助川公認会計士事務所 | 経営管理 | 09/02/15 |
売掛債権の回収 |
◇不況型倒産が7割を超えている
販売不振や売掛金回収難、不良債権の累積など不況型倒産が依然として多いようです。
年末にかけて売掛債権の回収は資金繰り、ひいては企業の命運を左右するほど重要な事項ですので、回収漏れのないようにすべきです。
◇売掛債権回収のポイント
売掛債権の回収に向けて、次の事項をチェックしましょう。
−チェック1−値引き等については営業担当者に任せっきりにしていないか
型くずれ・色違いあるいは納期遅れ等による値引きなど取引上のトラブルが原因の値引き・返品等の処理については、営業担当者に任せっきりにしてはダメです。というのも、こうした取引上のトラブルが原因で支払いをストップされることがあるからです。
したがって、必ずその値引き交渉等の過程をきちんと記録に残し、社長等に逐次報告するようにさせ、必要があれば社長が先頭に立って解決に動き迅速に処理すべきです。なお、値引き発生の日とは、最終的に値引き金額が確定した日です。
−チェック2−請求漏れはないか
請求漏れをなくすために、さらに次の点をチェックします。
(1)納品書の発行し忘れがないようにしているか
請求書を売上台帳に基づいて発行する、あるいは納品書と請求書が複写式になっており、納品書を作成すると同時に請求書も作成するというところが多いようです。
したがって、まず商品等を納品したら必ず納品書を発行するようにします。さらに経理担当者は、出庫伝票をもとに納品書及び請求書が正しく発行されているかを常に確認します。
(2)売上台帳等に取引上の取り決め事項等を記載しているか
請求漏れをなくすには、取引先との間で代金請求に関連して取り決めた内容を売上台帳等に記載しておくことも重要です。例えば、商品等の発送料について「先方持ち」と取り決めており、商品等の代金請求の際に当社で立て替えた発送料も請求するようにしている場合などは、発送料を請求し忘れることがあるようです。売上台帳等には「発送料先方持ち」又は「発送料当方持ち」などど、取り決めた内容を記載しておき請求し忘れをなくすようにしましょう。
−チェック3−取引契約で決められている締め日と支払日のとおりに行われているか
売掛金管理においては実際の締め日と支払日が当初の取引契約の締め日と支払日どおり行われているか、また回収内容はどうかなどを確認することが重要です。そして得意先の支払いに次のような変化が見られたときは何らかの対策を講じるべきです。
<得意先の注意すべき変化>
@支払日(入金日)が当初の契約より遅れてきている
A支払金額が請求金額ではなく内金になってきた
B支払いが現金から手形に変わった(あるいは現金と手形が半々だったのが手形の割合が増えてきた)
C手形のサイトが伸びてきた など
・ワンポイント知識 回収基準で売掛金を管理する 得意先を当月締め・翌月回収のグループ、当月締め・翌々月回収のグループというように回収基準ごとにまとめて整理し、一覧表を作成して売掛金を管理するようにします。こうすれば、売掛金回収を早める際の検討資料としてもそのまま使えます。 |
−チェック4−滞っている売掛債権はその原因を分析して対策を立てているか
債権については下記のとおりそれぞれ時効(消滅時効)があり、永久に行使できるわけではありません。滞ったまま一定期間請求せずに放置しておくと、その売掛債権は消滅してしまいます。時効を中断する簡単な方法として、売掛金の一部、例えば100円でも集金して相手に領収書を手渡し、債務を確認させるのです。
売掛債権が滞る原因として、主に次の二つが考えられます。その原因を速やかに解決して回収につなげるようにしましょう。
@取引先の経営状態が悪化している
この場合は速やかに債権保全策を講じなければなりません。
Aクレームにより売れるまで回収できない
クレームが原因の場合当社にも責任があるため、話し合って早めに解決することが重要です。
なお、いろいろな段階を踏んでも回収できないケースでは、内容証明郵便の送付や「少額訴訟制度」(30万円以下の金銭支払い請求事件を簡易迅速に解決する)を検討します。
◇主な債権の時効
製造業、卸売業、小売業の売掛代金 | 2年 |
建築工事などの請負代金 | 3年 |
ホテルの宿泊料、バー・キャバレーの飲食費 貨物などの運送費 |
1年 |
ピアノ、そろばん塾などの謝礼金 理髪業、洋服屋、靴屋などの手間賃 |
2年 |
地代、家賃、営業上の貸付金、立替金 退職金の請求権 |
5年 |
レンタル、リースなどの損料 | 1年 |
個人間の貸借、確定裁判に基づく請求権 | 10年 |
給料などの請求権 | 2年 |
*時効の期間の計算は債権確定の日の翌日より起算します。