助川公認会計士事務所 | 企業経営・マネジメント | 04/05/29 |
◇なぜ経営データを迅速に把握しなければならないのか
「迅速に経営データを把握しなくてもこれまではやってこられたのだから・・・」と考えている企業もあるようです。
しかし経営環境が厳しい中、今までどおりでよいのでしょうか。
なぜ経営データを迅速に入手しなければならないのか。その理由として、次のようなことが考えられます。
1.企業も生き物である
企業は、毎日営業活動をしており、生きています。生きているということは、時々刻々変化する健康状態を見るため、体温や血圧を測ったりして検査をします。同様に企業経営においても、短い期間ごとに経営データを逐次入手し、自社は今どういう状態にあるのか常に把握しておく必要があります。そして、問題点を早期に発見し、素早く対処しなければ、この厳しい時代を乗り切っていけません。
2.経営環境も激変している
企業を取り巻く経営環境は、ご存じのとおり激しく変化しています。業界再編や金融ビックバンなどが中小企業を直撃しており、ただ仕事をこなしていればいいという時代ではありません。厳しい経営環境に素早く対処できない企業は、淘汰される運命にあります。経営データすら把握せずに経営していては、将来存続できる保証はないのです。
3.金融機関も経営情報を要求している
特に、金融機関は、不良債権の多い企業に対して毎月の試算表提出を要請しているようです。というのも、経営環境は激変し企業自体も時々刻々と変化しているので、試算表を6ヶ月に1回程度見ているようでは、企業の経営状態を把握できないからです。これからは各企業が積極的に経営情報を開示し、常に金融機関に正確に自社の状況を把握してもらうことが求められます。
◇社長が把握すべき経営情報は?まず経営計画を立て目標(予算)を持つことが前提となります。というのも目標等の基準になるものがないのに、結果(実績)だけを見てもそれが良いのか悪いのか判断できないからです。その上で次の経営情報を把握するようにします。
1.経営者が日々把握すべき経営データ@日々の売上高
経営者が毎日把握すべきものは「売上げ」です。そして計画段階で目標売上高を設定して、その目標売上高に対して売上高の実績をチェックします。なお計画では通常月ごとに目標売上高を設定しますが、その月の稼働日数で割った1日あたりの目標売上高を予め出しておいて、実績と日々対比するようにします。
なお同時に、1日当たり最低限クリアしなければ損失となる売上高(製造業であれば製造個数など)の目標を出しておきます。
A日々の資金繰り状況
月初には当月の資金繰り表等を作成し、それをもとに入金や支払が予定どおりか日々チェックします。入金が予定より遅れたり、入金額が少ない場合には、資金ショートしないように対策を講じます。
2.経営者が月単位で把握すべき経営データ月単位では、次の4項目は必ず把握しておきます。
@当月の売上高
A資金繰り
B当月の経費
C当月の利益
そして、この4項目について、計画した目標と対比しながら次の事項をチェックします。
・売上げは目標を達成したか
・資金繰りは大丈夫か
・経費は余分にかけていないか
・利益は目標をクリアしたか
なお、目標に達していないときは、原因を分析しタイムリーに対策を講じます。
◇月単位で経営情報を把握するには月次決算が有効変化に対して、迅速かつ適切に経営判断を行うには、年1回の決算によるデータではなく、より短い期間で締めたデータが必要です。
毎日締めて、1日の売上げが目標に達したかどうかをチェックしている企業もありますが、少なくとも月単位で締めて、当月どうであったかを確認し、翌月には対策が講じられるようにしなければなりません。
それには月次で締めて、売上高等の数字を固め、在庫があれば在庫も固めます。減価償却費も概算(年間の減価償却費の12分の1とする)で入れ、賞与引当金も入れます。売掛金・買掛金は発生主義で行います。年次決算と全く同じで、これが月次決算です。多少誤差が出たとしても後で修正するようにして、締めた日の翌日に数字が把握できるようにしておきます。こうしておけば、すぐに対策を検討し実行できます。
なお月次の試算表を作成するには、手計算では追いつきません。日々部門別等に管理できるTKCの「戦略財務情報システム(FX2)」が便利です。