助川公認会計士事務所 | 資金繰り | 09/08/02 |
資金不足を乗り切る 棚卸資産、仕入、支払の改善 |
1.棚卸資産の圧縮と換金可能性を検証する
在庫の圧縮は、
・在庫の換金処分
・仕入れを抑えることによる仕入資金の留保
の二つがポイントである。
在庫換金処分のうち、回転の悪い商品やデッドストック、スリーピングストックを換金処分する場合には、もともと死に筋在庫なので思い切ったディスカウントが必要なことから、生み出される資金もさほど大きくない割に大幅な欠損が発生する。
他方、売れ筋商品をディスカウントして販売する場合には原価に近い価格で販売するか、原価を割り込んで販売すれば効果は大きいが、将来の売上高を先取りする結果となるので、ディスカウント販売の後、通常の売上げが減少することが問題である。
この犠牲を払ってまで実行するのであるから、しっかりした収益性改善計画があって、この実現のための一時的な資金つなぎのためにだけ実行するようにしたい。
2.仕入圧縮によって資金を生み出す
仕入れを抑えることによる資金の生み出しは、日常の商品や材料の仕入れを抑えて、手持ち在庫を吐き出して生産・販売活動に当たることである。
過剰在庫があるからと言って、一〜二ヶ月間仕入れをしないというわけにはいかず、少なくとも三ヶ月、できれば半年間くらいの計画で、徐々に在庫を吐き出して、適正在庫に戻しながら仕入れを減らすことが現実的である。
経常的な在庫の圧縮は、売上げ・仕入れ・在庫計画をきちんと組み直すことから始める。
すなわち、まず月別の売上計画を立て、これを元に月別の在庫計画を立てる。在庫計画は商製品、仕掛品、原材料のそれぞれについて、できれば大まかにでも製品区分別に立てることが望ましい。
売上計画と在庫計画ができれば仕入計画は自動的に計算される。
この仕入計画を仕入予算枠として仕入統制をするのである。
また、計画期間は一ヶ月でなく、旬間、週間で行なえば、それだけ計画が緻密になり、在庫削減に寄与する。
3.仕入支払いの適正化をはかる
当然のことながら仕入の支払いを延ばせば資金が浮く。
しかし、従来の仕入先に対して現金で払っていたものを手形にするとか、60日で払っていたものを120日に変更するのは、特別有利な支払条件であったのを変更する場合ならともかく、それ以外は信用不安の原因となりかねず、行ない難い。
支払長期化の対策としてできることは、支払いの長い仕入先からの仕入れウエイトを低くすることである。
具体的にはまず現金仕入れをなくすこと。
現金仕入は特注品の仕入れのように、新規の仕入先からスポットで仕入れる場合が多いが、この場合にも交渉により有利な支払いにしてもらうことを考える。
次にバッタ商品のように低価格で仕入れている場合。この場合には利益とのかねあいで判断しよう。
意外に多いのは、計画生産をしていないために、応急的に現金仕入にたよるケースである。組立工場などでは電気部品を秋葉原に買いにゆく中小メーカーが少なくないという。これなどは計画生産をすることによって現金仕入をなくすことができる。
このほか、ユーザーがブランド指定をしてこない製品などは仕入支払に融通が効くメーカーや問屋からの仕入れに切り替えるなどの工夫もできよう。