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助川公認会計士事務所 BTkigyou.jpg (1685 バイト) 企業経営・マネジメント 04/10/28
部門別業績評価の方法

(1)利益理念

営業部門などいわゆる利益管理部門の期間損益については種々の利益概念がある。例えば、限界利益、管理可能利益、部門利益、純利益などである。

限界利益とは、売上高から生産販売に関する変動費を差し引いた金額、

管理可能利益とは、限界利益からその部門の管理可能固定費(例えばその部門におけるOA化推進費、従業員訓練費、販売広告費など)を差し引いた金額、

部門利益とは、管理可能利益から当該部門に帰属するその他の固定費(例えば、管理者の給与、設備の減価償却費、固定資産税など)を差し引いた金額、また純利益は当該部門利益から本社費など共通費配賦額を差し引いた金額をいう。このうち3番目に挙げた部門利益は、当該部門の総合業績を示すものとして別名貢献利益ともいわれるものである。

事業部制においても、また独立採算制においても、本社費などの共通費を配賦すべきかどうかがよく問題となる。4番目の純利益は、本社費などの共通費が当該部門以外の場所における意思決定と管理によって生ずるので、この配賦によって当該部門の貢献度が不明確になるおそれがあるからである。

業績評価システム導入 事業部制ないし部門独立採算制を導入した当初はそのかわりやすさと各部門の利益貢献度をできるだけ明確にするという点で、本社費は配賦しないで、業績基準として部門利益、貢献利益にしぼり込むことが各部門の理解と協力を得るためにベターと考えられる。

そして、事業部制ないし独立採算制が定着した時点で、各管理者に本社部門の役割とそのコストを認識させる意味から、各部門に本社費を配賦することが実践的である。事業部制ないし独立採算制の当初から本社費を各部門に割り掛けると、それによって当初から純利益が赤字になる部門では、往々にしてその部門の赤字責任を本社に転嫁し、当該部門をして業績向上意欲をはなはだしく失墜せしめることが少なくないのである。

(2)共通費、金利等の配賦

各部門に対して用役を提供する補助部門(例えばシステム部、事務センターなど)や本社は、これを利益責任単位ではなく原価責任単位とするのがふつうである。したがって、これらの部門に発生する費用は共通費として、これを各部門に割り掛ける場合には、一定の基準に基づいて用役を受けた各部門に配賦することになる。その配賦基準には次のようなものがある。

配賦基準

@共通費を各部門が受けた用役の程度に応じて配賦する方法

これは共通費と各部門活動との間に因果関係を認め、各部門の活動を示す配賦基準を選んで共通費を配賦する方法である。例えば事務センター費を各部の取引件数を基準として配賦する。本社購買部費を各部門の注文件数によって配賦するなどである。この場合の配賦基準は、予定配賦率または予定配賦額によって行われる。

A共通費を各部門における規模の程度に応じて配賦する方法

これは各部門のおける用役消費量とは関係なく、補助部門や本社の固定費を各部門の投下資本および固定的従業員などを配賦基準として配賦する方法である。

以上、@、Aを通じて共通費を配賦する場合には、各部門における生産性向上の意欲が阻害されないような公平妥当な配賦基準によるべきであり、場合によれば適切な政策的配慮を加えて、例えば、人件費節減などを全社的に命題とする場合には、各部門の人員比をあえて配賦基準にするなどの方法も有効である。しかしそのような基準が見いだされないものについては、これを本社負担(例えば学校や地方公共団体に対する指定寄付金など)とすることも必要である。

支払利息や支払割引料などの金利を各部門に割り掛ける場合には、

資本コスト率、あるいは実際の借入金利率などに基づいて適切な社内金利を算定し、これを各部門に配賦して業績評価に反映させることが必要である。金利は本社費などの共通費とは異なり、むしろ各事業部、各部門にとって必要なコストとして各部門の貢献利益にこれを反映することが望ましいのである。

(例)ある会社では、事業部ないし利益管理部門の設備投資に対しては、株式資本に対する所要配当等から割り出される自己資本利子率と、設備に要した長期借入金利子率との平均利率をもってその設備投資に対する金利を計算し、また売掛債権や在庫については、その残高に対して短期借入金利子率をもって金利を計算している。

(例)ある会社では売掛債権や在庫については正常な回収期間、在庫期間を超える分についてペナルティーとしての金利を計算するなどしており、金利の割掛けはかなり政策的かつ弾力的である。

(3)内部振替価格

企業内の各部門間において内部で製造した部品、半製品などを移送する場合には妥当な内部振替価格を決定し、これを用いることも必要である。内部振替価格の基準としては次の2つのいずれかが採用される。

@市価基準

内部振替価格は競争市場における同種製品の価格に基づいて決定される。このように市価基準に基づく内部振替価格政策は、一企業に属する各事業部あるいは営業部など各利益管理部門あたかもそれぞれが独立企業であるかのような地位におく。

A原価基準

内部振替価格は企業の自己の原価によって決定される。この際用いられる原価は棚卸原価のみであるか、あるいはこれに若干の管理費を加えるなどして決定されるが、場合によっては原価に希望利益を加算したところの「原価プラス利益基準」によることもある。

事業部制では一般に市価基準が原則であるが、振替製品のタイプによっては原価基準、原価プラス利益基準が選択される場合も少なくない。

市価基準あるいは原価プラス利益基準に基づいて製品等が事業部門ないし部門間に移送される場合、そこに認識される売買差益はいうまでもなく内部利益である。技術系の企業では往々にして製造部門の力が販売部門よりも強いことがある。その場合に製造部門では、生産した製品を販売部門へ振り替えることによって製造部門としての利益業績が評価されることになるが、当該製品の売れ行きが活発でないような場合には、製造部門の利益はあくまでも内部利益であり、それが完全に売却されるまでは、企業の真の利益とはなりえないことに注意しなければならない。したがって、各部門の業績のみに目をうばわれていると、時として企業全体の業績を見失う場合もなしとしないのである。

ある中堅企業の場合、製造部門と販売部門との責任を明確にするために、振替価格政策から一歩踏み出して販売部門を独立会社として分離せしめた例もある。その場合の価格は製造会社の原価公開に基づいて両社間でネゴシュートすることにより決定することとされた。内部振替価格は慎重・適切に、かつ権威をもって合理的に定められないと、どうしても部門間の責任があいまいになり、言い逃れの余地が多くなるので、場合によっては上述のような企業分割もひとつの解決の方途であったといえよう。

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