の回収担当者が使い込みを行っていた場合には、「残高確認状」の金額と会社の売掛金帳簿残高の金額に差異が生じることになります。「残高確認状」を発送する際の注意点は、経理担当者が顧客に対して直接発送し、直接回収することです。売掛金の回収担当者に「残高確認状」の発送・回収を依頼してしまうと、残高を改ざんする余地を与えてしまうことになります。
5.飲食店の経営、従業員による売上金の使い込み
特に現金商売を行っているお店では、売上金の使い込みに常に注意を払うべきでしょう。売上金を使い込む不正はレジを通さない現金売り上げがある場合に多く行われます。レジを通さない現金売り上げには、以下のような事例が考えられます。
・閉店間際のレジ締め後に売り上げを計上する
・飲食店等で、客の注文を伝票に記載するが、その伝票のレジ打ちをしない
従業員による売上金の使い込みの対策
@伝票は連番で管理する。伝票を連番どおりに使うようにしておけば、伝票とレジのジャーナルを突合することができ、使い込みの有無が分かります。書き損じの伝票も保管させるようにしましょう。
Aレジ締めは2人で行う。1人の従業員にレジ締めを任せておくのではなく2人で行えば、相互牽制により、レジ締め後の売上の使い込みもなくなります。
B商品在庫を把握する。商品の在庫をなるべく頻繁に把握することで、商品の出庫と売上金の整合性を確かめることができます。なお、多くの商品を扱っている店舗では、商品の出荷数の多い売れ筋商品の在庫を把握すればよいでしょう。
※ 売上と仕入の両落しも・・・ 悪質になると、売上と仕入を両方とも記録しない売上と仕入の両落しといわれる不正が行われます。すなわち、従業員自らが商品を仕入れ、その商品を売ることによってその儲け分を着服するという方法です。もし、見慣れない業者が出入りしていたら要注意です。
6.仕入れ業者と共謀して行う「仕入れの水増し」という不正
仕入れの水増しの手口は、たとえば仕入れ担当者が商品を10個仕入れるという納品書を仕入れ業者に作成してもらい、実際には9個しか納品されないようにします。そして、経理担当者には商品10個分の請求書が回り、10個分の仕入れ代金が仕入業者に支払われます。その後、仕入業者から1個分の代金の一部をリベートとして仕入担当者が手に入れるのです。
対策 経理担当者を含めた部外者が、抜き打ち的に時々納品現場に立ち会うことにします。また、売上高との対応を見ながら仕入量及び在庫量が適切かどうかの分析を行うことも有効でしょう。
7.倉庫管理者による「商品横流し」
在庫商品を多く保有していて、しかも内部管理の弱い会社においては、倉庫管理者による商品の横流しが行われることがあります。対策として以下があげられます。
@適正な棚卸を実施する。商品の横流しを行えば、棚卸を行ったときに数量不足となります。この数量不足について、徹底した原因究明を行うようにします。
A棚卸時などは経理部が立会う。商品の納品時及び棚卸時に経理部が立ち会うようにし、倉庫管理者が1人で商品を扱わないようにする。
B不良品を管理する。倉庫管理者が不良品として報告してきた商品について、本当に不良品かどうかを経理部が直接チェックします。
8.仕入先からのリベートを使い込む不正
販売目標達成に協力したなどを理由とした仕入先からのリベートを会社に報告しないで従業員が着服する不正のことですが、仕入先からのリベートは、仕入先と仕入担当者との間でその有無や額が決まることが多いので会社としては把握しにくいものです。以下のような対策を講じることが必要です。
@リベートの有無をまずチェックする。たとえば仕入先が現在どんな営業キャンペーンを実施しているかを会社が直接仕入先に確認するようにすれば、リベートの有無や会社に入るべきリベート額が掴めるようになります。
A仕入先と「販売報奨金規約」などを交わす。仕入先にリベート制度がある場合は、その仕入先と「販売報奨金規約」や「リベートに関する覚書」などを交わして書面でリベート額を明確にしておけば、担当者による使い込みの危険性は少なくなるでしょう。
9.多店舗展開をしている会社の不正への対応
多店舗展開をしているような会社では、アルバイトやパートが実在しているかどうか把握しづらい面があります。そこに目を付け、アルバイトやパートを雇っていることにして、従業員がその架空の給与を横領するといった不正があります。
次のような店舗では、不正発生の可能性が高いと思われますので、特別の注意が必要です。
・アルバイトやパートがすぐに辞めてしまうような店舗
・アルバイトやパートの給料を銀行振込みではなく、現金で支払う店舗
・特定のアルバイトやパートに対して、人件費の支払が途切れたり、再開したりする店舗
・源泉所得税や社会保険料の計算を行っていないアルバイトやパートがいる店舗
対策 アルバイトやパートの人数をチェックするために抜き打ち的に店舗を訪問し、実際にアルバイトやパートの人数を確認することが必要です。そうすることによって、不正発見のみならず心理的に不正を牽制することができます。