助川公認会計士事務所 | 資金繰り | 04/05/29 |
資金繰りに強い経営体質を作る基礎講座 3 |
10.資金繰り改善は自社の経営上の問題
資金繰りの悪化を招く原因は、わが社自体の問題であるります。
決して金融機関が借換えに応じてくれなかったからではなく、設備借入金の返済が始まったからでもなく、また賞与資金の借入れができなかったからでもないのです。
利益がでていなかった、間違った判断で設備投資をしてしまった、回収期間の長い得意先へ販売ウエイトを高めてしまった、無計画に在庫を増やしてしまった、売上拡大にだけ目を奪われていたために得意先倒産の影響を受けてしまったなど、いずれも自社の経営のまずさに本当の原因があったのです。それを相手や周りのせいにしていては、本当の解決は永遠にありません。
資金不足は経営活動の“結果”です。そしてこの経営活動を改善しなければ資金繰りに強い会社はできません。大切なことは「すべての問題点は、わが社の反映」と受けとめることと、とりわけ経営幹部層が先頭に立って、自社の経営上の問題と原因を正しく把握し、「資金=キャッシュフローに焦点を合わせた経営に転換する」ということです。
高度成長の時代は資金の調達は容易でしたが、これからのデフレ時代は利益はもとより大切ですが、同時に資金の蓄積を心がけることが大切です。
11.借りなくてもいい経営体質を作る
ところで、どこの会社でも資金繰りは経理部の仕事とされていますが、実は営業部、製造部、資材部など全社をあげて取り組むべきことなのです。というのは、本当の資金繰り改善は借りてくることではなく、借りなくてもいい経営体質を作ることだからです。
借りてくることは確かに経理部の仕事ですが、借りなくてもいい経営体質を作るのは経理部だけではできないからです。
資金が不足するのは間違った生産・販売活動や設備投資の結果なのですから、まずこれを正さなければなりません。それには経理担当者だけでなく、経営幹部層が協力して生産、販売、研究開発活動などを改善していくことが不可欠なのです。ここを経営幹部の方々によく理解して頂きたいのです。
部門ごとの資金対策としては、営業部門は得意先をよく吟味して貸倒れの心配のない得意先を選別し、精度の高い販売計画を製造部門に伝えると同時に、早めの回収を心がけていく。資材部門は計画発注を心がけ原材料の削減を進める。製造部門はリードタイム短縮により仕掛品の削減に取り組むなどです。こうした資金対策を総合的に推進するのが経理部門や社長の役割なのです。
社長を中心として経営幹部層が一致協力していくところに資金繰り改善の本当の狙いがある、といっても過言ではありません。
12.資金繰り改善の手順
資金繰りに強い経営体質を作るための手順には、現状分析と対策の立案、そして資金計画の策定という3つの段階があります。
まず「ホップ」は現状分析です。ここではわが社が資金繰りに強い体質か弱い体質か、どこに資金繰り体質の問題点があるかを分析する手法を学びます。これは、毎月の月次決算書にアウトプットされている経営比率や資金運用表さらに資金繰り表から分析してください。
「ステップ」資金対策です。資金繰りに強い体質を作るために、収益構造の改善策、運転資本対策など、自社に適用した対策をおこないます。
最後の「ジャンプ」は資金計画の作成です。これは「ステップ」の資金対策を打った結果、どのように資金繰りが改善されるかを資金計画として確認するとともに、毎月の資金管理の指針となるものです。計画は短期の計画としての資金繰り表の作成と、長期の計画としての見積バランスシートの作成、資金運用表の作成です。