助川公認会計士事務所 | 資金繰り | 04/05/29 |
「金融機関からの借入金が債権として第三者に譲渡」への対応 |
金融機関からの借入金が債権として、整理回収機構(RCC)や債権回収会社に譲渡される。
金融庁の特別検査もあり、金融機関は貸出先の債務者分類を厳しく行っています。そのため企業の借入金が債権回収会社等に売却される可能性があります。 政府は金融機関に対し不良債権の最終処理を求めており、金融庁は金融機関に対して厳しく特別検査を行っているようです。その結果、借入金が債権として整理回収機構(RCC)や債権回収会社に売却(債権譲渡)されるといったことが起きつつあります。
改正サービサー(債権回収会社)法が施行され、債権回収会社の取扱債権の拡大や業務の規制緩和などが行われています。今後、債権回収会社への金融機関からの債権売却が増えると考えられます。
【A社の事例】 製造業を営むA社は、大幅な債務超過で実質的には経営破たん同然の状況だが、数年前より手形・小切手の振出しを止めて現金取引に変更したため銀行取引停止処分は受けずにやってきた。 金融機関からの借入金はあるが返済は滞りがちで、厳しく督促されていたにもかかわらず返済にまわせる資金がなく、これといった対策も講じなかった。ところがある日、A社債権を買い取ったとの通知を整理回収機構(RCC)から受けた。 このA社の例では売却先(債権の譲渡先)が整理回収機構でしたが、民間の債権回収会社や外国資本の債権回収会社も考えられます。 取引銀行であれば、これまでの取引実績があり、良くも悪くも企業の内情を知っているため、厳しい債権回収の中にも多少の配慮が見られた面もあるようでしたが、過去に取引などない第三者となると、全くビジネスライクな厳しい債権回収が行われると考えられます。 |
銀行は、 厳しく企業を選別する
金融庁による特別検査もあって、銀行等は貸出先(債務者)の選別を厳しく行っています。例えば、実質的に債務超過状態であれば、キャッシュフローが良くても破たん懸念先に格下げされるともいわれ、今後「破たん懸念先」が増えるとみられています。
債務者区分 | |
正常先 | 業績が良好、かつ財務内容に問題がない企業 |
要注意先 | 貸出条件や返済状況などの履行状況、あるいは業績や財務内容などに問題があり注意を要する企業 |
破たん懸念先 | 経営難の状態にあり、経営改善計画等の進捗が芳しくなく経営破たんに陥る可能性が大きい企業 |
実質破たん先 | 法的・形式的には経営破たんしていないが、深刻な経営難の状態で、再建のの見通しがなく実質的に経営破たんに陥っている企業 |
破たん先 | 法的・形式的な経営破たんの事実が発生している企業 |
「破たん懸念先」以下になると?
金融機関等による選別の結果、破たん懸念先以下に区別された企業は次のような選択しかなく、非常に厳しい状況に追い込まれることになると思われます。
1. 銀行等による債権放棄
不採算部門の切り捨てなど徹底的なリストラ計画や経営者の引責辞任などと引き換えに債務の免除を受けることになります。
2. 第三者への債権売却
整理回収機構や債権回収会社に再建(企業の借入金)が売却され、返済要請が厳しくなると考えられます。
※破たん懸念先でなくても債権の売却が行われることがあるようです。
3. 法的整理
民事再生法などの法的整理で、再生が前提ではあるものの事実上の倒産となります。
金融機関の厳しい選別に対し、企業はどのように対応すべきか |
金融機関の厳しい選別に対し企業の対応としては次のようなことが考えられます。
@金融機関が自社をどう評価しているか分析する。 金融機関は取引先全てに対して独自の基準で格付けを行っています。自社がどの分類(格付け)に位置づけられているのか、客観的に自己診断します。されに自社の借入金についても、その内容を分析します。
A借入金で金融機関から「回収に注意を要する債権」「回収に重大な懸念のある債権」と見られているようなものは、返済や担保の差入れ行い「正常債権」にシフトする。
B極力赤字決算は避ける。(ただし粉飾決算は命取りになるので、絶対に行わない)
C金融機関に対し決算書や月々の試算表を提示して自社の財務内容を積極的に開示する。
D金融機関へは経営者が自ら赴き、自分の言葉で説明できるようにしておく。
E説明のための資料は、数字による裏付けをする。 例えば経営計画書や過去の業績資料(部門別・商品別のもの)、業務改善策(特に数字による裏付けが必要)、利益計画、資金繰り表など