助川公認会計士事務所 | 企業経営・マネジメント | 04/10/28 |
ビジョンのある中期経営計画の作り方 |
ビジョンのある中期経営計画の作り方 | |
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利益計画に基づく経営計画を立てることで、確実に利益をあげていくことができるが、、企業の体質の強化にはつながっていかない。中小企業の場合、経営環境の急激な変化によって突然売上が半減し、存続の危機に立たされることもある。ゆえに、中期経営計画は、企業の体質の改善・強化を念頭に置き、3年先、5年先に企業体質の改善を実現するために、どのような行動をとるべきかを考える。中期経営計画は企業体質の改善目標を実現する行動計画である。
A印刷会社は、経営幹部5名とスタッフ2名、そして、私と、中期経営計画策定プロジェクトチームを作り、つぎのステップで3ヶ月間で完成をめざし始まった。
@自社の現状をチェックする
A三年後の経営ビジョンをイメージする
「営業構造」の改善と「商品力」の強化についての理解と目標設定をおこなう
B新規事業分野の模索
新しい事業分野を考える視点と方向性を検討する
広い視野に立ち新規事業展開の可能性を探る
C行動プランを作る
自社の現状と三年後の経営ビジョンのギャップを埋めるための行動計画を作る
D人材育成プランを作る
行動プランを基に3年後の機能分担の想定し、人材の能力を育てるためのプランを作 る
E計画推進体制を作る
計画を実行するための予算と管理体制を作る
F中期経営計画発表会
中期経営計画策定プロジェクトチーム
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自社の現状について、財務分析、営業構造分析、商品力分析をおこなった。長年、A社に携わってきたメンバーであるが、会社全体を十分に把握している人間は、ひとりもいなかった。財務・会計の分野では、総務部長しか知らず、営業部長や印刷部長はまったくわからないといった状態であった。また、営業の分野では社長と営業部長が、印刷という商品力の分野では専務と印刷部長が知っているのみであった。経営幹部全員による徹底的な討議と演習を繰り返した結果、経営幹部間で自社の現状に関する認識が一致するようになった。
自社の現状分析表
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三年後の経営ビジョンについて討議をした。現状をふまえ、「営業構造」の改善と「商品力」の強化について目標設定をおこなった。1ヶ月間に、合宿を含め延べ25時間を使い、自社が存続し発展していくために獲得すべき成功要因を明らかにした。
三年後に達成する改善課題は、次のものである。
@高付加価値製品分野へのシフトをする。
A新しい販路を開拓する。
B新規顧客開拓に重点的に取り組む。
C印刷能力・品質の向上を図る。
改善課題を具体的な最終目標にブレークダウンし、その最終目標を、毎年の目標にブレークダウンしていった。そのようにして作成したものは、「経営目標設定シート」である。
「経営目標設定シート」までできると、それを実現するための具体的な討議とシートの作成をおこなう。
・毎年の経営目標を実現する「行動プランシート」を作る。
・行動プランを基に3年後の機能分担の想定した「組織図作成シート」を作る
・人材の能力を育てるため「経営陣の能力向上プランシート」「管理者の能力向上プラ ンシート」を作る
・3年間の「実行予算作成シート」を作る
・計画推進スケジュール表を作る
・計画推進委員会の設置
中期経営計画は、毎年毎年より新しい情報のもと、より確かな見識のもとに、繰り返し繰り返し策定していくことに意味がある。環境の変化に応じて経営計画の微調整・微修正を行っていかなければ、企業の体質改善を意図して作られた中期経営計画でありながら、いつの間にか古いものになってしまい、気づいた時は目先の利益に捕らわれて、数値への関心だけに終始してしまっているということになりかねない。そうならないためには、毎月あるいは3ヶ月に一度といった一定のスパンのもとにレビューを実施する推進管理体制を確立し、常に計画の見直しを行うことで、微調整・微修正をしながら確実に計画を遂行することが不可欠である。