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助川公認会計士事務所 BTkigyou.jpg (1685 バイト) 資金繰り 04/10/28
民事再生法

企業の再建を支援する民事再生法のあらまし

 (平成12年)4月1日より、民事再生法が施行され、それに従って和議法が廃止されています。

 民事再生法は、企業倒産手続きの迅速化を目指し、倒産に伴う資産の劣化や従業員の離散をくい止め、企業の早期の再建を促進することを主目的としています。つまり従来の和議手続きの欠点を補い、経営不振の企業の再建や倒産防止を目的に整備されたものです。

これまで(民事再生法施行前)の倒産の法的処理は次のとおりでした。

清算型:「破産」「特別清算」

再建型:「和議」「会社更生」「会社整理」

民事再生手続きは、この「和議」手続きに代わるもので、「会社更生」よりも手続きが簡素化されており、経営者は引き続き企業を経営できます。

 倒産の法的処理の特色民事再生法施行後の倒産の法的処理の特色

<清算型>

「破産」・・・・・・・・・裁判所が選任した管財人によってすべての資産が換価される、公平かつ厳格な清算手続きです。

「特別清算」・・・・・・・・・解散手続きのとられた株式会社の清算の一つで、「破産」に比べて迅速かつ柔軟な処理が可能です。

<再建型>

「民事再生法」・・・・・・・・・零細企業から大企業までのすべての法人及び個人に適用が可能です。(詳細はこれから説明します。)

「会社更生」・・・・・・・・・上場企業など社会的影響の大きな倒産に適用されます。裁判所が選任した管財人に経営権が移り、再建は長期間にわたることが多いようです。

「会社整理」・・・・・・・・・整理案には債権者全員の賛成が必要なことから、債権者数の少ない場合に適用されます。

 

<民事再生法と和議法の主な相違点比較>

  民事再生法 和議法
申立ての時期及び条件 早期・緩やか  厳しい
強制執行等の包括的禁止命令 有り  無し
担保権実行の一定の制限  有り−中止命令 無し
担保権の抹消許可   可能  無し
再生計画案の可決要件  2分の1以上 4分の3以上
再生計画の履行の確保  強い 無し

民事信用調査機関・帝国データバンクが5月29日にまとめたところでは、4月1日の施行後約2ヶ月間で申告企業が100社を突破したそうです。昨年の和議などの再建手続きと比べて約3倍になっているようです。負債総額は約7,307億円。業種別では、製造業が38件でトップ、建設業16件、卸売業とサービス業15件と続いています。「今後さらに申請の動きが広がるのではないか」と同社では見ています。

 

民事再生法の主なポイント

1.利用対象はすべての法人・個人

すべての法人・個人が利用対象となっています。したがって、有限会社や医療法人、学校法人も利用できます。

2.早期の申立てが可能

民事再生手続きの申立てができるのは、債務者及び債権者です。そしてその申立ての原因として、次の事項が規定されています。

債務者に破産原因の事実が発生する恐れがある

債務者が事業の継続に著しい支障をきたすことなく弁済期にある債務を弁済することができない

従って、例えば債務超過や支払不能といった実質的破綻状態になる以前の、破綻が生じるおそれがあると判断した段階で民事再生法手続きの申立てができるのです。

3.手続き開始前に債務者財産の保全処分

民事再生手続きの申立てから手続き開始決定がなされるまでの間、債務者の財産を保全するため、裁判所は「保全処分」が出せるようになりました。

この保全処分には、すべての債権者に対し債務者財産への強制執行などの禁止を命ずる「包括的禁止命令」や、担保権者に対する競売手続き中止命令などがあります。

4.担保権消滅請求制度

これは、事業継続に不可欠な工場等が担保になっている場合、その竿算の価格を金銭で裁判所に納めれば担保権を抹消することができるというものです。

5.再生計画案の可決要件の緩和

再生計画案については、債権者集会の出席債権者数の2分の1以上で、かつ、総債券額の2分の1以上(和議手続きでは4分の3以上)の賛成で可決できるようになり、緩和されています。

6.再生計画履行確保

和議手続きでは再建計画の履行は、債務者任せでしたが、民事再生法では、監督委員により計画の履行を監督することもでき、債務者が再生計画の履行を怠った場合、債権者は再生計画の取消しを求めるといったことができます。

 

民事再生法には、簡易再生並びに同意再生手続きが導入されました。

「簡易再生」とは、届出債権総額の5分の3以上の同意があれば、債権の調査・確定手続が省略できるというものです。さらに、「同意再生」は、届出債権者全員が同意すれば、再生計画の決議も省略できるというものです。

  

<民事再生手続きの流れ>

再生手続き開始の申立て→再生手続き開始決定→債権の届出→債権の調査・確定→再生計画案の作成・提出→再生計画の決議→再生計画の認可→再生手続き終結→再生計画の実行

 

民事再生法を利用する際の留意事項

以上のことから、民事再生法は経営不振に陥った企業にとってその再建に効果が期待できそうですが、利用する際には次のような事項に留意し慎重に検討する必要があります。

  @得意先や取引先等の間に信頼関係が充分築かれている

 A経営者に求心力があり全社一丸となっている

 B民事再生手続きを申し立てた場合、「倒産企業」と評価される。−−ある民間信用調査機関は、民事再生手続きを申し立てた企業を「倒産企業」として扱うようです。世間では、事実上の倒産と評価されます。

 C申立ての後の資金繰りが厳しくなる

 D債務が増加するおそれがある。−−−現金での支払いが予想され、未払金(債務)が膨らむおそれがあります。

  

得意先が申し立てたら?

得意先が民事再生手続きを申し立てた場合、例えば「売掛金が回収できない」「担保権の実行に一定の制限が加えられる」などの大きな影響が考えられます。

 <対応(一例)>

@取引を現金との引き換えに代える

A手形による取引の場合は優良企業が振り出した「回し手形」で受け取る

B得意先のキャッシュ・フローや資金繰りに注意する

C再生計画の実施状況を注視する    など

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