助川公認会計士事務所 | 資金繰り | 04/10/28 |
キャッシュフロー重視の経営が必要とされている |
◇利益がでていても倒産!?
着実に毎期利益を上げている企業が、手形を決済できずに倒産するということがあります。いわゆる黒字倒産です。
損益計算書では、利益が出ていることを示していても、それが現金預金として残っているかどうかまでは表示していません。つまり、損益計算書上の利益と実際の資金とは一致しないのです。このことを十分理解しておかないと、よく言われる「勘定合って銭足らず」の状態に時として陥り、最悪の場合、黒字倒産に到るのです。
◇売上げと利益だけでなく
キャッシュフローも重視右肩上がりの経済成長時代では、売上げと利益を上げてさえいれば、キャッシュ(現金預金)はあとからついてきて、企業は存続・発展できました。たとえ損失を出したとしても、土地や株式の含み益が増加し、それを担保に金融機関から融資を受けられたのです。
しかし現在は、そうとは限らなくなってきています。つまり借金に安易に頼る経営はできなくなってきているため、利益に加えて、キャッシュフローが重視されてきているのです。
◇「キャッシュフロー」とは?
「キャッシュフロー」とは、現金預金(キャッシュ)の流れ(フロー)で、事業活動をとおして、一定期間内に生み出す現金及び現金と同等のものの増減のことをいいます。つまり、キャッシュの流れをきちんとつかんで、それが会社として効率的に使われ、どれだけキャッシュを有効に生み出すことができたかを分析して経営に生かそうというものです。
キャッシュフローにおいて、特に企業内部からの資金調達については、次のような算式で計算されます。
キャッシュフロー=税引後利益(又は留保利益)+減価償却費なお、企業外部からの資金調達として、株主からの調達等が考えられます。
一方、資金繰りとは、簡単にいうと企業における資金のやりくりのことで、キャッシュフローは、この資金繰りの上でも非常に重要な事項です。
◇キャッシュフロー経営を行う際のポイント
キャッシュフロー重視の経営を行う際の主なポイントは次のとおりです。
(1)月次の会計データを作成し経営に生かす
月次で締めて(月次決算)、会計データを作成することが前提です。それがないと、自社のキャッシュフローが正確に把握できません。
(2)売上げや利益だけでなく回収・集金ベースに移行する
これまでは売上げや利益によって企業は評価されてきましたが、これからはそれに加えて、一体どれだけお金を有効に生み出すことができるのかによって、銀行等から評価されることになります。したがって企業もどれだけ現金を稼ぐかに重点をおく必要があります。
例えば、100万円を売り上げて利益も見込めるとしても、その100万円が実際に回収され現金化されない限り絵に描いたモチなのです。
(3)キャッシュフロー経営の着眼点
キャッシュフロー経営を行う際の主な着眼点には、次のような事項があります。
@売上収支、営業収支、経常収支等が金額と比率で分かるようにし、月次と累計で常に把握・比較できるようにする。というのも営業活動におけるキャッシュフローが基本であるため。
A税金(法人税や法人事業税等)や役員賞与、配当が、企業が営業活動で生み出した自己資金の範囲内でまかなえるようにする。税金や株主配当を借入金で支払っていてはダメ。
B設備投資などの投資活動が営業活動によるキャッシュフローの範囲内でまかなえるようにする。投資の大部分を毎回借入金で行わなければならないということは、過去の投資が思ったほどキャッシュフローを生み出していない可能性がある。
C利益ベースで設備投資するのではなく、キャッシュフローをベースに行うようにする。
Dキャッシュを増やすときは借入金に頼らないようにする。財務活動として、増資による株主からの新規調達などがある。
◇資金の動きを把握するには?
ところで、この資金の動きをつかむにはどうしたらいいのでしょうか。先程も述べましたが、損益計算書では利益が出ていることが分かっても資金の動きはつかめません。つまり自社が稼いだお金(資金)がどこに流れているのか、どうして手元に残っていないのかといったことについては分からないのです。
これにはTKCの「
月例経営分析表」の「資金移動図表」が参考になります。期首から当月までに資金がどのように移動したか図表で示したもので、損益計算書では分からない資金の移動を明確に知ることができます。なお、国際会計基準の導入により、平成12年3月期決算以後、上場企業に「キャッシュフロー計算書」の作成・報告が義務づけられます。キャッシュフロー重視の経営、ひいては資金繰りのために活用してみましょう。