助川公認会計士事務所 | 経営管理 | 04/10/28 |
社員のマイカーを業務に使用する際の注意事項 |
業務で自動車を使うときは、会社の自動車を使うのが原則です。しかし、会社の自動車台数が不足していても、経営環境が厳しく、経費の節減が求められる現状では、社員が持っているマイカーを会社の業務で使用する方法が考えられます。
社員のマイカーを業務で使用する際の注意事項等について解説します。
社員の私有車の業務使用については次のようなメリット・デメリットが考えられます。
メリット |
・自動車購入費や維持費等が節減できる。 ・使う社員は車のクセを知っているため慣れており、社有車に比べ安全が確保される。 ・社員個人が保有するため会社にとって管理の手間が省ける。 ・社員の私有車のため会社がこまごまと指示しなくても車の手入れが良くなる。 ・社員には借り上げに伴う使用料等が支給されるため、個人の負担が軽減される。 |
デメリット |
・きちんと管理しないと業務使用と私用の区別が曖昧になりやすい。 ・業務使用にふさわしくない車で取引先に出かけ会社のイメージを低下させる。 ・交通事故を起こした場合、会社の責任範囲が広くなることが考えられる。 ・私用とともに業務用でも使うため車の損耗が激しくなり、社員にとって維持費用等が増える。 |
こうしたメリット・デメリットをよく理解した上で、社員私有車の業務利用における管理を行う必要があります。
社員私有車の業務使用の際の管理の基本
社員の私有車を業務で使用する際は、次の点に注意して下さい。
注意点1:使用規定を作る
業務使用と私用を明確にし不公平にならないようにするために、社員の私有車の使用についての規定(借上車両規定)等を作成しておきましょう。この規程に盛り込む主な事項は、次のとおりです。
注意点2:私有車の使用については許可制にする
私有車の使用については、希望すれば誰にでも認めるというのではなく、希望する社員からの申請について審査した上で、一定の条件を満たした者について認めるようにします。
許可するかどうかについては、例えば次のような事項について審査します。
注意点3:自動車保険(任意)加入を条件とする
交通事故をおこした場合、自動車保険(任意)に加入していなかった、保険金額が少なかったなどということがないように、一定額以上の自動車保険に加入していることを許可の条件の一つにします。自動車保険については、使用規定で次のように具体的に金額を示します。
【例】
対人賠償…………無制限
対物賠償…………〇〇〇万円以上
搭乗者傷害………〇〇〇万円以上
注意点4:私有車運転報告書などを提出させきちんと管理する
私有車運転報告書などを毎月(または毎週)提出させるなどしてきちんと管理します。なお、業務使用に伴う費用の支払いについては、基準をあらかじめ決めておき(例えば「毎月一定の私有車使用手当を支給する」あるいは「毎月ガソリン代など実費を支払う(本人からの申請)」など)それに基づいて行います。
注意点5:安全運転を徹底させる
私有車の使用者に対しても例えば「交通法規・運転マナーを守って安全運転に努める」「飲酒運転は絶対しない」「自動車の整備点検を怠らない」など周知徹底させます。
私有車の借上料は基本的には雑所得?
会社から借上料を受け取っていた場合、借上料は社員にとって資産の賃貸による対価であることから、賃貸料として相当と認められるものについては、基本的には社員の雑所得として取り扱うことになります。
また、この社員の私有車の借上げに関連して、私有車の駐車場代を会社が負担していた場合、この負担金は原則として社員に対する給与として課税されます。
国税庁より、「私有車制度に基づき使用人に支払われる対価の取扱い」(平成8年7月5日)について、下記のとおり明らかにされています |
(1)使用者か使用人に支払う当該使用人の所有する自家用車(私有車)の借上料については、各使用人における当該借上料金の算定法等が区々となっていることから、当該借上料の妥当性などについては個別判断せざるを得ないものと考えられます。
ただし、当該借上料は、使用人にとって資産の賃貸による対価であることから、賃貸料として相当と認められるものについては、使用人の雑所得の総収入金額に算入すべきことになります。
(2)私有車の駐車場代については、私有車を使用者に賃貸するか否かにかかわらず所有者である使用人自身が負担すべきものであることから、当該費用を使用者が負担している場合には、使用者業務へのいかんにかかわらず給与所得として課税すべきことになりました。