助川公認会計士事務所 | 企業経営・マネジメント | 04/05/29 |
経営計画の必要性 |
経営計画がますます必要になります。
信用保証協会から融資の保証を受ける際、「事業改善計画書」の添付が義務づけられています。企業経営において、経営計画がますます重要になってきています。 |
【特別保証制度で「事業改善報告書」の添付を義務づけ】
金融機関の中小企業に対する貸し渋り対策として、1998年10月から実施されてきた信用保証協会の「中小企業金融安定化特別保証制度」。その保証枠が10兆円追加され、来年(平成13年)3月末まで一年間延長されていますが、この延長に伴い、新たに「建設的努力」要件が加えられ、保証申込書に「事業改善計画書」の添付が義務づけられました。
これまでは、税金を滞納している場合や粉飾決算を行っている場合、破産や民事再生等法的整理の手続中である場合などを除いて、原則的に保証を受けることはできましたが、今回これに加えて建設的努力を示した「事業改善計画書」を添付しなければなりません。
また、民間金融機関では、企業に対して、経営改善に向けて具体的な対策を示した「経営改善計画書」の提出を求めています。
「建設的努力」の計画があることが要件に追加
平成12年4月1日以降に保証申込をする企業には、従来と同じようにネガティブリストに該当する企業ではないことに加えて、「建設的努力の計画があること」が要件に追加されました。
金融取引
・破産、民事再生(和議)、会社更正、会社整理等法的整理の手続中の場合(申立中の場合を含む)。
また私的整理手続き中の場合であって事業継続の見通しが立たない場合
・信用保証協会に対し求償権債務が残っている者及び代位弁済が見込まれる場合 等
財務内容、その他
・粉飾決算や融通手形操作を行っている場合
・税金を滞納し、完納の見通しが立たないような企業の場合
・法人の商号、本社、業種、代表者を頻繁に変更している場合
・業績が極端に悪化し大幅な債務超過の状態に陥っており、事業好転が望めず事業継続が危ぶまれる場合 等
「業績が極端に悪化」とは
・決算書の前期売上高が前々期と比較して30%以上減少した場合
・多額な経常損失(平均月商以上の額)を計上した場合
・減価償却不足など実質的には経常損失が多額と推定できる場合
「大幅な債務超過」とは
・直前期の決算書における債務超過額の総資産に対する割合が20%以上の場合
「事業継続が危ぶまれる」とは
・上記の他、支払手形などの決算資金が恒常的に入金待ちの企業、赤字計上が長期
にわたる企業などを総合的に判断して決定される
事業改善計画書の内容 |
事業改善計画書の内容のうち主な事項は次のとおりです。
1 計画の具体的内容
(1) 事業規模の拡大を行い、雇用の維持又は増加を図ること
@商品の生産又は販売の規模の拡大
A提供するサービスの規模の拡大
B付加価値額の増大
(2) 収益性の向上を図ること
@生産又は仕入における改善
A販売又はサービス提供における改善
B経費面又は財務面における改善
Cより収益性の高い業種・業態への進出・転換
D以上の他情報化、技術改善、組織改善等による生産性の向上
*ここでは、(1)又は(2)のいずれかについて具体的な事業改善計画を記載します。
2 計画による効果等
ここでは、売上、従業員数、経常損益、当期損益について今期の見込みや翌期、翌々期の計画数値を記載します。
おおむね前期1の(1)については黒字企業が記入し、(2)については赤字企業が記入すると考えられます。
いずれにせよ数字によって裏付けられた具体的で実現可能な改善計画が求められています。
金融機関等が見たいのは経営者の姿勢 |
そもそも信用保証協会や金融機関等は、こうした事業改善計画書や経営改善計画書によって、企業の収益力や財務内容、将来性などを把握した上で保証や融資の妥当性を判断したいのです。
そして、経営者が自社を正確に把握・分析した上で作成された実効性のある経営計画書等に基づいて、その内容と現在の進捗状況等の説明を経営者自身から直接聞き、企業をどうしていこうとしているのかを知りたいのです。
つまり、経営計画等によって金融機関等が本当に見たいのは、経営者の経営姿勢そのものと実現性です。
【各項目の吟味が重要】
本来、経営計画は企業経営には不可欠のものです。先々どうなるのか分からないまま成り行き経営をしていては、業績の向上は望めません。きちんと経営計画を立て、その計画を達成するにはどうしたらいいのか考えて経営することが必要です。
次年度の経営計画を立てる場合、今期等の数値を参考にして次の事項を検討します。
<検討事項>
@次期の目標経常利益をいくらにするか
赤字は資金の垂れ流しで、企業の命取りになります。今期は赤字であったなら、次期は赤字をなくすといった観点から目標経常利益を検討します。
A次期の売上高の伸びをどう見るか
次期の売上をいくらにするのか。今期と同じでよいのか、今期より下がるとすれば何%下がるのか、あるいは上がるとすれば何%上がるのかといったことを検討します。
B次期の粗利益(限界利益)はどれだけ確保するのか
次期の粗利益は今期と同じでよいのか。あるいは仕入価格を下げ今期より多く確保することが可能かどうか検討します。なお同掛率で仕入れて同価格で販売するのであれば限界利益率は変わりません。
C次期の従業員の給与・賞与をどうするか
従業員の給与等について、今期と同じとするのか、あるいは下げるのか、それとも上げるのかどうかを検討します。
D次期の従業員(役員も含む)数を何人とするか
従業員を現状のままとするのか、あるいは減らすのか・増やすのかを検討します。
以上のことをもとに、いろいろシミュレーションすると同時に、業績を向上させるための具体策も綿密に検討します。なお、TKCの継続MASシステムを使えば簡単シミュレーションができます。
経営計画を立案する際に検討すべきこれらの項目は、前述の事業改善計画書等の検討事項でもあります。したがってこれらの項目をよく吟味した上で計画を立てていけば、実現可能性の高い事業改善計画書を作成することが可能となるのです。
企業の業績を向上させるには、経営者の意識改革が必要 |
<経営者の意識改革チェック事項>
・業績悪化を景気低迷など環境のせいにしないで原因を自社に求め、その上でどうすればいいかを考えているか
・金融機関や取引先は自社をシビアに評価していることを念頭において自社をシビアに見ているか
・自社の経営内容等を公開し、金融機関等に積極的に説明しているか
・改善策の実行に伴う犠牲は覚悟しているか
・改善策を迅速に意思決定し、経営者は率先して実行しているか