助川公認会計士事務所 | 資金繰り | 04/10/28 |
資金繰りに強い経営体質を作る基礎講座 1 |
1.デフレ時代は資金管理がカギ
「資金」は人間の体でいうと、「血液循環」に相当します。人間は血液の流れが止まると死に至るように、企業は資金がショートすると倒産します。ところで、バブル破壊をきっかけにデフレ経済になったといわれています。デフレ時代は価格が下がり、売上げは上がらず、失業が増加し経済は停滞を続けます。
物の価格が下がる、ということは、お金=資金の価値が高まることです。高度成長時代は「借金してでも設備投資をし、売上げさえ伸ばせば利益がついてきた」のですが、デフレ時代は全く違います。「設備投資は極力抑え、在庫を圧縮し、売掛金の回収を促進して資金を留保する」ことが大切なのです。それに、資金繰りが苦しくなっても、銀行から融資を受けるというわけにはいきません。
というのは、高度成長時代と違って、銀行自身が不良債権を抱えた“病人”となってしまっており、中小企業が銀行から融資を受けることは極めて難しくなっているからです。加えて、金利負担がいっそう収益力を低下させます。
デフレ時代ほど、金融機関に頼るのではなく、資金繰りに困らない強い経営体質を作り上げること、すなわち資金=キャッシュフロー経営に徹することが大切なのです。
2.利益計算と資金計算はちがう
今は黒字だからといって安心してはいられません。“黒字倒産”という言葉があるように、利益が出ていても資金がショートすれば倒産です。がっちりした体つきで筋力も強く、およそ病気に縁のないように見える人が脳溢血でポックリいってしまうように。
これは「利益」と「資金」が一致していないことが原因です。「利益」は「収益−費用」で計算されますが、「資金」は「収入−支出」で計算されます。
もし、「収益=収入」「費用=支出」であれば、「利益」と「資金」は一致するのですが、一般の企業では「収益」と「収入」は一致しませんし、また、「費用」と「支出」も一致しないのです。
ここで収益とは売上高や受取配当金など、商品やサービスの販売対価をいいます。また、費用とは仕入原価や販売経費など、収益を獲得するために犠牲になったコストです。これに対して、収入・支出とは現金の入金・出金のことです。
“黒字倒産”とか“勘定合って銭足らず”というのは、収益が費用を上回って、利益は出ているが、収入が支出より少ないために資金がマイナスになっている状況です。このように黒字・赤字という損益の問題と、資金不足という資金の問題とは別なのです。この点を理解しておかないと大変なことになりかねません。
3.資金不足は利益を圧迫する
ところで、資金不足は利益をも圧迫するという点に注意してください。資金が不足すると銀行からの借入金に頼らざるを得なくなりますが、銀行からの借入金が増えるとその分、支払利息が増加し、結果として利益が減少します。
それだけではありません。もっと大きな問題は資金繰りに追われるようになると営業活動や生産活動など、本来の経営活動に目が届かなくなり、この結果、業績が悪化し、さらに資金が不足してしまいます。まさに悪循環です。
社長の仕事が資金繰りだけに追われるようになったら危険この上ありません。新規の設備投資のように、前向きの資金対策に頭を使ったり銀行折衝にあたるのはいいのですが、翌月の手形決済の資金をかき集めるなど、後ろ向きの不足資金対策に追われるようになれば倒産への下り坂を転げ落ちるようなものです。
銀行と付き合うことが悪いというのでは決してありませんが、社長が後ろ向きの資金のことに煩わされることなく、本来の経営活動である営業、生産、研究開発などに精力的に活動している会社ほど成長が期待できます。