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助川公認会計士事務所 経営管理 04/10/28
原価管理と業績評価

(1)原価計算と原価管理

大蔵省企業会計審議会中間報告(昭和37年11月)の原価計算基準によると、原価計算の目的のひとつとして原価計算は「経営管理者の各階層に対して原価管理に必要な原価資料を提供すること」とし「ここに原価管理とは原価の標準を設定してこれを指示し、原価の実際の発生学を計算記録し、これを標準と比較してその差異の原因を分析し、これに関する資料を経営管理者に報告し、原価能率を増進する措置を講ずることをいう」と規定している。

また原価計算は、予算の編成ならびに予算統制のためにも必要な原価資料を提供する。予算は、執行活動に関する総合的な期間計画であるが、予算編成においては例えば、製品組み合わせの決定、部品を自製するか外注するかの決定など、個々の選択的事項に関する意思決定は原価計算の数値に基づいてあらかじめ検討しておくことが必要になる。

原価管理は期間の総合計画である予算をさらに現場レベルにブレークダウンし、具体的な物的基準による諸管理と密着したものである。原価管理は予算統制とともに管理会計を支えるところの二大支柱である。したがってそれは業績評価においても、標準原価、予定原価など原価目標に対する実績の対比、評価として主要な経営管理の一端を担うものとして位置づけられるのである。

(2)原価計算制度

原価管理の効果を上げ、原価による業績評価を適切に行うためには、まずその前提として適切な原価計算の仕組みを制度ないしシステムとして持たなければならない。原価計算制度は、財務諸表の作成、原価管理、予算統制等の異なる目的が、重点の相違はあるが、ほぼ同時に達成されるべき一定の計算秩序である。

このような原価計算制度は財務会計システムの外において随時、断続的に行われる原価の統計的、技術的計算ないし、調査ではなくて、財務会計システムと有機的に結びついて常時継続的に行われる計算体系である。

原価計算制度において計算される原価の種類およびこれと財務会計システムとの結びつきは単一ではないが、原価計算制度は大別して実際原価計算と標準原価計算に区分することができる。

実際原価計算制度は、製品の実際原価を計算し、これを財務会計の主要帳簿に組み入れ、製品原価の計算と財務会計とが実際原価と有機的に結合する原価計算制度である。原価管理上必要な場合は、実際原価計算制度においても必要な原価の標準を勘定組織の枠外において設定し、これと実際との差異を分析し、報告することがある。このような原価管理の方法は、特に中堅、中小企業にとり簡便であるところからかなり広く用いられるものである。

標準原価計算制度は、製品の標準原価を計算し、これを財務会計の主要帳簿に組み入れ、製品原価の計算と財務会計とが標準原価をもって有機的に結合する原価計算制度である。この標準原価計算制度は必要な計算団塊において実際原価を計算し、これを標準との差異を分析し、報告する計算体系である。標準原価計算制度は会計帳簿の上に標準原価とともに実際原価が記録され、かつ原価差異も同時に会計帳簿の上に明らかになるという点に特徴を持つ。

原価計算の仕組みとしては、上述のような実際原価計算、標準原価計算に対し、これを別な角度から見て、製品の原価を計算する場合に、@材料費など変動費の他に労務費、経費などの加工費、製造間接費−これはだいだいにおいて固定費であることが多い−を加えたところの全部原価計算と、A材料費などの変動費のみを製品原価とし、固定費はすべて期間原価とするところの直接原価計算の2つに分けることがある。

直接原価計算は、損益分岐点による利益計画と直接のつながりがあり、原価管理に資すると同時に、利益管理に直結し、利益管理に対する原価管理の貢献度がダイレクトに評価されるところに特徴がある。しかし今日の財務会計では、製品など棚卸資産の評価は製造間接費などを含めたところの売却原価によって計算しなければならないので、直接原価計算制度をとる場合は、期末に製造間接費等の固定費を原価差額として、売上品原価と棚卸資産に配賦し、調整するという会計手続が必要とされる。

どのような原価計算制度を採用するかはそれぞれの企業の条件に応じて決定しなければならないものである。

(3)実際原価の計算

実際原価の計算においては、製品原価は原則としてその実際発生額をまず費目別に計算し、次いで原価部門別に計算し、最後に製品別に集計する。販売費及び一般管理費は原則として一定期間における実際発生額を費目別に計算する。

@原価の費目別計算

原価の費目別計算とは一定期間における原価要素を費目別に分類し測定する手続きをいい、財務会計における費用計算であると同時に原価計算における第1次の計算段階である。

費目別計算においては原価要素を原則として形態別分類を基礎とし、これを直接費と間接費に大別し、さらに必要に応じて機能的分類を加味して分類する。

間接経費は原則として形態別に分類するが、必要に応じて修繕費(修繕部門の人件費、諸経費などの会計)、運搬費(運搬部門の人件費、燃油費、諸経費などの会計)などとして複合費を設定することができる。

また費目別計算においては、月次など一定期間における原価要素の発生を測定するにあたり予定価格を用いることがある。例えば直接賃金の計算における予定賃率である。直接賃金の計算は、具体的には直接作業時間または作業量に1時間あたりあるいは1人あたりの賃率を乗じて計算するので、これを迅速に行うためにはあらかじめ職場ごともしくは作業区分ごとの予定賃率を定めておくことが必要である。

このほか減価償却費や退職給与引当金繰入などについては、これを月割りとして予定額を見積もることも必要になる。このような予定価格などを適用する場合には、これをその適用させる期間の実際価格にできるだけ近似させ、価格差異をなるべく僅少にするように定めることが必要である。

A原価の部門別計算

原価の部門別計算とは、費目別計算において把握された原価要素を原価部門別に分類集計する手続きをいい、原価計算における第2次の計算段階である。この部門別計算は原価管理の上では各部門の原価責任を明確にするという特徴を持つ。

ア 原価部門の設定

原価部門とは原価の発生を機能別、責任区分別に管理するとともに、製品原価の計算を明確にするために原価要素を分類集計する計算組織上の区分をいい、これを諸製造部門と諸補助部門とに分ける。製造及び補助の諸部門は、次の基準により、かつ経営の特質に応じて適当にこれを区分設定する。

(ア)製造部門

製造部門とは直接製造作業の行われる部門をいい、具体的には工場、作業場などである。

(イ)補助部門

補助部門とは製造部門に対して補助的関係にある部門をいい、これを補助経営部門と工場管理部門とに分ける。

補助経営部門とはその事業の目的とする製品の生産に直接関与しないで、自己の製品または用役を製造部門に提供する諸部門をいい、例えば動力部、修繕部、運搬部、工具製作部、検査部などがそれである。

工場管理部門とは管理的機能を行う部門をいい、例えば資材部、労務部、企画部、試験研究部、工場業務部などがそれである。

部門個別費と部門共通費 原価要素はこれを原価部門に分類集計するにあたり、当該部門において発生したことが直接認識されるかどうかによって、部門個別費と部門共通費に分類する。

部門個別費は原価部門における発生額を直接に当該部門に賦課し、部門共通費は適当な配賦基準によって関係部門に配賦する。

部門別計算の手続き 原価要素の全部または一部は、まずこれを各製造部門および補助部門に賦課または配賦する。この場合部門に集計する原価要素の範囲は、製品原価の正確な計算および原価管理の必要によってこれを定める。また各部門に集計された原価要素は、必要ある場合にはこれを変動費と固定費または管理可能費と管理不能費に区分する。

次いで補助部門は適当な配賦基準によってこれを各製造部門に配賦し、製造部門費を計算する。

B原価の製品別計算

原価の製品別計算とは、原価要素を一定の製品単位に集計し、単位製品の製造原価を算定する手続をいい、原価計算における第3次の計算段階である。

製品別計算は経営における生産形態の種類に応じて、単純総合原価計算、等級別総合原価計算、組別総合原価計算および個別原価計算に区分する。

ア 単純総合原価計算

単純総合原価計算は同種製品を反復連続的に生産する生産形態に適用する。単純総合原価計算にあっては、一原価計算期間に発生したすべての原価要素を集計して当期製造費用を求め、これに期首仕掛品原価を加え、この合計額を完成品と期末仕掛品に分割計算することにより、完成品総合原価を計算し、これを製品単位に均分して単位原価とする。

イ 等級別総合原価計算

等級別総合原価計算は同一工場において同種製品を連続生産するが、その製品を形状、サイズ、品質等によって等級に区分する場合に適用する。

等級別総合原価計算にあっては、各等級製品について適当な等価係数を定め、一期間における完成品の総合原価または一期間の製造費用を等価係数に基づき各等級製品に按分してその製品原価を計算する。

等価係数については各等級製品の重量、面積、純分度等の物的基準の他、各等級製品の標準材料消費量、標準加工時間、およびこれらを金額換算したところの標準原価ないし標準直接原価などに基づいて決定する。

ウ 組別総合原価計算

組別総合原価計算は異種製品を組別に連続生産する生産形態に適用する。

組別総合計算にあっては、一期間の製造費用を組直接費と組間接費、または原材料費と加工費に分け、個別原価計算に準じ、組直接費または原材料費は各組の製品に賦課し、組間接費または加工費は、適当な配賦基準により各組に配賦する。次いで一期間における組別の製造費用と期首仕掛品原価とを当期における組別の完成品と期末仕掛品に分類することにより、当期における組別の完成品総合原価を計算し、これを製品単位に均分して単位原価を計算する。

エ 個別原価計算

個別原価計算は種類を異にする製品を個別的に生産する生産形態に適用する。

個別原価計算にあっては、特定製造指図書について個別的に直接費及び間接費を集計し、製造原価はこれを当該指図書に含まれる製品の生産完了時に算定する。

経営の目的とする製品の生産に際してのみならず、自家用の建物、機械、工具等の製作または修繕、試験研究、試作などに際してもこれを特定指図書を発行して行う場合は、個別原価計算の方法によってその原価を算定する。

個別原価計算における直接費は発生の都度または定期的に整理分類して、これを当該指図書に賦課する。また間接費は、原則として部門間接費として予定配賦率をもって各指図書に配賦する。

個別原価計算において、労働が機械作業と密接に結合して総合的な作業となり、そのために製品に賦課すべき直接労務費と製造間接費の分離が困難な場合には、加工費について部門別計算を行い、部門加工費を各指図書に配賦することができる。

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